記事・レポート

今こそ読みたい『古くて新しい記事』

~ストックされた知識から学ぶということ~

更新日 : 2020年08月18日 (火)

『古くて新しい記事』2011



  
過去の書籍、映画、音楽ライブ、演劇など、これまでにストックされてきた素晴らしいコンテンツの数々がいま再び脚光を浴びています。コンテンツを一過性で消費して終わりではなく、過ぎた時間と照らし合わせることによって気づきを得られることもある、と私たちは考えます。
 
この企画では、アカデミーヒルズでストックされているイベントレポート「古くて新しい」記事をピックアップしてお届けしてまいります。私たちは過去の登壇者のお話から今、何を学べるのか?
自分を内省する時間の糧として、今でも新たな発見やヒントが散りばめられている過去の記事を読み直してみませんか。

 2011年 はどんな年?

2011年は震災の年として皆さんの心に刻まれているのではないでしょうか。3月11日にマグニチュード9の地震が東日本を襲い、その後に続いた巨大な津波によって日本は甚大な被害を受けました。福島第一原発の事故によって放射性物質が大量に拡散し、東日本大震災は世界中を震撼させたのです。
被災地の惨状、電力不足の問題などを通じて、私たちは日々の生活で「当たり前」だと思っていたことがそうではないことに気づき、価値観を根底から変えざるを得ないような状況に直面しました。それは、コロナ禍にある現在にも通じるのではないでしょうか。
 
2011年は2月にニュージーランド、クライストチャーチで大地震が発生し、7月にはタイが豪雨による大洪水に見舞われるなど、世界各地で自然災害が起きた年でした。
国内では福島原発事故によって原発停止が相次ぎ、電力不足が深刻化。震災の対応に追われる民主党政権は当時の菅直人首相が退陣を表明し、野田佳彦氏が首相に就任するまで迷走しました。女子サッカーワールドカップでの日本チーム「なでしこ・ジャパン」の優勝は、震災の被害から立ち直ろうとする日本に希望をもたらしました。
海外では、中東やアラブ諸国で民主化運動によって独裁政権が崩壊した「アラブの春」、アップル共同創業者でCEOを務めたSteve Jobs氏の死去、北朝鮮の金正日総書記の死去など、時代の節目を感じさせるニュースが相次ぎました。
 
 
 2011年 ピックアップ記事
 
アカデミーヒルズでは震災当日3月11日夜に予定していたセミナーを急遽中止し、その後もしばらくセミナーの実施を見送りました。4月下旬のチャリティーイベントを皮切りにセミナーを再開しました。
 
今回は、「東日本大震災 海外報道の舞台裏」と題した震災に直結したテーマのイベントだけでなく、ミリオンセラーとなって社会現象化した『もしドラ』の編集者が直伝するヒットの作り方の講演、『告白』『悪人』『エデンの東』などのヒット映画を手掛けた若手プロデューサーが制作の舞台裏を語る講演など、コンテンツや企画に関わるものや、当時注目されていた「グローバル人材」をキーワードとした講演録、台頭する中国に関連するテーマなど、当時の世相が分かる5つの記事をピックアップしました。
 
今回新たにコメントを下さったのは、note(株)CEOの加藤貞顕さんです!
 

異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と、売れる企画の法則~
【登壇者】
加藤貞顕[note(株)CEO / ダイヤモンド社 書籍編集局第三編集部 (当時)]
田中洋[中央大学ビジネススクール教授]
【連載開始】2011年5月



2010年にダイヤモンド社として初めて100万部を突破し、女子高生とドラッカーという異色の組み合わせが注目を集めた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』。この記事が公開された頃には240万部を超え、『もしドラ』という略称で社会現象化していた本書の編集者、加藤貞顕氏が語った「ミリオンセラーまでの軌跡」と「売れる企画の法則」。当時の社会状況、ネタ探しから本書を出版した経緯、読者層、社内で立ち上がった100万部プロジェクトの内容が詳細に語られ、あらゆるビジネスの企画に携わる方にとって、今でもバイブルとなるような内容です。
 
出版業は縮小しているが、「コンテンツビジネスの未来は明るい」と言い切る加藤氏はその後、デジタルコンテンツの未来を切り拓くために2011年12月にピースオブケイク(現note株式会社)を創業し、noteのMAUが6300万(2020年6月)になるまで成長させています。「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」をミッションにnoteを運営する加藤氏のベースとなる考え方が、この記事を読むとよく理解ができます。

異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた (記事全文はこちら)

加藤貞顕さんからコメントをいただきました。

この講演が行われた約10年前、私は出版社の編集者という立場でしたが、「コンテツビジネスの未来は明るい」と言いました。ネットの発展で、人間がふれる情報量が飛躍的に増大しているから、その周囲のビジネスが盛り上がらないはずがないという理由です。また、テクノロジーとデザインとライフスタイルの3つをうまく組み合わせることが重要だ、という話もしています。
あらためて読んでみて、これらの話は、いま私の会社が運営しているnoteというサービスにつながっているなと感じます。ネット時代のクリエイターは、どうやって活動したらいいのか? 人々はどうやって想いを伝え、仲間を見つけ、創作をどう続けていけばいいのか? そういった問いへのひとつの回答がnoteです。

講演の最後では、「大事なのは業界じゃなくて、読者であり、クリエーターであり、そこに関係した人々みんなが幸福になることなのです。そこに貢献できるようなものをつくっていけば何とかなる、そう思って今後もやっていこうと思っています」と結んでいます。この想いは、いまもまったく変わりません。

人々の心を癒やし、人生を豊かにする、コンテンツの重要性は、時を経てさらに高まっていると感じます。

 

