記事・レポート
‘AI’=ROBOT?
世を席巻するAIを読む
更新日 : 2017年07月12日
(水)
第1章 想像できることは、必ず実現できる
いま、人工知能(AI)が持てはやされています。AIをキーワードに据えた本は1,000点を超えており、書名に含まないにしろ、これに言及しているものまで含めれば、相当数にのぼることでしょう。六本木ライブラリーの選書のモットーは、今日的なイシューを取り上げた高質な本を、会員の皆さんに提供すること。そこで今回のブックトークでは、六本木ライブラリーが架蔵する、ここ1、2年に出版された「AIにまつわる本」を中心にご紹介します。
<講師> 澁川雅俊(ライブラリー・フェロー)
※本文は、六本木ライブラリーのメンバーイベント『アペリティフ・ブックトーク 第41回‘AI=ROBOT?』(2017年3月24日開催)のスピーチ原稿をもとに再構成しています。
AIと言えば、ロボット?
澁川雅俊: 人工知能(AI/artificial intelligence)は、1950年代後半〜1960年代、1980年代、そして現在と、直近60年間で3回目のブームを迎えています。技術的進展につれて、スマホの音声対話や、お掃除ロボットのルンバなど、その成果が仕事や家庭で活用され、意識すると否とにかかわらず、私たちはその恩恵を享受しています。そうした中で、今回の標題「AI=ROBOT?」はいささか見当はずれかもしれませんが、‘ふつう’の人たちが真っ先に思い浮かべる問いでもあるはずです。
辞書によれば、ロボット(robot)は「人間の代わりにさまざまな作業を自律的に行う装置、もしくは機械」とあります。これはチェコの小説家カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲『R.U.R.』(邦訳:岩波文庫『ロボット』)が初出と言われ、チェコ語で強制労働をしいられる「賦役」を意味しているようです。当時のイメージは金属製の人型ロボットでしたが、いまは化学的合成物質で作った躯(からだ)と、人間のような外見を持つバイオノイドがSF作品に現れています。人のように自律的に行動する創造物への憧れは、古来より私たちの内に連綿と繋がってきたものと言えるでしょう。
『ロデリック』〔J・スラデック/河出書房新社〕は、超高性能AIを搭載するロボットの名前です。国家プロジェクトとして某大学で秘密裏に開発が進められていたものの、資金援助の打ち切りによって捨てられてしまった彼は、その後、自分を「人間そのものだ」と思い込み、さまざまなことを学習し成長していきますが、その先には実に過酷な運命が待ち受けています。
作家は人間のロボット好きを暗に批判していますが、その語り口はラップ調の‘ロボット狂想曲’とでも評すべきもので、ストーリーに追いつくのが容易ではありません。なお、訳者(柳下毅一郎)は人間=ロボット関係の優れた略歴史を末尾に収めています。
辞書によれば、ロボット(robot)は「人間の代わりにさまざまな作業を自律的に行う装置、もしくは機械」とあります。これはチェコの小説家カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲『R.U.R.』(邦訳:岩波文庫『ロボット』)が初出と言われ、チェコ語で強制労働をしいられる「賦役」を意味しているようです。当時のイメージは金属製の人型ロボットでしたが、いまは化学的合成物質で作った躯(からだ)と、人間のような外見を持つバイオノイドがSF作品に現れています。人のように自律的に行動する創造物への憧れは、古来より私たちの内に連綿と繋がってきたものと言えるでしょう。
『ロデリック』〔J・スラデック/河出書房新社〕は、超高性能AIを搭載するロボットの名前です。国家プロジェクトとして某大学で秘密裏に開発が進められていたものの、資金援助の打ち切りによって捨てられてしまった彼は、その後、自分を「人間そのものだ」と思い込み、さまざまなことを学習し成長していきますが、その先には実に過酷な運命が待ち受けています。
作家は人間のロボット好きを暗に批判していますが、その語り口はラップ調の‘ロボット狂想曲’とでも評すべきもので、ストーリーに追いつくのが容易ではありません。なお、訳者(柳下毅一郎)は人間=ロボット関係の優れた略歴史を末尾に収めています。
ピグマリオンからPepperまで
澁川雅俊: 『虹を待つ彼女』〔逸木裕/KADOKAWA〕は、英国映画『エクス・マキナ』(2016年日本公開)と同じく女性型アンドロイド(ガイノイド)の物語で、自ら命を絶った美貌のゲームクリエイターをAIによって蘇生させるプロジェクトに参加した、ある研究者を巡るサスペンスです。ギリシア神話に登場する「ピグマリオン」に着想を得た19世紀の名作SF小説『未来のイヴ』〔ヴィリエ・ド・リラダン〕を追想させる作品です。
基となった神話は、現実の女性に失望した彫刻家ピグマリオンが自ら理想の女性ガラテアを彫り、その彫像に恋い焦がれ、次第に衰弱していきます。その姿を見かねた愛の女神アフロディーテは、彫像に生命を与え、かくして彼は人間となった彫像をめでたく(?)妻に迎える、という物語です。
