記事・レポート

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年06月16日 (月)

第14章 テロが起きたら、マケインが勝つ

ジェラルド・カーティスさん

ジェラルド・カーティス: マケインが勝つ可能性もあります。民主党の候補者争いでヒラリーはたぶん負けると思いますが、その戦いの中でオバマに対する疑問が非常に多く出てくると、やはりオバマは無理だということになります。

バラク・オバマが大統領候補者になるのは、日本でいえば、しばらく県会議員をやった人が衆議院議員になって3年目で総理大臣になるようなものなのです。彼はワシントンの上院議員になってまだ3年、1期目です。安倍晋三は経験がなかった、大臣は官房長官以外したことがなかったといいますが、オバマはもっと経験のない人だからリスクはあります。対するマケインは、それこそ本物のいろいろな経験を積んでいる人です。それがオバマの弱さなのですが、ヒラリーは今、そこをすごく攻撃しているのです。

経験も大事ですが、トップリーダーは人格が一番重要だと私は思います。オバマはアメリカの多民族を象徴する人です。お父さんがイスラム、お母さんがクリスチャン、お父さんがアフリカン、お母さんが白人、育ったのがハワイ、インドネシア。すばらしいことだと思います。

アメリカの政治家が演説するときによく言うのは「白人も黒人もヒスパニックもみんな仲良くしてやらないと、この国の将来はない。だからみんな仲良くしましょう」ということです。しかし面白いことに、オバマさんは必ずそこに「アジア人」も入れます。彼の頭の中には、アジアがちゃんと存在しているのです。

私はオバマにとても期待しています。彼が大統領になれば、ヒラリーやマケインよりもアジアのことを意識するでしょう。そして日本との関係を軍事同盟の観点からだけではなく、もっと広い意味で、例えば世界の平和やアフリカの発展のために、いろいろなことをもっとアメリカと日本が一緒になってやろうとするだろうと、僕は期待しているのです。いわゆる外交経験はない人ですが、それほど大きな問題ではないと思います。

まだ誰に入れるか決めていない人たちが、「経験の少ない、この若い人で本当に大丈夫だろうか」と考えると、ジョン・マケインが大統領になる理由の1つになります。

もう1つは、9月11日のようなテロ事件がアメリカで起こること。そしたらジョン・マケインが大統領になります。アメリカ人の関心が国内問題に集中するなら、民主党の候補者が勝つ。でもテロとの戦い、テロの恐怖が選挙での大きな焦点になれば、マケインが勝つ可能性が高い。テロ事件があれば、マケイン が非常に強くなる可能性があるのです。

「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」 インデックス