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旨い、美味しい !?

読みたい本が見つかる、「カフェブレイク・ブックトーク」

更新日 : 2010年09月08日 (水)

第1章 「旨い、美味しい」ものを食べたい

食欲の秋だけでなく、朝昼晩いつも「美味しいものを食べたい!」と思っている私たち。今回はそれを切り口に新刊書の世界を巡ります。あつあつ、ほくほくといった旨さを表す言葉を紹介する本や、朝食にスナック菓子など驚きの食生活を調査した本、想像が膨らむグルメ小説ど。“旨い、美味しい!?”食の深さを味わえます。

講師:澁川 雅俊(アカデミーヒルズフェロー/前慶應義塾大学環境情報学部教授)

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澁川雅俊: 人がなぜ本を読むか、また読まなければならないのかを説明するときに、私はしばしば、マタイ伝この箴言、「人は麺麭のみに生くるに非ず、神の口より出ずる言の葉にもよるべし」(新約聖書マタイ伝)を、引き合いに出します。「神の口より出ずる言の葉」は、紙の上に書かれ、あるいは刷られて『聖書』となり、世界最長のロングセラーで、最大のベストセラーとなりました。それは書物であり、私たちが生きていく上で不可欠な糧を運載します。この箴言は知識の重要性を暗示するため麺麭と比較しますが、「腹が減っては……」のようにそれに喩えられている食料が最も大事であるのは言うまでもありません。

パンの本はたくさんありますが、『パンをめぐる旅』(S・セリグソン著、市川恵里訳、04年河出書房新社)がありました。これは、欧米はもとより世界のパンを味わい、かつレシピを求めてアフリカを旅する本です。日本のパンのことは触れられていませんが、それは翻訳だからではなく、もともとわが国のパンは欧米から入ってきたからです。

ところで<衣・食・住>という熟語がありますが、私たちは生涯に何回食事を取るのでしょうか? いま日本人の平均寿命は最新のデータで、男性79才・女性86才だそうですから、男性はおよそ86,600回、女性は94,200くらい食べることになります。そこで重要なことは、私たちはみな、朝昼晩とも、ただお腹を満たすだけでなく、「旨いもの・美味しいもの」を食べたいという願望をもっていることです。今回はそこを切り口として、新刊書の世界を駆け巡ってみることにしました。

「旨い・美味しい」を表すことば

ある食品学研究者は、旨い・美味しい(以下「旨い」)と人が感じたときの感覚、つまり食感とその時の食べ物がどのように仕上がっているかの関係を分析するために、ものを食べた後に人びとがどんなことばを発するか調べました。その結果『食語のひととき』(早川文代著、04年毎日新聞社)となりましたが、それには、「おいしい」(「おいしくない」または「まずい」を含めて)には日本語では120もの言い方がある、と書かれています。

どんな表現があるかというと、「こりこり」、「ぷりぷり」、「しゃきしゃき」、「まったり」、「ほくほく」、「あつあつ」等などで、ほぼすべてが擬音語か擬声語です。それらのことばは、「旬のタケノコを家で茹でて食べると<こりこり>して旨いね。しかも水煮のやつとは違って、特有の香りと、このなんというか<えぐ>味がなんとも……」というように、旨さに深みを、あるいは幅をもたせ、いきいきと表現するときに使われるようです。簡単に言うと、それらはみな旨さを形容する、あるいは旨いの形容動詞にあたります。ということは、つまり食べものの旨さは、本質的には「旨いねぇ」とか「美味しいねぇ~」とか表現する以外にないもので、TVで芸人たちが無理矢理発する駄洒落まがいの表現は、噴飯ものという以外の何ものでもありません。

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