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スティーブ・ジョブズを通して学ぶ「感性訴求」

~iPod mini仕掛人、前刀禎明はいかにして世の中を動かしたのか~

経営戦略ビジネススキルキャリア・人
更新日 : 2012年09月04日 (火)

第7章 ロジカルシンキングを超える「感性・アナログ思考」のすすめ

前刀禎明(株式会社リアルディア代表取締役社長/モーションビート株式会社取締役会長)

前刀禎明: ウォルト・ディズニーには「Exceed Expectations」、ゲストの期待を超えるという言葉があります。スティーブ・ジョブズは「Insanely Great」、半端じゃなく、狂ったようにすごいものを出すんだといつも言っていました。

世の中、企業に入ると大抵は、積み上げ思考、ロジカルシンキングを研修などで学ぶと思います。でも今の時代は、そんなことを言っている場合じゃないことが往々にしてあるので、ロジカルシンキングを超えることが重要です。階層的、分析的に何かを導き出す「論理的・デジタル思考」より、創造的な関連性の中から何かを見つけ出していく「感性・アナログ思考」です。

スティーブ・ジョブズはCreative Intelligenceという、5つの力で構成される力が極めて高かった人間です。構成要素の1つ目として必要なのは、何かを徹底的に観察する「観察力」です。次に「もしこれがこうなったらどうなんだろう?」という質問を投げかける「質問力」、そうして考えたことを机上の空論ではなく実際にやってみる「実験力」、ここまできたら自分と価値観やものの見方が違う人とすり合わせる「ネットワーク力」が要ります。そして一番重要なのは、このプロセスで得たものを最終的に「関連づけていく力」です。物事を関連づけていくことで、創造性が生まれるのです。

ですから、とにかく発散思考でいろいろなことに好奇心を持って経験し、たまにギュッと収束させることです。発散と収束。この繰り返しが頭を活性化させるので、新しいアイディアが生まれやすくなります。

1つ例を挙げます。せっけんの価値を「汚れがよく落ちる」という機能だけで考えた場合は、液体せっけんのほうが固形せっけんより優れています。でも違う発想をすれば、これが逆転することもあります。例えばブルーの固形せっけんがお風呂場にポンと置いてあると、リゾートの海を想像させます。視覚的にリラクゼーション効果を生むのです。そういう効果を価値とするならば、必ずしも固形せっけんは液体のものより価値が低いとは言えませんよね。

物事には既存価値がありますが、目に見えない価値、感情で人に何かを想像させる価値も必ずあります。今、世の中に求められているのは、まさにソニーの盛田さんや井深さんが言っていた「心の琴線に触れる」という、人を感動させる価値なのです。

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前刀禎明 (株式会社リアルディア 代表取締役社長)

前刀禎明 (㈱リアルディア 代表取締役社長/ngi group㈱代表執行役会長 兼 取締役)
「企業が本質的な次元で価値を創り、人の心を動かす」にはどうしたらよいのか、そのために必要な「感性訴求」とは何か?Apple日本法人代表取締役として、ジョブズ氏と共に日本のAppleブランドを復活させたご経験を踏まえてお話し頂きます。


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