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「アメリカ大統領選挙から、アメリカ社会を考える」

更新日 : 2008年05月26日 (月)

第3章 オバマが躍進できたのは、複雑な選挙のおかげ

ジェラルド・カーティスさんのライブラリートーク

ジェラルド・カーティス: このめちゃくちゃな、非合理的な制度を変えるべきだという意見が、今、ほとんど出ていません。みんな大賛成で、私も以前と比べたら今はそれほど反対していません。理由は……どなたか会場の方、分かりますか? 非常に面白い現象なんです。

アメリカの予備選挙というのは、時間ばかり掛かります。1月に始まって、アイオワの党員集会とニューハンプシャーの予備選挙で幕を開け、6月の半ばか終わりごろまで続きます。民主党はサウスダコタ州が最後の予備選挙ですが、選挙の準備は1年以上前からやっていますし、特に予備選挙の半年間はものすごくお金を使います。エネルギー、体力も使います。オバマもヒラリーも毎晩ぜいぜい3時間か4時間ぐらいしか、おそらく寝ていません。

「アメリカのシステムでは長すぎる」という意見が強かったから今年はだいぶ早くやる州がありました。2月の最初の火曜日、スーパー・チューズデーには、4年前は7つの州で予備選挙をやったのですが、今年は23の州がやりました。

ヒラリーの戦略は、「アイオワで始まる予備選挙を一所懸命やって、スーパー・チューズデーで終えよう。スーパー・チューズデーで代議員数を大きく リードすれば決まりだ。だからお金を早く、全部使ってやろう」ということだったのですが、スーパー・チューズデーで勝てなかったから、戦略が狂ってしまい ました。スーパー・チューズデーの後、ヒラリーは自分の銀行口座から500万ドルを出して、自分のキャンペーンに投入しました。スタッフも1カ月無給で働くことになって、必死でまたお金集めをしたのです。

「今の制度の方がいい」という人たちは、全部の州で早く選挙をやったならば、間違いなくヒラリーが候補者になっただろう、長い期間にわたってやるか らこそ、オバマというそれほど知名度の高くない人が、どんなに素晴らしいかということを知るチャンスがあった、というのです。逆にヒラリーのあの性格が、 どんなに嫌らしいかということを知ることができた、ともいえます。時間がたつにつれてオバマの支持が上がって、オバマブームが生まれて、ヒラリーへの批判が強くなったから、「やはり時間を掛けてやることがいいんだ」という意見が、今、圧倒的に多くなっているのです。

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