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世界初! 人工クモ糸繊維の量産基盤技術確立までの物語

スパイバー・関山和秀:「QMONOS」開発秘話と、クモの糸で変わる未来

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年12月06日 (金)

第7章 ビッグデータからフィードバックする仕組みを構築

関山和秀(スパイバー株式会社 代表取締役社長)

 
競争力の源泉はスピード

関山和秀:  クモ糸を人工合成する研究に関しては、現在も著名な大学や研究機関がグローバルに手を組み、開発を進めています。こうした進め方には利点もありますが、大きな欠点もあります。1つは、フィードバックを行うまでに長い時間がかかってしまうこと。もう1つは、複数のチームで研究を行うため、トラブルシューティングにおける連携が難しいことです。

私たちは、遺伝子配列の情報、培養・精製・紡糸の条件、繊維の物性など、開発の過程で得られる膨大なパラメータをすべてデータベース化し、素早く次の分子デザインにフィードバックできる仕組みを構築しました。技術の大半を独自に開発し、すべての工程を1カ所で完結できる体制を構築したことで、1カ月、早ければ1週間程度で1回のフィードバックを回すことができます。このスピード感が、私たちの競争力の源泉となっています。

また、製造プロセスは、分子デザイン、遺伝子合成、発酵・精製、紡糸など、異なる分野の技術を複合的に組み合わせて行うため、本来は専門の研究チームよる分業となります。しかし、私たちはこれらの技術を横断的に理解しており、ごく少数の人間ですべての工程を担うことができます。したがって、問題が起こったとしても、どこに原因があるのかを素早く見つけ出すことができるのです。

資源に乏しい日本が目指すべき分野

関山和秀:  2013年11月に新プラントが完成すれば、現在の4つ(分子デザイン、遺伝子合成、発酵・精製、紡糸)のフィードバックサイクルに「製品の試作・評価」が加わり、それらが1カ所で完結できるようになります。

実際にどのようなものが作り出せるのか? 大きく分けて、産業の分野と、医療の分野を軸に検討を進めています。守秘義務の関係上、ここでは一般的なお話のみとなりますが、産業分野では輸送機器や電子機器、ほかに建築や衣料の分野での活用が見込まれます。医療においては、たとえば、手術用の縫合糸、人工血管や人工靱帯など再生医療での活用が想定されています。これらを合わせた市場規模は、数千億〜1兆円と試算されています。

日本は資源に乏しい国です。しかし、醤油やお酒、味噌の発酵技術において長い歴史と高い技術を有しています。また、繊維の技術に関しても同様です。炭素繊維を例にとれば、現在、国内メーカー3社で世界シェアの約7割を占めています。資源はないが、発酵に強く、繊維にも強い。そうした日本の強みを発揮できる分野こそ、今後日本人が目指していくべきものだと考えます。


該当講座

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 

~無限の組合せがものづくりの概念を変える~

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 
関山和秀 (Spiber株式会社 取締役兼代表執行役)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

関山和秀(スパイバー㈱代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
脱石油の超高性能バイオ素材として注目される「クモの糸」。米軍も開発に取り組むも、断念したと言われる、夢の繊維の量産化技術の開発に、世界で初めて成功した、スパイバー株式会社の関山和秀氏をゲストに迎えます。この分野の市場規模は、数千億円~1兆円と推測されます。今、世界をリードする「スパイバー」の最新の開発状況、今後の展開を伺います。


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