記事・レポート
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」
更新日 : 2008年10月08日
(水)
第1章ニューヨークの大停電で、機能不全に陥ったホテルと平常通りだったホテル
竹内薫: 今日は北野さんと私のトークということですが、まず導入として、なぜ『したたかな生命』という本をつくったのかというところから、少しお話ししようと思います。
我々は実はもともと物理畑の出身です。北野さんはロボカップ(※編注:ロボット工学と人工知能の融合・発展を目指す組織)をやったり、生物学、特にシステム・バイオロジーの方にいかれたり、計算機科学などが非常に強い分野でもあるわけです。我々はどうして会ったのかというと……あれは何でしたっけ?
北野宏明: イタリアのボローニャでのシンポジウムですね。
竹内薫: ああ、分かりました。北野さんはソニーコンピュータサイエンス研究所の副所長(※編注:2008年7月現在、所長)をされていて、ボローニャでシンポジウムをされた。そのシンポジウムの本を僕がサイエンスライターとしてつくる、英語で出版するという話になって、それでイタリアのお城まで行ったんです。
北野宏明: あれはボローニャ大学が持っているセミナーハウスなんです、丘の上のお城というか修道院跡ですね。ボローニャから車で2時間ぐらい南に行ったところにある。
竹内薫: それが知り合った契機ですね。それで、この『したたかな生命』で書いたロバストネスということに僕が最初に興味を持ったのは、本にも書きましたが、ニューヨークに旅行に行ったときのことです。そこでちょうどブラックアウト(※編注:2003年8月14日に起きたニューヨークの大停電)に遭遇して、東部一帯が完全に停電になってしまい、電車も動かない、ホテルも全然だめという状況になったのです。都市生活の脆弱性を目の当たりにしました。
例えば、ホテルはチェックインが全くできない。ホテルに泊まっている人は高層ビルですから窓が開かないのですが、エアコンが使えない。真夏でしたか ら気温がどんどん上昇して、やっていられないということで、みんなで何十階というところから、階段で降りてきてロビーで寝ていました。
ところが僕は、ニューヨークではあまりそういう高層ビルには泊まらないことにしていたので、割合低層の10階建てぐらいの古いホテルに泊まっていた んです。そうしたら、そこは窓が普通に開くし、自家発電もあった。基本的に何ら支障がなかったんです。コンピューターをあまり使っていなかったので、 チェックインは宿帳だったりして確かに時間はかかるのですが、危機管理という意味では脆弱性がそこにはなかった。
大勢のお客さんを常時さばくという意味ではパフォーマンスのいいホテルではないのですが、いざエネルギーが完全に絶たれたときには、非常にロバストなシステムであると気づきました。
それが頭にあったので、北野さんと話をして、「生命の話から始めて、できればそれを企業やホテルといった組織の話まで広げて本がつくれたら」ということで、一緒に始めたんですよね。
我々は実はもともと物理畑の出身です。北野さんはロボカップ(※編注:ロボット工学と人工知能の融合・発展を目指す組織)をやったり、生物学、特にシステム・バイオロジーの方にいかれたり、計算機科学などが非常に強い分野でもあるわけです。我々はどうして会ったのかというと……あれは何でしたっけ?
