記事・レポート
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」
更新日 : 2009年07月24日
(金)
第22章 エセのエコに騙されるな
北野宏明: じゃあ、どうするかというと、もう使うものは限られてくる。日本のバイオマスで、家畜排泄物がかなり再利用されています。食品廃棄物は、実は20%ぐらいしか使われていないのです。残飯の8割は使いようがあるんです、栄養分が高いですからね。食べたらメタボになるけど、これは使い道がある。
廃棄紙は結構難しいみたいで、これを何とかするという研究はありますが、ほとんどだめなようです。パルプ廃液は使っています。
製材等もかなり使っています。建設の資材の場合、問題はセルロースを分解しないと使えないということ。これが非常に難しいというのと、いろいろなところにバラバラにあるんです。それを持ってくると輸送コストがかかる、当然エネルギーもかかるので、それを全部計算すると、あまりエネルギーバランスがよくないのです。
林地の残材も同じ問題があります。要するにあちこちから集めなければいけないから、切って集めてどうのこうのやるエネルギーコストを考えると、ペイするかは微妙です。
あとは籾殻、これは使えます。現在、7割が使われていません。これをどうするか。ただ、これはどうもいろいろ聞くと農地から集めるというのは、大規模プラントだと難しいみたいです。農地の近くに大規模プラントがあるということは、ちょっと考えられないので。そうすると、そこまで持ってくるエネルギーコストとバランスを考えると、これはどうか分からない。
小さめのプラントが農家にたくさんあるというふうになると別です。ただし、今、セルロースを分解するためには濃硫酸でやるのです。そうすると、そんなものをあちこちには置けませんから難しいんですね。そうじゃないやり方が今できつつあるので、それができると分散型でできるかもしれません。
こういう廃棄物のリサイクリングでエネルギーをつくるわけです。そのときの問題は、どう回収して分配するかです。今の大規模回収、大規模分配という、ハブ型のシステムはエネルギー効率が悪いし、ロバストネスも低くなってくる。だから、分散型のやつでなければいけないのです。
例えばこれから森ビルが北仲ヒルズとか開発するじゃないですか。ああいうのもローカルな分散型でやるのが、多分エコロジカルにフレンドリーですよね。ローカルでカーボンニュートラル、エナジーニュートラルにするためには、それなりの仕掛けが多分必要だと思います。普通の都市構造でこれをやったときには、やはり集配のエネルギーコストで多分負けてしまう。バランスがとれないのです。
最近「フードマイル」というアイディアがありますが、エネルギーで一番問題になるのは、遠くから物を持ってくるということなので、基本的には輸送コストなんですね。ここをクリアできるような都市構造に変えていかない限り、環境問題のインフラとしての問題は解決できない。
竹内薫: エコという話になると、2つあるような気がするんです。実際にそれがうまく回っていて論理的にちゃんとしているものと、何かちょっと掛け声だけのものと。
北野宏明: エセのエコ。
竹内薫: エコといわれるものの中にはいろいろなカラクリがあったりするものもあるので、ちょっと気をつけなければいけない。
北野宏明: そうですね。食料のようなものは使わない方がいいですね。オーストラリアは藻類を使って光合成をさせて、そこから油を分泌させたり、エタノールにしたりするプラントをつくっていますが、こういうのは割とまっとうです。技術的にまだ結構大変だけれど、こういうプラントは出てくると思います。
(その23に続く、全23回)
廃棄紙は結構難しいみたいで、これを何とかするという研究はありますが、ほとんどだめなようです。パルプ廃液は使っています。
製材等もかなり使っています。建設の資材の場合、問題はセルロースを分解しないと使えないということ。これが非常に難しいというのと、いろいろなところにバラバラにあるんです。それを持ってくると輸送コストがかかる、当然エネルギーもかかるので、それを全部計算すると、あまりエネルギーバランスがよくないのです。
林地の残材も同じ問題があります。要するにあちこちから集めなければいけないから、切って集めてどうのこうのやるエネルギーコストを考えると、ペイするかは微妙です。
あとは籾殻、これは使えます。現在、7割が使われていません。これをどうするか。ただ、これはどうもいろいろ聞くと農地から集めるというのは、大規模プラントだと難しいみたいです。農地の近くに大規模プラントがあるということは、ちょっと考えられないので。そうすると、そこまで持ってくるエネルギーコストとバランスを考えると、これはどうか分からない。
小さめのプラントが農家にたくさんあるというふうになると別です。ただし、今、セルロースを分解するためには濃硫酸でやるのです。そうすると、そんなものをあちこちには置けませんから難しいんですね。そうじゃないやり方が今できつつあるので、それができると分散型でできるかもしれません。
こういう廃棄物のリサイクリングでエネルギーをつくるわけです。そのときの問題は、どう回収して分配するかです。今の大規模回収、大規模分配という、ハブ型のシステムはエネルギー効率が悪いし、ロバストネスも低くなってくる。だから、分散型のやつでなければいけないのです。
例えばこれから森ビルが北仲ヒルズとか開発するじゃないですか。ああいうのもローカルな分散型でやるのが、多分エコロジカルにフレンドリーですよね。ローカルでカーボンニュートラル、エナジーニュートラルにするためには、それなりの仕掛けが多分必要だと思います。普通の都市構造でこれをやったときには、やはり集配のエネルギーコストで多分負けてしまう。バランスがとれないのです。
最近「フードマイル」というアイディアがありますが、エネルギーで一番問題になるのは、遠くから物を持ってくるということなので、基本的には輸送コストなんですね。ここをクリアできるような都市構造に変えていかない限り、環境問題のインフラとしての問題は解決できない。
竹内薫: エコという話になると、2つあるような気がするんです。実際にそれがうまく回っていて論理的にちゃんとしているものと、何かちょっと掛け声だけのものと。
北野宏明: エセのエコ。
