記事・レポート

ハフィントンポストは日本で新たな言論コミュニティを形成できるか?

松浦編集長が語る、ネットメディアの課題と未来

経営戦略政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2014年03月24日 (月)

第8章 ネットとリアル、場のバランス

松浦茂樹(ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)

 
リアルな場の声も大切にする

田端信太郎: ネット上では理路整然とした文章を書くような人でも、現実世界では決してリスクを取らないタイプの人がいます。反対に、ネット上の文字をベースにした議論は苦手でも、現実世界では進んで先頭に立ち、行動するタイプの人もいます。そうしたときに、ネット上だけで議論していて、本当に世の中が変わりますか? 「ネットも1つの手段」ならば良いと思いますが、ネットだけというのはやはり……。

松浦茂樹: その点については私も同感です。本日のように、リアルな議論の場だからこそ生まれてくる声もあり、それも大切にしたい。リアルの場を作らないネットメディアは、ダメだと思います。社会を変えていくには、ネットとリアルの場の両方を備えていることが大切です。

田端信太郎: たとえば、ハフポスト日本版に参加している政治家同士が、ネット上でオープンな議論を交わすことで、政党の垣根を越えた連帯感が生まれ、現実の世界で新党を結成するという可能性も考えられます。むしろ、そうなってほしいと思います。しかし、現在の政治家のネット活用は、まだメガホンで声をあげているレベルです。ネットというパブリックな場で、政治家同士が議論しているケースは、ほとんど見たことがない。非常にもったいないと感じます。
田端信太郎(LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)

政治への影響力は発揮できるか?

田端信太郎: 先の参議院選挙(2013年7月)は、初のネット選挙と言いながら、実際の選挙結果にほとんど影響を与えていません。これはネットメディアに携わる者として、少なからず情けないことだと感じています。2008年の米国大統領選挙は、オバマ対マケインの構図でした。オバマ氏はSNSを活用し、マケイン氏はそうではなかった。この対比から、SNSの政治に対する影響力が明らかにされた部分もあります。

松浦茂樹: 確かにそうですね。参院選では、ネットメディアという意味ではやりきれなかった、ネットの利点を押し出せなかった。どうしても、候補者を平等に取り扱わなければならない、という従来のニュースメディアと同じ意識が働いてしまい、1つの方向性を打ち出すことはできませんでした。

田端信太郎: ネットメディアでさえも、呪縛がある。

松浦茂樹: いずれ、その呪縛を解かなければいけないと思います。

田端信太郎: ハフポストがどの政党・候補者を支持するのかにより、選挙結果が変わる。次回の選挙では、そうした影響力を持つメディアとなっていなければならない。そうでなければ、ネットメディアとして意味をなさない。これは友人としてのエールです。「この人はネットの力で選挙に勝った」。近いうちに、そう語られる候補者が出てきてほしいと思います。


関連書籍


メディアのあり方を変えた 米ハフィントン・ポストの衝撃 (アスキー新書)

牧野洋
アスキー・メディアワークス

MEDIA MAKERS—社会が動く「影響力」の正体

田端信太郎
宣伝会議



該当講座

ハフィントンポストは日本で新しい言論コミュニティを形成できるか?

~話題のニュースサイト日本上陸から2ヶ月、松浦編集長が語る「仕掛け」と「挑戦」~

ハフィントンポストは日本で新しい言論コミュニティを形成できるか?
松浦茂樹 (ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)
田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)

松浦茂樹(ザ・ハフィントン・ポスト日本版 編集長)
田端信太郎(LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)
日本版ローンチから2ヶ月を経たからこそ見えてきた、現状、課題、今後の仕掛けなど松浦氏に伺います。また、ネットメディアのプロフェッショナルお二人ならではの視点で展開される対談を通じて、企業にとってのコミュニケーションツールとしての可能性や、ネットメディア全体の未来について考えます。


オンラインビジネス キャリア・人