他方で『未来のイヴ』は、ある青年貴族が輝くばかりに美しく、ヴィナスの肉体を持つ女性に夢中になるも、彼女の心はあまりに下劣でした。彼は苦悩し、絶望の果てに自らを滅せんと覚悟しますが、そこでひと肌脱いだ科学者が、彼女に似せた容姿端麗な人造人間を創造し、青年は創り出された美女と結婚する、というものです。
アンドロイドと言えば、『アンドロイドは人間になれるか』〔石黒浩/文藝春秋〕があります。世界的なロボット工学者である著者は、容姿を自身に似せたアンドロイド(ジェミノイド)、マツコ・デラックスに似せたアンドロイドを制作しています。
ソフトバンクが2015年2月に発売したPepperは、感情を認識する人型ロボットです。副題に「パーソナルロボットが変える社会とビジネス」を掲げる『Pepperの衝撃!』〔神崎洋治/日経BP社〕は、その誕生から発売までの経過を明らかにするとともに、近年のロボット産業の変遷(ASIMO、AIBO、Wakamaru、パロ、パペロなど)とその展望を描いています。
たしかに、それらはまだ人間と同等、あるいは、人間を超える知能を備えた存在ではありません。しかし過日、あるCMで流れたように「想像できることは、必ず実現できる」のかもしれません。レオナルド・ダ・ヴィンチの飛行機をはじめ、ジュール・ヴェルヌが想起した原子力潜水艦や月世界旅行が現実のものとなった現在、人間を超える知能を備えたロボットがこの世に出現しないとは、言い切れないでしょう。
基となった神話は、現実の女性に失望した彫刻家ピグマリオンが自ら理想の女性ガラテアを彫り、その彫像に恋い焦がれ、次第に衰弱していきます。その姿を見かねた愛の女神アフロディーテは、彫像に生命を与え、かくして彼は人間となった彫像をめでたく(?)妻に迎える、という物語です。
他方で『未来のイヴ』は、ある青年貴族が輝くばかりに美しく、ヴィナスの肉体を持つ女性に夢中になるも、彼女の心はあまりに下劣でした。彼は苦悩し、絶望の果てに自らを滅せんと覚悟しますが、そこでひと肌脱いだ科学者が、彼女に似せた容姿端麗な人造人間を創造し、青年は創り出された美女と結婚する、というものです。
アンドロイドと言えば、『アンドロイドは人間になれるか』〔石黒浩/文藝春秋〕があります。世界的なロボット工学者である著者は、容姿を自身に似せたアンドロイド(ジェミノイド)、マツコ・デラックスに似せたアンドロイドを制作しています。
ソフトバンクが2015年2月に発売したPepperは、感情を認識する人型ロボットです。副題に「パーソナルロボットが変える社会とビジネス」を掲げる『Pepperの衝撃!』〔神崎洋治/日経BP社〕は、その誕生から発売までの経過を明らかにするとともに、近年のロボット産業の変遷(ASIMO、AIBO、Wakamaru、パロ、パペロなど)とその展望を描いています。
たしかに、それらはまだ人間と同等、あるいは、人間を超える知能を備えた存在ではありません。しかし過日、あるCMで流れたように「想像できることは、必ず実現できる」のかもしれません。レオナルド・ダ・ヴィンチの飛行機をはじめ、ジュール・ヴェルヌが想起した原子力潜水艦や月世界旅行が現実のものとなった現在、人間を超える知能を備えたロボットがこの世に出現しないとは、言い切れないでしょう。
該当講座
アペリティフ・ブックトーク 第41回 ‘AI’=ROBOT?
今回は、人工知能(AI)にまつわる本がテーマのブックトーク。
ライブラリーフェロー・澁川雅俊が、さまざまな本を取り上げ、「今までの」そして「これからの」AIを読み解きます。
‘AI’=ROBOT? インデックス
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第1章 想像できることは、必ず実現できる
2017年07月12日 (水)
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第2章 そもそも、AIとは何ですか?
2017年07月12日 (水)
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第3章 人間の脳とディープラーニング
2017年07月14日 (金)
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第4章 ‘シンギュラリティ’と2045年問題
2017年07月14日 (金)
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第5章 ‘AI’を哲学する
2017年07月18日 (火)
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第6章 AIとビジネス
2017年07月18日 (火)
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