記事・レポート

LIVING WITH BOOKS

更新日 : 2020年12月15日 (火)

第5章 世間にまつわるブックトーク

 
世間の話題で書物がたり・・・
澁川雅俊:いま‘1番’の世間的話題がテーマになっている本は、当然のことながらその時期にたくさん出されている。したがってライブラリーの新刊書棚にも少なからず並ぶことになり、しばしばトークに取り上げられる。事実過去49回のうち12回もあった。
♯不景気の閉塞感に対応する
「のんびりいこうよ!〜あなたはのんびり派、それともモーレツ派?」は、リーマン・ショック以降低迷する経済状況の閉塞感をなんとか打破しようとするものの見方考え方を提言する本を集めてみた。とりわけ二人の女性評論家、モーレツ派勝間和代とのんびり派の香山リカが人の生きかたにまで範囲を広げて、興味深い論争を展開している。
♯ロボットへの憧れ
ロボットのトークのうち「ロボットは人間になれるのか?」は、ROBOTの名称から説き起こしている。すなわちチェコの作家K・チャペックが100年前に書いた戯曲(『ロボット(R.U.R.)』)で、原語は宗教的に「隷属」の意味を持つチェコ語の‘robota’であった。この人間に近い形体でそれと同じ機能をもつ機械を指すが、それは古来、人に尽くす補助的な道具としてその制作が真剣に検討されたり、憧れを募らせたり、あるいは妄想されたりしてきた存在であったようだ。
もうひとつのロボットトーク「‘AI’=ROBOT ? 〜世を席巻するAIを読む?」は、人工知能を指すAIが、‘シンギュラリティ’(技術的特異点)と一緒に大流行した2016、17年頃のAI本を紹介している。
♯B級グルメ
和食文化が世界無形文化遺産に登録を記念したトーク「ライスカレーは、和食!?」(オピニオン・アーカイブに非掲載)の時期より少し前から全国うまいものグランプリなる‘B級グルメ’大会が開催されて世間に取り沙汰された。
旨い、美味しい!?」は、上品で精錬された、見た目の料理ではなく、舌が「旨い、美味しい」と感じる食べ物の実体を探し求めている。
♯「その言い方が気に入らん」
しばしば人のお喋りやテレビでの語りに違和感を覚え、「う〜ん? その言い方が気に入らん」と不満声を吐くことがある。私ならこう言うのだが、この人、あるいはこの人たちはまったく違うことばを発するのは、気持ちの悪いものだ。私が一番気になっているのは、「若いんだからさ、もっとたくさん食べてよ」の声掛けに「はい、旨いんで‘ガッツリ’頂きます」と応えられた時である。まさに「‘ガッツリ’にガックリ」。清少納言の愚痴「なに事を言ひても、‘そのことさせんとす’、‘いはんとす’、‘なにせんとす’といふと字を失ひて、ただ‘いはむずる’、‘里へいでんずる’など言へば、やがていとわろし」(枕草子)を思い出す。ともかく日本語の乱れがとりわけ問題になっていた時期なので、そのテーマでトークをした。
♯電子書籍ブーム
1990年代の後半からぼちぼち話題に上がっていた電子書籍が2010年に出版界で最高に盛り上がった。オピニオン・アーカイブに非掲載だったトーク「あなたは紙面で読みますか、それとも液晶画面で、ですか?」(#20 2011.3.2)の問いかけは毎日新聞社読書世論調査でもなされ、それに対する一般読者の反応が明らかにされた。調査結果ではまだまだ多くの人(100人中86人)がそれに触れることもなく、読んだこともない、とのことであった。したがってこのブームは紙の本による読書経験しかなく、それゆえに紙面への強い愛着の下では、むしろそれは戸惑いをもって迎えられた。
しかし一方でメディアなどでは、2009年秋のキンドル発売以来、本の世界がひっくり返るかの如き扱いが続いていた。翌年の東京国際ブックフェアなどでは「電子書籍元年」の標語が会場のここそこに掲げられ、本の世界、とりわけ本のビジネスの未来を展望しようとする意欲に充ち満ちていたので、少々気分を害したことを覚えている。本当のところはどうなんだろうと考え、トークに取り上げた。
♯「求むリーダー」
「われわれのために指導者を求めること、それはわれわれにとって、われわれ自身を探求することだ」(著作集『手帖』)とは『星の王子さま』を書いたサン=テグジュペリが残したことばである。それは第二次世界大戦が始まったころのことである。我が国でも東日本大震災以降の大混乱の中で連日のように<リーダーシップ>のあり方が糾弾され、優れた<リーダー>の出現が期待されていた。2012年バブル崩壊後不景気が続く時期にも産業界で「求むリーダー」の気運が盛り上がった。
「リーダー」とは、辞典では、団体、社会、国家などの組織を指導する立場にある人と定義しているが、そのことばがあちこちであまりにも安易に使われ、リーダーとリーダーシップの本質、あるいは実体を見失っている。一体リーダーとはなんなのか。そこでトーク「WANTED! 求むリーダー」を行った。
♯都鄙〔とひ〕の間に何がある?
過疎が進行し、廃村の危機が時の話題になった。一方では東京一極集中が何かと問題とされている。過疎や廃村は、いまや田舎の問題である。その田舎を、気取って「鄙〔ひな〕」と書き表し、その対語を「都(みやこ)」と結合させて「都鄙〔とひ〕」と表現すると、それぞれの差異が一層目立つ。都人は鄙の自然の濃さに癒され、鄙人は都に刺激を求める。しかしいまこれら対語には無いものねだりだけでなく、最近の政策用語〈地域創生〉のように国の全体も暗示することもある。そこでトーク「鄙〔ひな〕〜そは‘たましい’の故里」(オピニオン・アーカイブに非掲載)を行なった。
♯‘草食男子’の対義を探してみた
性的少数者あるいは性的志向が社会的に問題になったのとはべつに、‘草食男子’がいささか侮蔑的に話題になってしばらく経って『男らしさの歴史〈全三巻』なる大部な本が出版され、話題となった。そこで‘男らしさ’とは何かを考えてみるために「DANDYSM~そして、男振り、男前…」トークを催した。
♯縄文人は私たちの祖先?
2018年国立博物館縄文文化展が開催され話題となった。その少しまえから‘縄文’ブームがじわりじわりと広がっていたのだが、その展覧会がブームの頂点となった。そこで人びとの‘ロマン’探しをくすぐるテーマでトーク「時の彼方の空遠く〜縄文人、私たちの祖先」を行った。またこのトークでは、縄文人は1万5千年以上も前から日本列島に定住していたとのことなので、その祖先探しも合わせて試みた。
♯街の書店が消えている
街角の書店にふらりと立ち寄り、目についた本を手に取り、ページをめくる。それだけで、私たちは新しい世界への扉を開くことができる。しかしいま、本との出合いの場である書店が全国の街から消えつつある。 社会が目まぐるしく変わる中で、書店もまた変化を求められているのか。そこで改めてその存在意義や未来を読み解くべく、トーク「頑張れ!本屋さん~最近、街の書店が消えている」を行った。