記事・レポート

ハフィントンポストは日本で新たな言論コミュニティを形成できるか?

松浦編集長が語る、ネットメディアの課題と未来

経営戦略政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2014年03月18日 (火)

第7章 ニュースサイト上の議論から、世の中は良い方向へ変わる?

田端信太郎(LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)

 
「空間編集」の必要性

田端信太郎: そもそも、なぜコメント欄が大切なのでしょうか? 署名記事を書く人は明らかに大きなリスクを前提として、問題提起しています。一方でコメントをつける人は、悪く言えば、安全地帯にいながら、ワアワア騒いでいるだけとも言えます。たとえば、罵詈雑言のようなコメントをつけたとしても、その人自身が批判されるリスクは、記事を書いた人に比べれば、かなり小さいでしょう。したがって、コメント欄で発言している時点で、何かが違うように思うのです。「コメントを書くエネルギーがあるのなら、署名記事として投稿しろ!」と思ってしまうのですが。

松浦茂樹: そうした部分はあると思います。

田端信太郎: コメント欄の中で延々議論している人は、かなりのパワーを使っています。当事者を含めて2、3人であっても、公開の場でのケンカのようになっている。しかし、記事に比べればリスクは高くないため、非生産的なケンカであるような気もします。コメント欄での議論を通じて、世の中は本当に良い方向に変わるのでしょうか?

松浦茂樹: それは、私たちの根本にも関わる部分ですから、変わると言い切ります。変わるように頑張ります。コメント欄に関しては、メディアのプラットホームという立ち位置、コミュニティのプラットホームという立ち位置があると思います。私としては、ハフポストのコメント欄はコミュニティの方向、色合いが強いと考えています。コミュニティのプラットホームに蓄積された多数のコメントから論点を抽出し、再構築してコメント欄を形成する。メディアの視点ではなく、コミュニティの視点に立った言論空間づくりです。

田端信太郎: コミュニティとは、そこに所属していることが目的です。穏やかなコメントのやりとりを通じて、関係者同士が連帯感や一体感を覚えることができれば、コミュニティとして成立する。ただし、それは居心地の良さを求める参加者にとってのコミュニティです。一方で、居心地が良いコミュニティの議論から世の中が変わるか? といえば、変わらない気がします。多様な言論コミュニティを形成すると言いながらも、社会を変えるという目的のために、相応しくない人は追い出す必要も出てくると?
松浦茂樹(ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)

松浦茂樹: ハフポストのコメント欄は、ディベートの場です。現実の世界でも、複数人でディベートを行う際、場に相応しくない発言、議論を妨害する発言をする人がいれば、途中で退場してもらいます。同様のことは、ネット上でもあってしかるべきだと思います。最終的に前向きかつ建設的な議論を成立させるために、やはり「空間編集」は必要です。穏やかな議論の場、きつめの議論の場をつくることまで含めて、「空間編集」だと考えています。現在の日本版のコメント欄は、米国版と比べてもきつめです。

田端信太郎: コメント欄への掲載ハードルが高い、と。

松浦茂樹: 高いです。現在は基準を示すという意味で、あえてきつめに設定しています。

田端信太郎: そうだとすると、もはやコミュニティではないような気もしますが。

松浦茂樹: CGM(Consumer Generated Media/※編注)は、はじめにコアユーザーのコミュニティがあり、徐々に広がっていくという流れが一般的です。ハフポストも現在、コアユーザーのコミュニティが固まりつつあり、今後はその周辺にクラスタができあがっていくと考えています。

※編注
CGM
ブログやSNS、口コミサイトなど、インターネットなどを活用して消費者(ユーザー)が情報発信を行い、内容を生成していくメディアの総称。消費者発信型メディア、消費者生成メディアとも。

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日本版ローンチから2ヶ月を経たからこそ見えてきた、現状、課題、今後の仕掛けなど松浦氏に伺います。また、ネットメディアのプロフェッショナルお二人ならではの視点で展開される対談を通じて、企業にとってのコミュニケーションツールとしての可能性や、ネットメディア全体の未来について考えます。


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