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チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間

~今求められる消費者の品格~

BIZセミナーその他
更新日 : 2009年03月19日 (木)

第10章 グローバリゼーションは私たちの生活を本当に豊かにするのか

坂東眞理子さん
坂東眞理子: 先日洞爺湖サミットが終わったばかりですが、サミットの大きなテーマは環境問題であり、相互依存の世界、グローバリゼーションでした。NGOなどは批判していますが、とうとうとして私たちの経済、私たちの暮らしは相互依存度が増えていくわけですが、これがいいことなのでしょうか。

日本では規制緩和ということが強く主張されています。「規制を緩和して、世界中からいいものを安く輸入できることが消費者のメリットである」と、規制緩和論者の人たちは強く主張してきました。確かに私たちが習った経済学の初歩では、「自分たちがより安く、より得意なものに特化して生産をして、それを交換した方がお互いが豊かになるんだ。比較優位による貿易によって世界は豊かになる」ということを習っているわけですが、私たちは本当に豊かになっているのでしょうか。

確かに、安く買えるようになっています。サラさんも何度もおっしゃっているように、アメリカで中国製品なしで生活しようと思うと、本当に3倍、4倍、5倍というお金を払わなければなりません。中国製品は安いのです。安い割には、そこそこの品質です。でも、大量生産・大量消費。安いと使い捨てすることができますから、結果的にはもの、あるいはつくってくれた人、あるいはもしかしたら資源に対してまで、感謝と敬意を私たち消費者は失ってしまっているのではないでしょうか。山ほど提供され「消費者は神様なんだ、お金を払って買う人が一番偉いんだ」という考え方に私たちは されてしまっているのではないでしょうか。

あまり豊かではない消費者が、自分の持っているお金で欲しいものが買える暮らしというのは気持ちがいい。私たちは貧しかった時代、お金がなくてものが買えないという経験をたくさんしてきました。「これだけのお金しかないから、買いたいものも買えない」というのはとても悲しかったですし、つらかったのです。

もちろん今でもワーキング・プアとか、いろいろなレベルの暮らしをしている人がいますから、みんながみんなではありませんけれど、今の日本ではかなりの人たちが自分のお金で欲しいものを欲しいだけ買うことができます。そうして買う立場が強い、尊敬される、尊重されるということに甘えてしまっているのではないか。つくり手に対して、サービスをしてくれる人に対して感謝するのを忘れてしまっているのではないでしょうか。
(その11に続く、全15回)

関連書籍

チャイナフリー—中国製品なしの1年間

ボンジョルニ,サラ, 雨宮 寛, 今井 章子
東洋経済新報社

チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間 インデックス

該当講座

チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間
今求められる消費者の品格
Sara Bongiorni (ジャーナリスト)
坂東眞理子 (昭和女子大学学長)
雨宮寛 (コーポレートシチズンシップ代表取締役)
今井章子 (コーポレートシチズンシップ取締役)

中国——この急成長を遂げる屈指の製品輸出国ほど、21世紀のグローバル経済が引き起こす功罪に深く関わっている国はないでしょう。中国製品には、安心・安全、環境問題、格差問題、資源獲得競争、少子高齢化など、世界の多くの国が共有する社会問題が凝縮されているといってもいいでしょう。しかし、私たちはそうした問題....


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