記事・レポート

「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」

更新日 : 2009年05月11日 (月)

第16章 人間が単細胞生物だったら、生き延びられない

北野宏明さん

北野宏明: たんぱく質など生物をつくっている1個1個の部品って、結構いい加減なんですよ。弱いし、熱をちょっと加えるとすぐおかしくなってしまったりするし。だから、すごく不安定なものから安定なものをどうやってつくっているかということが、生物の本質ですね。

竹内薫: そもそも単細胞生物から多細胞生物になった理由というのは、何かあるんですか。

北野宏明: いや、これが、よく分からない。よく分からないんだけれど、多分そういうふうにした方が、ある程度安定だったとか、あと、どこかの段階で機能分化したんでしょうね。単細胞同士でくっついたときに、機能分化する生物はたくさんあるんです。機能分化して、それがもっとしっかりくっつくようになったとかね。

ただ、見たようなことを言っている人は多いんだけれど、そのプロセスは見えないので……。いろいろな解説はあるけれど、あまり説得力のあるものは僕はまだ知らないです。

竹内薫: モジュールという側面からいうと、単細胞生物より多細胞生物の方がいいという側面はありますか。

北野宏明: 単細胞生物は、あまり複雑なものはつくれません。そうすると大きさが限定されます。大きくなって表面積が増えれば増えるほど、それに対して何か問題が起きるリスクが高くなります。だから、人間の大きさで単細胞生物だとすると、ちょっとケガしたらそれで終わりになってしまう、それじゃあ生き延びられないですよね(笑)。だからやはり我々はモジュール構造です。細胞というモジュールがあって、ケガをすると細胞は結構やられるかもしれないけれど、それ以上広がらないで修復もされる。

竹内薫: 例えば腎臓が2つあるというのも?

北野宏明: それは冗長性ですね。

竹内薫: ということは、我々の体自体の仕組みが細胞レベルでなくても、臓器とかでも、冗長性みたいなものはかなりある?

北野宏明: あると思いますね。ケガをしても元に戻るというのは、再生されるという部分もありますが、すべての細胞が全部違う機能だったら、その機能を代替できなくなるわけですね。だから、似たような細胞がたくさんあるわけです。ケガをしても、周辺のやつをもとにして、元に戻るのです。それはすごく冗長なシステムだと思います。
(その17に続く、全23回)

※この原稿は、2008年7月3日に開催したRoppongi BIZセミナー「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」を元に作成したものです。

※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。

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該当講座

したたかな生命
進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か
北野宏明 (ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長  )
竹内薫 (作家・サイエンスライター・理学博士)

大腸菌、癌細胞、ジャンボジェット機、吉野家、ルイ・ヴィトン、一見するとばらばらなこれらのものには共通点があります。それが「ロバストネス」。「頑健性」と訳されることの多い言葉ですが、その意味するところはもっとしなやかでダイナミックなものです。システム生物学から生まれたこの基本原理は取り巻く環境の幅広い....


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