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ハフィントンポストは日本で新たな言論コミュニティを形成できるか?

松浦編集長が語る、ネットメディアの課題と未来

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更新日 : 2014年03月25日 (火)

第9章 ネットメディアが抱える現場取材への課題

田端信太郎氏と松浦茂樹氏

 
人の心に響く記事を

田端信太郎: BLOGOSを含めたネット上のニュースメディア全体に言えることで、現場取材の問題があります。どうしても2次情報が中心になりますよね。ハフポストは、直接見たり聞いたりした1次情報ではなく“1.5次情報”と自ら称しています。

松浦茂樹: 全部というわけではありません。1次情報もあります。

田端信太郎: ネットメディアにおける現場取材の考え方には、2種類あると思います。1つは、本当は取材したい、するべきだと考えているものの、コストや人的規模の問題でそれができない。もう1つは、現在は1次情報がすぐ手に入るから、現場取材は必要最小限でいい。ハフポストは、そのどちらにあたりますか?

松浦茂樹: 「現場取材はするべき〜」の前者です。米国版では500人の編集者・記者がおり、1次情報を集めているからこそ、ピューリッツァー賞を受賞することができた。

田端信太郎: なぜ、取材は必要だと思うのですか?

松浦茂樹: オリジナリティが高いからこそ、多くの人の心に響く。真に迫ったレポート記事が必要だと思います。日本版は規模が大きくはないため、できることは限られています。いずれは長期の現場取材に基づく記事なども出していきたいと考えています。

田端信太郎: なぜ、こうした質問をしたのかと言えば、従来は囲み取材や記者会見をしていたような、安倍首相や橋下徹氏は、いまSNSやブログを活用し、一般の人でも1次情報に近いものを受け取れるようになっています。おそらく今後は、権力の監視はジャーナリスト任せではなく、市民1人ひとりでも行えるようになるでしょう。そうした状況にありながら、1次情報を取りに行く必要があるのか。私自身は必要ないと思っていますが、一方では「取材してないヤツはジャーナリストではない。けしからん」という声が根強くあります。
松浦茂樹(ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)

松浦茂樹: 従来のニュースメディアは、基本的には事実を伝えるだけです。ハフポストは、事実に対するユーザーのコメントを集めて争点を探り、議論を促してアクションにつなげていく、という視点の違いがあると思います。

田端信太郎: メディアの役割や捉え方にも2種類あると思います。大衆の欲する情報を大衆の代わりに現場に行って調べ、情報を発信する。反対に、大衆は欲していないけれど、人類の未来を考えた場合に知っておくべき情報を取材し、発信する。ハフポストとしては、後者は少ないのでしょうか?

松浦茂樹: ネットメディアの基本的な特性として、情報の受け手側の視点から出発しなければ、独りよがりのメディアになり、誰にも読まれなくなってしまいます。情報の受け手側のニーズに、ある程度の比重を置くのは当然だと思いますが。

田端信太郎: 私もそう思いますが、その割合が6対4なのか、9対1なのか、はたまた50対1なのか。現在の日本のネットメディアの大半は、大衆が読みたいもの、多くのページビューが稼げそうなものを、ひたすら流し続けています。良い悪いと論じる以前に、それが現実となっている。せっかく、ハフポストが高い志を掲げているのならば、後者の比率が高くなければ、日本に上陸した意味がないと思うのですが。

松浦茂樹: もちろん、そうです。ただし、ネット上のニュースメディアとして後者に取り組むことは大変な困難を伴います。現在は割合としては少ないかもしれませんが、今後は困難も受け入れながら、しっかり取り組んでいきたいと考えていますし、我々のミッションだと感じています。


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松浦茂樹 (ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)
田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)

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