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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年06月12日 (木)

第13章 マケインには、21世紀の外交を任せられない

ジェラルド・カーティス: この20年間のアメリカ大統領の顔を見ると、ブッシュ4年、クリントン8年、ジュニアブッシュ8年……20年間、ブッシュかクリントンだったでしょう。ブッシュ、クリントン、ブッシュときて、またクリントン?おかしいですね。

みんな「日本の政治はおかしい」とよく言うのですが、アメリカも相当おかしい。同じ家族がずっと24年も28年も大統領になるなんて、民主主義国といえるのか、と思ってしまいます。もしもヒラリーがビル・クリントンの奥さんではなく、立派な女性で、自力ここまで来て大統領選挙に出たとなれば、また話は違うと思うのですが、やはりビル・クリントンの奥さんだから、こうなれたんです。

旦那の浮気を耐えたのが偉いとか、80カ国回っているというのは、あれはビル・クリントン大統領の奥さんだったからです。奥さんでいろいろなところに行ったのを「外交の経験がある」とPRされると冗談じゃないよと言いたくなります。

民主党が自滅しなければ、オバマが大統領候補者になります。ヒラリーは自分の党のことを、そして自分の国のことを本当に考えているのであれば、4月下旬のペンシルベニアか5月上旬のインディアナ、せいぜいあと2、3週間ぐらいでやめて、オバマを支持するべきです。そうしないでギリギリまで頑張ったら、オバマがマケインとの戦いにおいて非常に苦しい立場になって、大統領になるはずがないと思われているジョン・マケインがなる可能性が出てきます。

「なるはずがない」というのには、いろいろな意味があります。1つは共和党そのものの問題。今のアメリカの経済問題、イラクでの行き詰まり、こういう問題を起こしたのは共和党のブッシュ大統領です。そのブッシュ大統領の外交政策、特に中東・イラクの政策を一番支持しているのがジョン・マケインなんで す。国民がブッシュの政策に反対しているのに、それを支持しているマケイン支持が大統領になるというのはおかしい。

それと今、一番アメリカにとって深刻な問題は経済なんです。健康保険をどうするか、サブプライムローンの問題から発生した家を失っている人たちをど う支えるか、これが一番大きな問題になっているのに、ジョン・マケインは、「いや、自分は経済はよく分からない」と言うのです。彼は外交の専門家というより軍事の専門家です。彼はもともとは軍人で、彼の外交は全部軍事政策です。

軍事も必要だし大事だとは思うのですが、この21世紀は環境問題やエネルギー問題などいろいろな資源の問題があって、これらは銃で解決できるものではありません。古い20世紀の考え方をそのまま21世紀に持ってきたら、アメリカは駄目になる。イラクだけではなくて、イランとも戦争をして、ひょっとし たら北朝鮮も攻撃する……そんな国になってほしくないと思うアメリカ人が多いから、マケインが勝つはずはないのです。

「アメリカの建国以来、ジョージ・ブッシュが最悪の大統領だ」というアメリカ人が25%もいます。支持する人は30%もいません。その後に続こうとするマケインが勝つというのはおかしな話です。

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