記事・レポート

「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」

更新日 : 2009年06月16日 (火)

第18章 今世紀の温度変化は、過去の大絶滅のときと同じくらいのレベル

北野宏明さん(左)、竹内薫さん(右)

北野宏明: 約2億5千万年前頃、CO2が上がっています。その時何が起きたかというと、生物多様性がガックリ減ったのです。生物の大体7割から8割が絶滅しました。これは「P-T境界の大絶滅」といわれているもので、いわゆるペルム期から三畳紀に変わる間の大絶滅です。このときはCO2ベースの温暖化が起きています。

それから1億4千万年~6千500万年前のときにもう1回、すごく減っています。これは「K-T境界の大絶滅」と言われているもので、このときは地球の温度が5度上がったといわれています。我々は今、4度上がるとかいう話をしていますから、今世紀中の温度変化というのは、大絶滅のときと同じぐらいのことを言っているのです。

でもこのK-T境界ではCO2は上がっていないのです。何が上がったかというと、メタン濃度です。IPPC(気候変動に関する政府間パネル)の報告はCO2の話をしていますが、メタンの方が20倍ぐらい温暖化効果があるので、メタン濃度が上がったらアウトです。そして、今、メタン濃度は上がりつつあります。これが問題なんです。

竹内薫: メタン濃度はどうして上昇するのですか。

北野宏明: 例えば永久凍土が溶けると、下にメタンがあるし、そこの嫌気性のバクテリアが活動し始めるとメタンをどんどん出します。だからメタン濃度が上がります。それと、家畜のゲップ、これがばかにならない。

竹内薫: 家畜のゲップ?

北野宏明: ゲップが大気中のメタンの何%かを占めるらしい。だから今真剣にヨーロッパでは、特に酪農国では、家畜のゲップからメタンを取り除いたり、発生させなくするバクテリアや薬をどうつくるか研究しているようです。

竹内薫: ちょっと整理させていただくと、最初のときの絶滅は二酸化炭素が原因?

北野宏明: 二酸化炭素ベースの温暖化……温暖化かどうかは分かりませんが、多分温暖化だと思います。

竹内薫: そのときは生物種の何%が絶滅したのですか?

北野宏明: 正確には分からないですが、大体7、8割ですね。

竹内薫: 「K-T境界」のときは二酸化炭素ではなく?

北野宏明: メタンだと言われています。

竹内薫: そのメタンはどこから出たんですかね。気温が上昇したりしたときにメタンが出ているというのは分かりますが、どこかから大量にメタンが出てきちゃったという可能性があるわけですか?

北野宏明: これは、僕は調べていないから分からない。多分それを調べている人がいると思います。
(その19に続く、全23回)

※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。

※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。

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したたかな生命
進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か
北野宏明 (ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長  )
竹内薫 (作家・サイエンスライター・理学博士)

大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....


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