石倉洋子のグローバル・ゼミ

Major Issues on the Global Agenda

5人のゲスト講師とディスカッションする、5つのトピック

04 : 金融 ~ Creating opportunities through finance

ゲスト講師 世界銀行グループ 国際金融公社(IFC) 加納裕二

※テーマや講師については、一部変更になる場合もございます。

  

2009年1月のダボス会議の主要議題は、深刻化する世界経済危機への対応とその発端となった金融システムの安定化を議論することでした。

デリバティブを駆使した金融商品が大量に組成され、それが世界中の投資家に販売された結果、サブプライムローンの不良債権化を引き金に各国金融機関が経営危機に陥りました。その後、発信源となったアメリカの企業だけでなく、日本を含む世界中の企業が連鎖的に打撃を受けました。

各国政府は緊急対策として自国の銀行・企業などへの資本注入や財政出動による景気刺激策を行っており、回復の兆しも一部では見えてきました。しかし、途上国は政府の財務基盤が脆弱なため、こうした危機的状況に対応する余力の無い国が多いのが現状です。また金融市場の混乱で、新興国・途上国から投資資金を引き上げる動きが出てくるなど、途上国の経済への金融面での影響が深刻化しています。

そこで新興国・開発途上国の経済を支えるため、世界銀行グループを始めとする国際金融機関や先進諸国が協力して金融危機対策を実施しているのです。先進国の経済成長が成熟していく中で、高成長を続けてきた途上国経済の役割が増しています。途上国の支援を行うことは、世界景気の安定のためでもあります。

加納氏が勤務する国際金融公社(International Finance Corporation:IFC)は、開発途上国における民間企業・プロジェクトへの投融資や技術支援を行っている世界銀行グループの一機関。途上国の民間部門への投資を持続可能な形で支援・促進することにより、金融の側面から貧困の削減と生活水準の向上を図るべく活動しています。

IFCの総職員数は3,000名以上、スタッフの国籍は130カ国に渡り、そのうち日本人は約50名というまさにグローバルな職場環境。加納氏はワシントンのIFC本部に勤務し、インベストメントオフィサーとして主にアフリカや南アジアの電力プロジェクトのファイナンスに携わっています。国際派キャリア一筋に見えるかもしれませんが、IFCに転職するまで加納氏のキャリアは日本が中心でした。

富山県に生まれ育ち地元の大学に進学した加納氏は、大学時代に1年間アメリカに留学。帰国後、日本で外国の学生と議論する活動に参加するうちに海外での仕事を志望するようになります。そして、大学卒業後、当時積極的に海外展開を進めていた日本興業銀行(現:みずほ銀行)に入行。

最初の4年間は支店で中堅・中小企業向け融資営業を担当、その後企業派遣生として、新潟の国際大学大学院で開発学を学びます。修士取得後は本人の強い希望がかなってプロジェクトファイナンス部に配属となりました。プロジェクトファイナンス部では、希望した発展途上国の大型プロジェクトのファイナンスを担当して充実していましたが、海外支店帰りの優秀な上司や先輩達に刺激され、次第に海外勤務を希望するようになります。その後、加納氏にとって初の海外勤務となるニューヨーク支店への転勤が決まります。

みずほ銀行プロジェクトファイナンス部での経験が現在のIFCの業務に100%活きているという彼は、まさに自分自身の道を切り開いて現在のポジションについています。

加納氏には、途上国を取り巻く経済・金融事情や課題だけでなく、日本から出て海外のグローバルな環境で働くことについて伺います。また、加納氏が現在取り組んでいる途上国におけるインフラの状況やそれに関連するファイナンスの課題についてもお話しいただき、受講生の皆さんに問題提起します。

Message from the guest speaker


 
今回の世界経済危機の影響で、2009年末までに全世界で最大5900万人が失業し、サブサハラ・アフリカでは新たに3万人から5万人の乳児が死亡すると世界銀行は推定しています。

また、2010年末までに全世界で新たに9000万人が最貧困状態(1日1.25ドル以下の生活)に陥ると推定しています。世界銀行グループでは、当面の緊急対応にとどまらず発展途上国の深刻な貧困問題を解決するために、幅広い分野で様々な取り組みを行っています。ゼミナールでは、開発金融の現状及び私が現在取り組んでいる民間セクターへのファイナンスを通した貧困削減というテーマを中心にお話しする予定です。

また、世界銀行/IFCの企業文化、日本の企業文化との共通点・相違点、多国籍の環境でプロジェクトを「実現」するために必要なスキル、仕事上の喜び・苦労、途上国の貧困削減のために日本人・日本企業ができること等々、日頃私が思っていることもお話しできればと思います。

皆さんと共に世界の一員として、この問題の解決への糸口を探求するきっかけづくりができればと願います。


グローバル・アジェンダ・ゼミナール

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