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時代が求める人間像~知の構造化と課題設定能力~

東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムの挑戦

教養キャリア・人
更新日 : 2011年04月19日 (火)

第4章 中国のセメントプラントを日本製に造り替える=ウィン・ウィン

小宮山宏氏

小宮山宏: 私は問題と答えは一体だと思っています。答えのない問題提起なんかしたってしょうがないでしょう。

今のままでいったら2050年に起こる問題は、「人工物の飽和」「地球温暖化の進行」「資源の欠乏」です。これに対する答え、解決策は「エネルギー効率を3倍にする」「物質循環システムをつくる」「再生エネルギーを2倍にする」です。だから、2050年に日本が達成すべきは、「エネルギー自給率70%」「鉱物資源の自給率70%」「食料自給率70%」なんです。これが私が提唱している「ビジョン2050」です。これは俯瞰的な視野から来るんです。

いつまでも我々が小学校で習ったような「資源輸入国」の形で日本がいけるはずがないんです。それぞれ自給率70%の国に日本がなれば、日本は本当に強い、安定した国になります。そしてこれこそが、21世紀の地球がやらなければいけないことなんです。これが私の言う「課題先進国」という意味です。日本の課題は、やがて世界の課題になります。だからこういう形で自分で答えを出さなければならないし、それが人類を引っ張るモデルになるんです。

では、エネルギー効率をあげる例として、セメントで説明しましょう。セメントは吸熱反応でつくるからエネルギーが必要ですが、日本は1960~90年の30年間でセメントのエネルギー消費を半減させていて、現在は、ほぼ理論値の限界である1.6倍になっています。これに対してアメリカは日本の1.6倍(※日本を1とした場合の1.6倍)、中国は1.7倍(※同)です。今、世界のセメントの半分は中国がつくっているのですが、人類のために成すべきことは、中国のプラントを全部壊して、日本のプラントに造り替えることです。これがすべての人にとってウィン・ウィンになるんです。

なぜかというと、日本のセメント会社がエネルギー効率を高めてきた理由を考えればわかります。企業が負担を覚悟して地球のためにやったんじゃないからね。儲かるからやったんです。要するに、エネルギー効率を高めるための初期投資が回収できるから投資してきたんです。

同じことを今、中国でやれば、全員得になるでしょ。5~15年ぐらいで回収できるところに人類が投資するようになれば、ほとんどのCO2問題は世界で解決できますよ。あとは融資の問題だけです。世界銀行がやるのか、黒田東彦さんのアジア開発銀行がやるのか、それとも米州開発銀がやるのか。どこがやるのかわからないけれど、そういう投資ができるかどうかです。

こうした大きなビジョン、これが日本として世界に通用する課題設定なんです。「世界に通じるコンセプトで、課題先進国として世界をリードしましょう」というのが、私の申し上げたいことです。

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該当講座

時代が求める人間像

~知の構造化と課題設定能力~

時代が求める人間像
小宮山宏 (東京大学 前総長、総長顧問、EMP チェアマン 株式会社三菱総合研究所 理事長)
山田興一 (東京大学 総長室顧問 EMPコ・チェアマン)
横山禎徳 (東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大 EMP)企画・推進責任者 社会システムデザイン研究所ディレクター・社会システムデ ザイナー)

小宮山宏 (東京大学 前総長、総長顧問、EMPチェアマン 株式会社三菱総合研究所 理事長)
大きな変革期を向えた今、これまでの延長線上に解の得られない時代に求められるリーダー・人間像とは?東京大学前総長であり東大EMPチェアマン小宮山宏氏にお話頂きます。
後半は山田興一氏(東大総長室顧問)、横山禎徳氏(社会システムデザイナー・東大EMP企画推進責任者)による鼎談があります。


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