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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年06月02日 (月)

第7章 ヒラリーが嫌われる理由。このままでは民主党が自滅する

ジェラルド・カーティス: 私は、今回は共和党ではなく絶対民主党に政権をとってもらいたいと思っています。ですが、民主党支持者の54%は「ヒラリーは嫌だ」と言っているということが、最近の調査で分かったのです。

なぜかというと、「自分がいかにいい大統領になれるか」を国民に説得するのではなくて、「オバマは駄目だ」という話ばかりして、足を引っ張ろうとするからです。今の状況からするとオバマが民主党の候補者になると思いますが、共和党のマケインとの戦いになったとき、マケインは間違いなく、ヒラリーが今まで言ってきたオバマ批判をそのまま使います。だから、ヒラリーとオバマの対決がこれ以上長引いたら、民主党の自殺行為につながりかねないのです。

ペンシルベニアの予備選挙は来週の火曜日(4月22日)に行われます。おそらくヒラリーが勝つでしょう。あそこは労働組合、ブルーカラーが多いところで、そこに彼女が非常に強 いのです。ただ、勝つとしても1桁の差、例えばヒラリーが54%ぐらいになるでしょう。もしも彼女が60%以上の支持を得たら、分からなくなります。(※ 編注:結果はヒラリーが約53%を獲得)

なぜかというと大統領候補者を決めるのは8月の末に集まる代議員たちだからです。民主党の場合4,000名の代議員がいます。ですから候補者になるためには半数の2,000票を得なければなりません。それで予備選挙なり、党員集会で代議員を選ぶのです。

ただ4,000人の代議員のうちの796人は特別代議員=スーパーデリゲートなのです。スーパーデリゲートというのは党の有力者で、予備選挙の結果 に関係なく、自分が好きな候補者に自由に投票できます。国会議員、あるいは党に大変貢献した人、例えばトーマス・フォーリー前駐日大使は昔、下院議長だっ たのですが、彼はスーパーデリゲートです。ウォルター・モンデール元駐日大使は民主党の大統領候補者でしたが、彼もスーパーデリゲート。アル・ゴア前大統領候補者や、候補者を諦めたジョン・エドワーズもスーパーデリゲートです。796人中、今のところ400人ぐらいは誰を支持しているか表明しているのですが、そのほかはまだ決めていません。

ですからヒラリーがペンシルベニアで60%の票をとって、次のインディアナでもヒラリーが多くとれば、流れがヒラリーに傾いて、予備選挙が終わった 時点でどちらも2,000票に足りないかもしれません。現在オバマがリードしていますが、ヒラリーは大会でスーパーデリゲートに、「マケインに勝つことが できるのは、黒人ではなくて白人の女性だ」という嫌な感じのメッセージを一所懸命伝えようとしている。

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