芥川賞作家、楊逸氏が語る
眉間にシワのよらない「異文化の中の常識」という話
【登壇者】楊逸[作家]
【連載開始】2011年3月



『時の滲む朝』で日本語を母国語としない作家として初めて芥川賞を受賞した楊逸(ヤン・イー)氏が軽快に語る日中異文化論。2011年初めに話題となったのが、中国が2010年のGDPで日本を抜いて世界第2位となり、日本が40年以上に渡って守り抜いてきた「世界第二の経済大国」の地位を明け渡したことでした。しかし、楊氏の話は彼女が初めて来日した1987年当時、中国が貧しく、それに比べて日本が遥かに豊かだった頃の話から始まります。
高い声で明るく楽しそうに話す日本人を見て、何を話しているのか知りたい、自分もそんな風に話したい、と思ったことが日本語を学ぶ原動力になったという楊氏。漢字から分かる日中の文化の違いなど、彼女ならではの視点で日中の比較が展開されています。
 
今年6月に出版された『わが敵「習近平」』で激しく中国共産党を批判する楊氏の鋭さとはまた違う、眉間にシワのよらない、楽しく読める講演録ながらも、中国での生活の厳しさが行間から伺えます。

東日本大震災・海外報道の舞台裏 
なぜ過剰報道は起きたのか
【登壇者】
Eric Johnston[ジャパンタイムズ大阪支局次長]
石倉洋子[一橋大学名誉教授 / 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 (当時)]
【連載開始】2011年9月



「東京を出ていけ!ゴーストタウン東京での悪夢」---これは、英国の大衆紙The Sunが3月17日に報じた記事の見出しといわれます。東日本大震災がもたらした未曾有の被害と原発事故は世界中の注目を集めましたが、海外メディアの報道はセンセーショナルで不正確な情報も多いと指摘されました。
このような海外メディアの過剰報道によって、東京にいた在日外国人たちはパニックに陥り、3月12日から半月の間に10万人以上の外国人が日本を出国したといわれています。報道によっては、東京渋谷に原発があると報じたものもあり、海外メディアに批判が集中しました。
 
この講演では、英字新聞ジャパンタイムズ紙のEric Johnston記者が、海外メディアの過剰報道が起きた背景を、そこに至る文脈で捉えて解説し、単なる批判にとどまらない深い視点の分析を披露しています。いま、コロナ禍での報道を考える上でも示唆を与えてくれます。

若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方
~『告白』『悪人』『東のエデン』はこうして生まれた~
【登壇者】
川村元気[映画プロデューサー・小説家 / 東宝(株) 映画企画部 プロデューサー (当時)]
石井朋彦[Production I.G プロデューサー]
佐々木紀彦[NewsPicks Studios CEO /「週刊東洋経済」編集部 記者 (当時)]
【連載開始】2011年11月



現在はソーシャル経済メディアNewsPicksでご活躍の佐々木紀彦氏が東洋経済で記者をしていらしたときにアカデミーヒルズとコラボ企画していた『東洋経済インタラクティブセミナーシリーズ』。各界で活躍するイノベーティブな人物をお招きし、佐々木氏がお話を引き出すセミナーは毎回人気を博しました。この講演録は当時大ヒット作となっていた『告白』『悪人』『東のエデン』を生み出し、日本映画界を代表する若手プロデューサーとして注目を集めていた川村元気氏と石井朋彦氏をお迎えしたときのものです。
 
ご自分が手がけた作品の企画構想段階から宣伝に至るまでのプロセスを詳細にお話されるお二人に共通するのは、「今、何を描くべきか」「それを届けるためのテーマ」を監督と決めて、新しいコンセプトとして軸に据え、クリエイターや現場スタッフとうまく組み上げていくか、を重要視していること。アンハッピーエンドに振り切った『告白』によって、最後に救いを求めない「悪意のエンターテイメント」という新たなコンセプトを切り拓いた川村氏、企画の骨子を「日本を覆う空気に戦いを挑む映画」に定めた石井氏の両氏が、企画の極意を伝授します。

若き映画プロデューサーが語る、面白いストーリーの作り方(記事全文はこちら)


橘・フクシマ・咲江氏が語る、グローバル人財獲得競争・最前線
~ヘッドハンター第一人者に聞く、世界で必要とされる人財~
【登壇者】橘・フクシマ・咲江[G&S Global Advisors Inc.代表取締役社長]
【公開開始】2011年11月



日本のヘッドハンター第一人者として世界的に知られる橘・フクシマ・咲江氏が、世界の人材市場の現状とグローバルな視点から日本の人財開発・日本人のキャリア形成に必要なことを語った講演の記事。当時、日本のビジネスパーソンの間でグローバルに活躍する人材が足りないという問題意識が共有されており、セミナー会場は満席で、熱心にメモを取る若手のビジネスパーソンの姿で熱気に溢れていました。
 
彼女がヘッドハンティングの仕事を始めた当初、日本には「売れる人材」という認識はなく、リーダーといえば、管理者的な人しか見当たらなかったといいます。
「グローバル・リーダーの要件」と「グローバルなプロフェッショナルの変革者」の要件を詳細に解説。実際に成功しているリーダーの共通点として「自立・自律したキャリア・人生を送っている人」「自分の能力を自己査定して向上させる人」を挙げます。最後にフクシマ氏が語った、ご自身が心掛けている「外柔内剛」という言葉は、多くの人にとって今でも参考になるでしょう。

橘・フクシマ・咲江氏が語る、グローバル人財獲得競争・最前線(記事全文はこちら)

 
※記載されている肩書は当時のものです。

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