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本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2026年8月~

更新日 : 2026年08月24日 (月)

毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の“いま”が見えてくる。
新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介します。

今月の10選は、『つくることとAI』や『科学から見た人間の<多様性>とは何か』など。あなたの気になる本は何?

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 つくること と AI
生成と複製のあいだで
徳井直生 / ビー・エヌ・エヌ


音楽を作ること、絵を描くこと、文章を書くこと。生成AIの登場は、それらのような “創造的” な行為は人間にしかできない、機械に代替できない、という常識に揺さぶりをかけています。創造性とは何なのか、AIは創造的なのか、本書はそんな問いにひとつのクリアな視点を示してくれます。

著者は自身も音楽家として活動しながら、AIが人間の創造性を拡張させる可能性を探ってきたAI研究者。本書では、現在 “生成AI” と呼ばれるシステムを、「生成」という言葉から想起される未知の新しい何かを生み出しているのではなく、また、コピーのように同じものを「複製」しているのでもない “フクセイAI” と名付けて区別し、そのあり方を批判的に論じています。では “フクセイ” ではない、真に新しい表現をもたらすAIとはどのようなものなのか。著者自身の音楽制作の実践を事例として、そのひとつのかたちを提示しています。

本書には “楽器のようなAI” という言葉が出てきますが、これは音楽制作の場面に限らず、人とAIとの関係を問い直すときに、示唆に富む比喩ではないかと思います。そこにはAIが指示に従ってタスクをこなす “部下” のような存在ではなく、ユーザーの創造性や可能性を引き出すものにもなり得ることが含意されています。AIが日常に浸透してから数年、AIを鏡として「人間的なもの」の再定義が急速に行われているようです。AIとともに生きる時代はまだ始まったばかりです。

 
 

地域芸術祭とは何か
山本 浩貴 / 平凡社 
現在では全国のさまざまな地域で開催されている「芸術祭」。本書はその起源から現状の課題までを丁寧に紐解いた一冊です。アーティストに活動の場を与えることにとどまらず、会場となる地域の活性化や人々の交流も目指して実行される芸術祭について考えることは、「社会にとってアートとは何か」と考えることにつながっています。類書がありそうでなかったユニークな入門書。
 

消えるヒッチハイカー
アメリカ都市伝説とその意味
ヤン・ハロルド・ブルンヴァン / 東京創元社 
原著は1981年に、邦訳は1988年に出版されたアメリカの“都市伝説”について調査した民俗学の本の新装版。表題の“消えるヒッチハイカー”とは、アメリカ各地で様々なバージョンで語られてきた都市伝説的な物語の名前。インターネットもない時代にどのように広がったのか、またなぜ人々はいかにも真実らしくない話を広めてしまうのか。リアルとフェイクの間を考えさせられる現代のfolklore(民間伝承)。
 

世界の書店を旅する[増補新版]
ホルヘ・カリオン/ 白水社 
スペイン出身の作家が、自身が訪れたり伝聞的に知った世界各地の本屋のエピソードを綴ったエッセイ。それぞれの街で書店が果たしてきた歴史的、社会的、文化的な役割について深い思索を展開します。古今東西の名前を聞いたこともなく、訪れる機会もなかなかないであろう書店が数多く登場し、さながら旅の中にいるかのよう。同時に、現在の日本で本屋という場所にどんな可能性があるのか考えてみたくなる一冊です。
 

刑務所の文章教室
言葉が心をほどくとき
大塚 敦子 / 紀伊國屋書店 
ノンフィクション作家の著者が、全国3ヵ所の刑務所で実施している文章創作ワークショップの様子を綴った本書。読み書きに馴染みのなかった受講者たちが、ワークショップを通じて少しずつ自分の言葉を獲得し、自分自身を見つめ直していきます。ChatGPTなどのテキスト生成AIの登場で文章を簡単に生み出せる時代に、自分の言葉で、自分の手で「書く」ことの意味を考えさせられます。 
 

科学から見た人間の<多様性>とは何か
遺伝科学と疑似科学
ジョナサン・マークス / 作品社 
自然人類学と遺伝学を専門とする著者が、“多様性”つまり人間同士の“差異”について論じた評論集。各章は「『DNAは人間の奥底にある核心』ではない」「『人間の差異とは人種のこと』ではない」など題されているように、科学的な事実をベースにしているようで、実は文化的に形成されている面も大きい言説が取り上げられていきます。文系・理系を横断するような思考が刺激的な一冊。
 

パンク・ガーデニング宣言
エリック・ルノワール / 草思社 
パリを拠点に活動する景観デザイナー・造園家である著者が説く、自由で型にはまらないガーデニングの実践指南書。園芸的に“パンク”である、ということは、人間の意志で美しく整えられたのではない、植物たちの奔放なあるがままの姿を認めることでもあります。パンク・ガーデニングを通じて、都市生活の中でいつの間にか従っているルールから解放されるのは、植物たちだけでなくわたしたち自身なのかもしれません。
 

受験戦争のメディア史
佐藤 卓己 /NHK出版 
現在ではあまり聞かれなくなった「受験戦争」という言葉。ある年代の人々にとっては切実さを持って思い出されるのではないでしょうか。本書は1970-80年代に社会問題化した受験戦争という現象を、戦前に設立された通信添削会社や受験生たちの「合格体験記」などの出版物を通じて描き直していきます。受験戦争の知られざる一面を明らかにする、ユニークで貴重なメディア論。
 

新・消費論
コト消費、性的消費、応援消費……誰もが語りたがる「神話」の正体
林 凌 / 中央公論新社 
「消費者」「消費社会」「〇〇消費」など、何気なく目にしている「消費」という言葉。しかし一体「消費」とは何を指すのか。具体性の曖昧さゆえに、どんな対象についても「消費論」で解かれてしまうようなこの言葉は、なぜ世の中で使われ続けているのか。世の中は本当に「消費」で語れるのか…? 91年生まれの若手社会学者の問いかけは、現代社会の語り方をアップデートする契機となりうるのか。
 

共異体の人類学
石倉 敏明 / 作品社 
「共同体」ではなく「共異体」。人間以外のもの(いわゆる「生き物」に限定されない)も含めた“異なるもの”たちが、それぞれ異なったまま共存している状態はどのように想像できるのか。芸術人類学と民俗学を横断する、現代的・西洋的な知の大系とは異なる世界の捉え方が、著者のフィールドワークやプロジェクトの実践から浮かび上がってきます。自治体や企業との協働でも注目される気鋭の人類学者による初の単著。
 
 

つくることとAI 生成と複製のあいだで

徳井直生 
ビー・エヌ・エヌ

地域芸術祭とは何か

山本浩貴 
平凡社

消えるヒッチハイカー アメリカの都市伝説とその意味

ヤン・ハロルド・ブルンヴァン 
東京創元社

世界の書店を旅する

ホルヘ・カリオン 
白水社

刑務所の文章教室 言葉が心をほどくとき

大塚敦子 
紀伊國屋書店

科学から見た人間の〈多様性〉とは何か 遺伝科学と疑似科学

ジョナサン・マークス 
作品社

パンク・ガーデニング宣言 エコロジカルで型破りな庭園論

ジョナサン・マークス 
草思社

受験戦争のメディア史 無名戦士たちの合格体験記

佐藤卓己 
NHK出版

新・消費論 コト消費、性的消費、応援消費……誰もが語りたがる「神話」の正体

林凌 
中央公論新社

共異体の人類学

石倉敏明 
作品社