記事・レポート

ハフィントンポストは日本で新たな言論コミュニティを形成できるか?

松浦編集長が語る、ネットメディアの課題と未来

経営戦略政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2014年03月11日 (火)

第3章 記事から生まれるコミュニケーション

松浦茂樹(ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)

 
エンゲージメントを大切に

松浦茂樹: ハフポストは「コメントをしてもらってナンボ」のメディアだと考えています。ユーザーの興味関心を喚起し、積極的な関わり合いを持っていただけるよう、私たちは「エンゲージメント」(※編注)を大切にした運営を行っています。

私たちは、どれほど閲覧数が多くても、コメントがつかない記事は“失敗”だと受け止めています。数多くのコメントが寄せられた記事は、その後も長く読んでもらえるようになり、さらなる議論の発展につながります。また、自分のコメントに別のユーザーのコメントがつけば、メールでアラートが飛び、そこでまた記事を読み返す、といったエンゲージメントの強化がなされます。現在、米国版におけるユーザーのサイト平均滞在時間は29.8分です。他のニュースメディアよりも長い。日本版でも滞在時間は順調に延びています。

エンゲージメントを高める1つのポイントは、参加ブロガーの選び方です。現在、政治家、企業家、ジャーナリスト、大学教員など多岐にわたる分野から約110名に登録いただいています。参加基準は、団塊ジュニアに近しい世代、かつ自分の意見をはっきりと語り、ユーザーとともに議論を深めていける方にお願いしています。ただし、基本的にどなたでも記事を投稿することは可能です。実際に、売り込みにより記事が掲載された方がたくさんいます。今後は、団塊ジュニアはもちろん、幅広い世代から多様な意見を集めていきたいと考えています。

コミュニケーションの一連を可視化する

松浦茂樹: インターネットの最大の魅力は、ユーザーの反応がリアルタイムに可視化されることです。

ハフポストでは、最初に編集者や記者、ブロガーが記事を投稿します。それに対して、ユーザーから続々とコメントが投げかけられる。コメントを編集者や記者が見て、再コメントする。あるいは、ユーザーのコメントを反映した新たな記事を出す。再びそこにユーザーがコメントする。最初の投稿記事を起点として、発信者側と受信者側、もしくはコメント欄を介したユーザー同士のコミュニケーションが生まれ、継続的に回転していく。この一連の流れをすべて可視化している点が、ハフポストの特徴です。

コメント欄は、オープンな議論の場としています。しかし、実際はすべてのコメントが掲載されるわけではありません。私たちが目指すのは、良質な言論空間をつくることです。「空間編集」と呼んでいますが、誹謗中傷にあたるコメントは編集部の判断で削除し、建設的な意見として読めるものを掲載しています。このあたりについては、コメントガイドラインにも明記しています。ちなみに、記事やコメントに関する編集権は、本家の米国版や提携する朝日新聞社とは関わりなく、私たち日本版のスタッフに一任されています。
会場の様子


議論から次のアクションを生み出す

松浦茂樹: 私たちは、議論はあくまでも1つの手段であると考えます。サイト上の議論を発端として、次々と新しいアクションを起こしていくことが目的だからです。たとえば、少子化の記事から発展した形で、ユーザーからコメントを募り、それらをまとめて森雅子少子化担当大臣に届けるといったアクションが起きています。さらに、大臣へのインタビューを行い、記事化することで新たな議論を生み出し、次なるアクションにつなげていく。

たとえば、本日のような講演でも、「楽しかった、面白かった」で終わるのではなく、その場で参加者の意見を集め、それをもとに記事を作成し、次なる議論とアクションにつなげる。このように、議論する場の形成と、その後のアクションを継続的にサポートしていくことが、私たちの役割だと考えています。


※編注
エンゲージメント
つながり、きずな、思い入れ、愛着心などと訳される。企業経営やマーケティングにおいて、企業-従業員、企業-顧客、メディア-ユーザーなどの関係性の深さを示す際に使用される。

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田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)

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日本版ローンチから2ヶ月を経たからこそ見えてきた、現状、課題、今後の仕掛けなど松浦氏に伺います。また、ネットメディアのプロフェッショナルお二人ならではの視点で展開される対談を通じて、企業にとってのコミュニケーションツールとしての可能性や、ネットメディア全体の未来について考えます。


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