本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2026年3月~
毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の“いま”が見えてくる。
新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介します。
今月の10選は、『ここでもなく、いまでもない』や『ダメな会議をゼロにする方法』など。あなたの気になる本は何?
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スペキュラティヴな思考、不可能性、
そしてデザインの想像力について
「スペキュラティヴ・デザイン」が今ある世界とは別の世界の可能性を提示するデザインであるのに対し、本書では“不可能性”あるいは“非現実”の世界に至るまで、デザインの想像力と創造性を解き放っていきます。
なぜ彼らはこのような取り組みを行うのか。それは、わたしたちが当たり前のように受け入れている「現実」や、語り尽くされた「未来」の外に出るため、つまり「ここでもなく、いまでもない」世界の思索へと読者を向かわせるためです。本書の監修を務めた久保田晃弘氏が“(本書が)目指すのは、現実という「思考のインフラストラクチャーの再設計」である”と書いています。
私たちは「なにを想像(創造)できるのか」ではなく「なにを想像(創造)できないのか」と考えてみること。
それはデザインという分野に関わらず、いつの間にかとらわれている“現実”を、そして“未来”を問い直すための大きな一歩となるかもしれません。

体の居場所をつくる
美学、現代アートを専門としながら、人間の体のあり方についての著書も多数持つ著者。本書で著者がインタビューしている人々の話を読むと、自明のことのような“自分の体が自分のものである”という感覚が、人によって多層のグラデーションが存在することがよくわかります。健康・健常という身体的マジョリティに属しているとなかなか気づきにくい体の社会性に目を向けさせてくれる一冊。

21世紀を動かす思想
加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング
SF作家と企業コンサルタントを兼業する著者による、テクノロジーの時代の思想の入門的な解説書。副題にある「加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング」はそれぞれ別の考え方ですが、どれもテクノロジーが社会を駆動する未来を見据えた時、私たちはどのようにそれと向き合うべきか、という問いに対する応答でもあります。不確かな未来を生きるコンパスとしての「未来学」を提唱する一冊。

わたしの服はどこからきてどこへいくの?
服と人とのサステナブルな関係を考える
ファッション産業を持続可能にするための活動・事業を行う団体「unistep」に所属する二人が著者となる本書。目次を見ると「わたしが着ている服は『大丈夫』なの?」「わたしが手放した服はどうなるんだろう?」「わたしは何を着ればいいんだろう?」など、生活者視点の素朴な問いがそのまま章題になっています。華やかな業界の背景にある生産・流通・消費の実態を正面から見据え、完璧な解決でなくとも個人ができることを見つめ直す、地に足のついた内容です。

リジェネラティブデザイン
人が関わるほど自然も再生する暮らし、ビジネス、社会のあり方を求めて
Webマガジン「greenz.jp」の連載を書籍化した本書。“人と社会と環境に「すこやかさ」を取り戻す仕組みとは、どのようなものか”という問いのもと、22名の実践者たちのインタビューで構成されています。「リジェネラティブ」という概念を言葉で定義するよりも、本書で取り上げられる人々の暮らし方、働き方、そして事業そのものを概観することで、その輪郭が浮かび上がってくるようです。時代のキーワードのひとつを読み解く格好の入門書です。

生態社会学入門
日本の未来を考える
特定の地域について、歴史、地理、経済、文化など多角的・総合的に研究する「地域学」についての著作で知られる著者。本書は日本全体を一つの地域のように捉え、近代化・グローバル化によって一気にもたらされた欧米式の文化・社会に対抗し、日本の風土で暮らしてきた人々の“生態”に則した文化・社会を取り戻すことを提案します。社会分析に生態学的な視座を取り入れることは、自然科学と人文・社会科学を横断する思考をもたらす興味深いアプローチと言えるでしょう。

ダメな会議をゼロにする方法
本書が最初に指摘するのは、組織の中での「会議」には莫大なコストがかかっている、という点。つまり本書では、会議を上手に効率的に運営する方法ではなく(もちろんそれも重要であると本書でも書かれていますが)、徹底した数値化によって不要な会議をなくすことの意味とその方法について論じられています。「この会議、意味があるのか…?」という心当たりがある方が手に取ってみると、たくさんの気づきがありそう。

生きものは遊んで進化する
人間以外の動物の「遊び」に着目した珍しい一冊。本書は動物の「遊び」と、ダーウィンが提唱した「自然選択」との類似性を指摘しています。つまりは、遺伝的多様性が環境の変化に有利な個体を生き残らせてきたように、「遊び」は予知も予測も不可能な状況に対応するための訓練のようなもの、と著者は考えます。人間も動物である以上、遊びが私たちに何をもたらすかを見直したくなる一冊。「生命は遊びに満ちている」という著者の言葉が印象に残ります。

地図で読むアメリカ
「アメリカは50の州からなる連邦国家」と教わりますが、本書はアメリカを一般的な行政区分とは違う10の地域に分けて読み解きます。イギリスからの入植者が最初にたどり着いたニューイングランド地域から始まり、アメリカの歴史を概観しながら各地域の経済的、文化的な特徴も大まかに知ることができます。2020年に出版された本の新書版ですが、現在のアメリカで起きていることの背景を探るヒントにもなります。

ケアする心
子ども、祖父母、夫、親戚など、身近な人々のケアを担う人々の心の襞(ひだ)を描いた短編集。ケアを担う人(あるいは担わざるを得ない人)に寄り添いながらも、ケアが内包する愛情から嫌悪感まで描くと同時に、そんな感情が生じる背景にある社会構造の問題までも浮き彫りになってきます。人口の半数がソウルを中心とした首都圏に集中する韓国社会で、ケアは不可視化、外部化されていきがちなもの。都市集中と少子高齢化が進む日本の都市生活者にも、強く共感を呼ぶ部分があるのではないでしょうか。
ここでもなく、いまでもない
アンソニー・ダン、フィオナ・レイビービー・エヌ・エヌ
体の居場所をつくる
伊藤亜紗朝日出版社
21世紀を動かす思想
樋口恭介集英社
わたしの服はどこからきてどこへいくの?
鎌田安里沙、マルティンメンド有加晶文社
リジェネラティブデザイン
greenz.jp英治出版
生態社会学入門
山下祐介筑摩書房
ダメな会議をゼロにする方法
ケヴァン・ホール、アラン・ホール早川書房
生きものは遊んで進化する
デイヴィッド・トゥーミー河出書房新社
地図で読むアメリカ
ジェームズ・M・バーダマン、森本豊富朝日新聞出版
ケアする心
キム・ユダム白水社
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