竹内薫: エコといわれるものの中にはいろいろなカラクリがあったりするものもあるので、ちょっと気をつけなければいけない。
北野宏明: そうですね。食料のようなものは使わない方がいいですね。オーストラリアは藻類を使って光合成をさせて、そこから油を分泌させたり、エタノールにしたりするプラントをつくっていますが、こういうのは割とまっとうです。技術的にまだ結構大変だけれど、こういうプラントは出てくると思います。
(その23に続く、全23回)
※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。
※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」 インデックス
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第1章ニューヨークの大停電で、機能不全に陥ったホテルと平常通りだったホテル
2008年10月08日 (水)
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第2章「ロバストネス」の定義とは?
2008年10月16日 (木)
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第3章なぜボーイング777は、同じ機能のコンピューターを3つ搭載しているのか
2008年10月28日 (火)
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第4章 相手と連絡を取りたいとき、ロバストなコミュニケーションしてますか?
2008年11月06日 (木)
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第5章 安定して強くなるタイプと、不安定になって強くなるタイプ
2008年11月18日 (火)
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第6章 A社とB社、どちらがロバストか?
2008年12月01日 (月)
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第7章 全部に対してロバストというのはあり得ない
2008年12月15日 (月)
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第8章 我々が病気になるのは進化の必然
2009年01月26日 (月)
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第9章 低体重で生まれた子どもは、大人になると糖尿病になるかもしれない?
2009年02月13日 (金)
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第10章 「がん」を殺そうとすればするほど、「がん」は進化する
2009年03月03日 (火)
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第11章 病気を治すというのは多様性との戦いである
2009年03月10日 (火)
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第12章 糖尿病の仕組みは、ボーナスに置き換えるとよく分かる
2009年03月17日 (火)
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第13章 会社組織のロバストネスとは?
2009年03月25日 (水)
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第14章 時速300kmで走るF1カーは、オフロードを走れない
2009年04月02日 (木)
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第15章 アルバイトの個人差が味に影響しないようにする
2009年04月20日 (月)
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第16章 人間が単細胞生物だったら、生き延びられない
2009年05月11日 (月)
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第17章 地球温暖化から考える、環境変化に対するロバストネス
2009年05月28日 (木)
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第18章 今世紀の温度変化は、過去の大絶滅のときと同じくらいのレベル
2009年06月16日 (火)
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第19章 二酸化炭素も怖いが、メタンの方が影響は大きい
2009年07月03日 (金)
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第20章 地球は気候変動に対してロバスト。問題は、人間がロバストじゃないこと
2009年07月22日 (水)
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第21章 食料を原料にしたエタノールは、環境に優しくない
2009年07月23日 (木)
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第22章 エセのエコに騙されるな
2009年07月24日 (金)
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第23章 サンゴ礁が絶滅すると、海洋資源の過半数がなくなる
2009年07月27日 (月)
該当講座
大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....
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