北野宏明: イタリアのボローニャでのシンポジウムですね。
竹内薫: ああ、分かりました。北野さんはソニーコンピュータサイエンス研究所の副所長(※編注:2008年7月現在、所長)をされていて、ボローニャでシンポジウムをされた。そのシンポジウムの本を僕がサイエンスライターとしてつくる、英語で出版するという話になって、それでイタリアのお城まで行ったんです。
北野宏明: あれはボローニャ大学が持っているセミナーハウスなんです、丘の上のお城というか修道院跡ですね。ボローニャから車で2時間ぐらい南に行ったところにある。
竹内薫: それが知り合った契機ですね。それで、この『したたかな生命』で書いたロバストネスということに僕が最初に興味を持ったのは、本にも書きましたが、ニューヨークに旅行に行ったときのことです。そこでちょうどブラックアウト(※編注:2003年8月14日に起きたニューヨークの大停電)に遭遇して、東部一帯が完全に停電になってしまい、電車も動かない、ホテルも全然だめという状況になったのです。都市生活の脆弱性を目の当たりにしました。
例えば、ホテルはチェックインが全くできない。ホテルに泊まっている人は高層ビルですから窓が開かないのですが、エアコンが使えない。真夏でしたか ら気温がどんどん上昇して、やっていられないということで、みんなで何十階というところから、階段で降りてきてロビーで寝ていました。
ところが僕は、ニューヨークではあまりそういう高層ビルには泊まらないことにしていたので、割合低層の10階建てぐらいの古いホテルに泊まっていた んです。そうしたら、そこは窓が普通に開くし、自家発電もあった。基本的に何ら支障がなかったんです。コンピューターをあまり使っていなかったので、 チェックインは宿帳だったりして確かに時間はかかるのですが、危機管理という意味では脆弱性がそこにはなかった。
大勢のお客さんを常時さばくという意味ではパフォーマンスのいいホテルではないのですが、いざエネルギーが完全に絶たれたときには、非常にロバストなシステムであると気づきました。
それが頭にあったので、北野さんと話をして、「生命の話から始めて、できればそれを企業やホテルといった組織の話まで広げて本がつくれたら」ということで、一緒に始めたんですよね。
北野宏明: そうですね。始めたのが、もう2、3年ぐらい前のことですね。この本は去年(2007年11月)出したのですが、本当は2年ぐらい前に出なければいけなかった。でも私がなかなか進まなくて、やっと去年出せた。
竹内薫: 最初は僕がお話を伺ったり実際に講義を受けたりして、それをテープに録音して編集したんです。それは割合早く、半年ぐらいでできました。その段階では、僕はすごくやわらかい内容でいこうとしていました。
でもだんだんと話をしているうちに、かなり本格的な話だし、あまりやわらかくして新書系のベストセラーみたいになるものとはちょっと違うという感じ がしてきて。徐々に「もっと学術的にカチッとした本をつくりましょう」みたいな話になって、北野さんにかなり抜本的に加筆いただいて、最終的にこういう形 になったのですね。
北野宏明: そうですね。最初はベストセラーをサッとつくるつもりだったのに、時間をかけてベストセラーを狙わない本を一所懸命つくったという(笑)。
竹内薫: でも、カチッとした非常にいい本になりました(笑)。
竹内薫: 最初は僕がお話を伺ったり実際に講義を受けたりして、それをテープに録音して編集したんです。それは割合早く、半年ぐらいでできました。その段階では、僕はすごくやわらかい内容でいこうとしていました。
でもだんだんと話をしているうちに、かなり本格的な話だし、あまりやわらかくして新書系のベストセラーみたいになるものとはちょっと違うという感じ がしてきて。徐々に「もっと学術的にカチッとした本をつくりましょう」みたいな話になって、北野さんにかなり抜本的に加筆いただいて、最終的にこういう形 になったのですね。
北野宏明: そうですね。最初はベストセラーをサッとつくるつもりだったのに、時間をかけてベストセラーを狙わない本を一所懸命つくったという(笑)。
竹内薫: でも、カチッとした非常にいい本になりました(笑)。
※本セミナーで取り上げている病気や疾患などの説明および対処方法は、「ロバストネス」の観点からの仮説です。実際の治療効果は一切検証されていません。講師およびアカデミーヒルズは、いかなる治療法も推奨しておりませんし、本セミナーの内容および解釈に基づき生じる不都合や損害に対して、一切責任を負いません。病気や疾患などの治療については、信頼できる医師の診断と指示を必ず仰いでください。
関連書籍
したたかな生命
北野 宏明, 竹内 薫オーム社
「したたかな生命~進化・生存のカギを握るロバストネスとは何か~」 インデックス
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第1章ニューヨークの大停電で、機能不全に陥ったホテルと平常通りだったホテル
2008年10月08日 (水)
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