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三谷宏治が語る、経営戦略の100年

経営の本質はつながりとストーリーから見えてくる

経営戦略ビジネススキルその他
更新日 : 2013年09月09日 (月)

第8章 イノベーションを阻む大きな壁

 講師:三谷宏治(K.I.T.虎ノ門大学院 教授 早稲田大学ビジネススクール・グロービス経営大学院 客員教授)

 
PLC戦略の完成

三谷宏治: イノベーションを、古いプロダクト・ライフ・サイクル(PLC)から、新しいプロダクト・ライフ・サイクルへの非連続的な切り替わり、と表現した(「2重のS字曲線」)のはマッキンゼーのリチャード・フォスターでした。では、PLCとはそもそも何で、そしてそれはなぜ起こるのでしょうか? そう、PLCとは商品・サービスの「黎明期・成長期・成熟期・衰退期という、栄枯盛衰を示す4つのステージ」を指します。いろいろな分野でそれは確かに実証されています。

ではなぜ、そんな栄枯盛衰が起こるのでしょう。「技術革新」ですか? 違います。それは新しい商品・サービスそのものの誕生であって、その後のPLCの原因ではありません。ヒントは「顧客」です。

みなさん、「ユーザーの5分類」というコンセプトは知らずとも、イノベーターやアーリーアダプターといった言葉はご存知でしょう。エヴェリット・ロジャースは1962年に出版した『イノベーションの普及』で、PLCはユーザー(顧客)タイプがイロイロだから起こるのだと示しました。イノベーター(2.5%)、アーリーアダプター(13.5%)、アーリーマジョリティ(34%)、レイトマジョリティ(34%)、ラガード(16%)が、彼が示した「ユーザーの5分類」とその比率です。このようなユーザーの変化の中で市場の発展と衰退、つまりPLCは発生するのです。

最初のPLCコンセプトにユーザーの5分類が加わり、そこにマーケティングの要素を追加して「PLC戦略」を完成させたのが、ピーター・ドイルです。彼は言いました。製品のライフサイクル・ステージが定まれば、企業がすべきことはすべて明らかになると。

PLC戦略が登場した時、学会では「マーケティングは死んだ」と囁かれました。「これは完璧な答えだ。付け加えるものが何もない」「これ以上マーケティング学を追究しても仕方ない」と。しかし、実際はそうならず、マーケティング戦略、経営戦略の研究は終わりませんでした。まだまだ、大きな謎や壁が残されていたのです。

キャズムを越えろ!

三谷宏治: さまざまな理論が登場しても、イノベーションはそう簡単には起こりませんでした。エヴェリット・ロジャースは、2番目のアーリーアダプターまで普及すれば、市場は自然に拡大していくとしています。しかし、ジェフリー・ムーアは、「アーリーアダプターとアーリーマジョリティはまったく違う種類の顧客だ。両者の間には『深く大きな溝』がある」と言いました。それがイノベーションの発展を阻むものとなる「キャズム」です。

アーリーアダプターの特徴は、先進的で新しいものが持つリスクを許容すること。一方のアーリーマジョリティは、リスクを避ける傾向が強い。この違い(キャズム)をいかにして越えるのかが、市場拡大のカギだと言ったのです。キャズムを越えて市場を拡大させていくためには、アーリーマジョリティに特化したマーケティング・アプローチを考えていく必要がある、とムーアは訴えました。

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