記事・レポート
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間
~今求められる消費者の品格~
BIZセミナーその他
更新日 : 2009年03月27日
(金)
第11章 たくさんの好きなものに囲まれる生活が一番豊かなのか?
坂東眞理子: 私たちは昔は食事をするときに、「いただきます」と、つくってくれた人、あるいは植物、動物の命をいただくことに対して感謝して食べて、自分たちの命を養っていました。今はもうそんなことは誰も思わなくなってしまっています。
着るものでも、昔はお母さんが夜なべをしてセーターを編んでくれたとか、縫ってくれた。そういう労働のうえに私たちの衣生活は成り立っていたわけですけれども、今は1枚1,000円、500円のTシャツがいくらでも安く手に入ります。古くなったら、汚くなったら、ポイポイ捨てても誰もとがめないという生活が、日本でも当たり前になってしまったのではないでしょうか。
そうした生活を見直すきっかけとして、チャイナフリーの生活をやってみようという試み、勇気ある消費者の行動というのは、私たちの今の暮らしを見直すいいきっかけになるのではないかと思います。
食べものでは、フード・マイレージという考え方がだいぶ盛んになってきました。その土地で収穫されたものを食べているときには輸送費はかかりません。しかし遠くから運んできた食べものには輸送費がかかっている、それだけ石油を使っている、CO2を排出している、「だからそういうものをカウントしよう」という動きがあって、「地産地消」ということを言っているグループがあります。スローガンとして言うのはやさしいことですが、サラさんが実行したように、本当にそれを実行しようと思うと大変な困難がつきまといます。しかし、ある時期そういう生活を一度試みてみるというのは、とてもいいのではないかと思います。
なぜ、人には多くのものが要るのだろうか?「広い家に住み、たくさんの好きなものに囲まれる、そういう生活が一番豊かなんだ」というふうに、私たちはいつの間か思っているわけですが、実は高度経済成長以前の日本人の暮らしというのは、ほとんどものを持たなかったのです。
例えば夏の日本の座敷を思い出してみてください。すだれを吊って、ほとんど物というのは置かれていませんでした。せいぜいちゃぶ台が1つあるだけ。そのちゃぶ台だって食事をしないときには片づけることができる。そういう部屋が夜は寝室になるので、ベッドなどというような道具は必要ありませんでした。もちろんソファーもありませんでした。
ものがなくてシンプルで暮らす中での豊かさと、できるだけたくさん、できるだけ新しい技術でつくったもの、性能のいいものに囲まれて暮らすのがいいんだという今の私たちの暮らし。その大きな対比をもう一度考え直さなければならないのではないかという気がします。
(その12に続く、全15回)
着るものでも、昔はお母さんが夜なべをしてセーターを編んでくれたとか、縫ってくれた。そういう労働のうえに私たちの衣生活は成り立っていたわけですけれども、今は1枚1,000円、500円のTシャツがいくらでも安く手に入ります。古くなったら、汚くなったら、ポイポイ捨てても誰もとがめないという生活が、日本でも当たり前になってしまったのではないでしょうか。
そうした生活を見直すきっかけとして、チャイナフリーの生活をやってみようという試み、勇気ある消費者の行動というのは、私たちの今の暮らしを見直すいいきっかけになるのではないかと思います。
食べものでは、フード・マイレージという考え方がだいぶ盛んになってきました。その土地で収穫されたものを食べているときには輸送費はかかりません。しかし遠くから運んできた食べものには輸送費がかかっている、それだけ石油を使っている、CO2を排出している、「だからそういうものをカウントしよう」という動きがあって、「地産地消」ということを言っているグループがあります。スローガンとして言うのはやさしいことですが、サラさんが実行したように、本当にそれを実行しようと思うと大変な困難がつきまといます。しかし、ある時期そういう生活を一度試みてみるというのは、とてもいいのではないかと思います。
なぜ、人には多くのものが要るのだろうか?「広い家に住み、たくさんの好きなものに囲まれる、そういう生活が一番豊かなんだ」というふうに、私たちはいつの間か思っているわけですが、実は高度経済成長以前の日本人の暮らしというのは、ほとんどものを持たなかったのです。
例えば夏の日本の座敷を思い出してみてください。すだれを吊って、ほとんど物というのは置かれていませんでした。せいぜいちゃぶ台が1つあるだけ。そのちゃぶ台だって食事をしないときには片づけることができる。そういう部屋が夜は寝室になるので、ベッドなどというような道具は必要ありませんでした。もちろんソファーもありませんでした。
ものがなくてシンプルで暮らす中での豊かさと、できるだけたくさん、できるだけ新しい技術でつくったもの、性能のいいものに囲まれて暮らすのがいいんだという今の私たちの暮らし。その大きな対比をもう一度考え直さなければならないのではないかという気がします。
(その12に続く、全15回)
※この原稿は、2008年7月10日にカデミーヒルズで開催した「チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間~今求められる消費者の品格~」を元に作成したものです。尚、サラ・ボンジョルニのスピーチは英語で行われたため、翻訳しています。
関連書籍
チャイナフリー—中国製品なしの1年間
ボンジョルニ,サラ, 雨宮 寛, 今井 章子東洋経済新報社
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間 インデックス
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第1章 なぜ「中国製品を買わずに1年間生活してみよう」と思ったのか
2008年10月29日 (水)
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第2章 おもちゃや電気製品はもちろん、ブランドスーツも中国製
2008年11月10日 (月)
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第3章 中国製以外の子ども靴を見つけるのに2週間。かかったお金は約5倍
2008年11月21日 (金)
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第4章 チャイナフリーの実験で、親戚や家族関係に危機が生じることも
2008年12月05日 (金)
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第5章 「Made in China」以外にも中国製はある
2008年12月05日 (金)
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第6章 「安いから買う」という消費生活からの脱却
2009年01月29日 (木)
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第7章 中国に対して背を向けるわけにはいかない
2009年02月19日 (木)
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第8章 中国との貿易はいいことなのか、悪いことなのか
2009年03月04日 (水)
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第9章 「チャイナフリー」。言うは易く行うは難し
2009年03月11日 (水)
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第10章 グローバリゼーションは私たちの生活を本当に豊かにするのか
2009年03月19日 (木)
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第11章 たくさんの好きなものに囲まれる生活が一番豊かなのか?
2009年03月27日 (金)
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第12章 「ものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない」
2009年04月08日 (水)
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第13章 価格を追求するアメリカ、品質を追及する日本
2009年04月27日 (月)
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第14章 日本の親は、子どもが欲しがるものを何でも買い与えてしまう
2009年05月19日 (火)
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第15章 「恥知らずな生活」を見直そう
2009年06月04日 (木)
該当講座
中国——この急成長を遂げる屈指の製品輸出国ほど、21世紀のグローバル経済が引き起こす功罪に深く関わっている国はないでしょう。中国製品には、安心・安全、環境問題、格差問題、資源獲得競争、少子高齢化など、世界の多くの国が共有する社会問題が凝縮されているといってもいいでしょう。しかし、私たちはそうした問題....
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