記事・レポート
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間
~今求められる消費者の品格~
BIZセミナーその他
更新日 : 2009年04月08日
(水)
第12章 「ものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない」
坂東眞理子: サラさんの結論としては、「中国製品はこれだけ多く安く提供されるが、中国との貿易、中国の経済成長というのは、いいことなのか、悪いことなのか、分からない」ということでした。
私は恐らく中国だけではなく、次にはインドだろうと思います。またASEANの国々もどんどんそうした経済成長の路線に入ってきています。日本がかつての伝統的な生活スタイルを失ったように、恐らく中国でも、インドでも、インドネシアでも、グローバリゼーションの中で、同じようなファッション、同じような機械に囲まれて生活するような時代が来ているのでしょうが、ものに囲まれた、ものが豊かに提供されているような暮らしをどこまでやっていくのでしょうか。
『暴走する資本主義』(ロバート・B・ライシュ著、雨宮寛・今井章子訳)という本もあるのですが、もっともっと自分たちの欲望を追求していくという形の暮らしでいくのか、それとも欲望という分母の方を、もうそろそろいいじゃないかと少し抑えるのか。分母を少なくすれば、分子がそんなに増えなくても満足度が高くなるのかもしれない。そんな新しい哲学を必要としているのかなという気がします。
20世紀、いろいろな貧しい国が豊かになり、貧しさから抜け出すことによって、私たちは教育を受け、いろいろなことを知り、清潔な暮らしを手に入れ、病気が治療できることで長生きできるようになった。いろいろないいことを手に入れたのですが、あるレベルに達したときには、さらにそれを追求して、「もっと、もっと、もっと」とやることによって行き過ぎてしまうかもしれないのです。「かもしれない」というのは、そこのところのコンセンサスはまだ得られていないと思います。
サラさんがそうだったように、どこまで追及するのがリーズナブルなんだろうか、日本だけではなしに世界の人たちみんなが、どこまで物質的な豊かさを追求すれば地球全体のウェルフェアは大きくなるのだろうかということに対する答えは、私にも見当たりません。
ただ、恐らくものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない。自分だけが便利なものを持ち、自分だけが快適な暮らしをするだけではなしに、自分の持っているものを必要としている人に分かち与えシェアするような思想。あるいは自分がいろいろなものを得ることができたのはほかの人たちの助けによってであり、私たちはその助けによって、こうした生活をしているんだということを考え、感謝するような生活というものを、もう少し取り戻さなければならないのではないでしょうか。
この本『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』を読んで、大いに私たち自身の暮らしを見直さなければならないと思いました。
(その13に続く、全15回)
私は恐らく中国だけではなく、次にはインドだろうと思います。またASEANの国々もどんどんそうした経済成長の路線に入ってきています。日本がかつての伝統的な生活スタイルを失ったように、恐らく中国でも、インドでも、インドネシアでも、グローバリゼーションの中で、同じようなファッション、同じような機械に囲まれて生活するような時代が来ているのでしょうが、ものに囲まれた、ものが豊かに提供されているような暮らしをどこまでやっていくのでしょうか。
『暴走する資本主義』(ロバート・B・ライシュ著、雨宮寛・今井章子訳)という本もあるのですが、もっともっと自分たちの欲望を追求していくという形の暮らしでいくのか、それとも欲望という分母の方を、もうそろそろいいじゃないかと少し抑えるのか。分母を少なくすれば、分子がそんなに増えなくても満足度が高くなるのかもしれない。そんな新しい哲学を必要としているのかなという気がします。
20世紀、いろいろな貧しい国が豊かになり、貧しさから抜け出すことによって、私たちは教育を受け、いろいろなことを知り、清潔な暮らしを手に入れ、病気が治療できることで長生きできるようになった。いろいろないいことを手に入れたのですが、あるレベルに達したときには、さらにそれを追求して、「もっと、もっと、もっと」とやることによって行き過ぎてしまうかもしれないのです。「かもしれない」というのは、そこのところのコンセンサスはまだ得られていないと思います。
サラさんがそうだったように、どこまで追及するのがリーズナブルなんだろうか、日本だけではなしに世界の人たちみんなが、どこまで物質的な豊かさを追求すれば地球全体のウェルフェアは大きくなるのだろうかということに対する答えは、私にも見当たりません。
ただ、恐らくものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない。自分だけが便利なものを持ち、自分だけが快適な暮らしをするだけではなしに、自分の持っているものを必要としている人に分かち与えシェアするような思想。あるいは自分がいろいろなものを得ることができたのはほかの人たちの助けによってであり、私たちはその助けによって、こうした生活をしているんだということを考え、感謝するような生活というものを、もう少し取り戻さなければならないのではないでしょうか。
この本『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』を読んで、大いに私たち自身の暮らしを見直さなければならないと思いました。
(その13に続く、全15回)
※この原稿は、2008年7月10日にカデミーヒルズで開催した「チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間~今求められる消費者の品格~」を元に作成したものです。尚、サラ・ボンジョルニのスピーチは英語で行われたため、翻訳しています。
関連書籍
チャイナフリー—中国製品なしの1年間
ボンジョルニ,サラ, 雨宮 寛, 今井 章子東洋経済新報社
チャイナ・フリー 中国製品なしで暮らす1年間 インデックス
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第1章 なぜ「中国製品を買わずに1年間生活してみよう」と思ったのか
2008年10月29日 (水)
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第2章 おもちゃや電気製品はもちろん、ブランドスーツも中国製
2008年11月10日 (月)
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第3章 中国製以外の子ども靴を見つけるのに2週間。かかったお金は約5倍
2008年11月21日 (金)
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第4章 チャイナフリーの実験で、親戚や家族関係に危機が生じることも
2008年12月05日 (金)
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第5章 「Made in China」以外にも中国製はある
2008年12月05日 (金)
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第6章 「安いから買う」という消費生活からの脱却
2009年01月29日 (木)
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第7章 中国に対して背を向けるわけにはいかない
2009年02月19日 (木)
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第8章 中国との貿易はいいことなのか、悪いことなのか
2009年03月04日 (水)
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第9章 「チャイナフリー」。言うは易く行うは難し
2009年03月11日 (水)
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第10章 グローバリゼーションは私たちの生活を本当に豊かにするのか
2009年03月19日 (木)
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第11章 たくさんの好きなものに囲まれる生活が一番豊かなのか?
2009年03月27日 (金)
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第12章 「ものの豊かさだけでは人間は幸せにはなれない」
2009年04月08日 (水)
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第13章 価格を追求するアメリカ、品質を追及する日本
2009年04月27日 (月)
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第14章 日本の親は、子どもが欲しがるものを何でも買い与えてしまう
2009年05月19日 (火)
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第15章 「恥知らずな生活」を見直そう
2009年06月04日 (木)
該当講座
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