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世界初! 人工クモ糸繊維の量産基盤技術確立までの物語

スパイバー・関山和秀:「QMONOS」開発秘話と、クモの糸で変わる未来

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年12月02日 (月)

第4章 そして、ブレークスルーは生まれた

関山和秀(スパイバー株式会社 代表取締役社長)

 
遺伝子配列に着目

関山和秀:  多くの研究結果を分析した上で、私たちはやはり微生物に作らせる方法が最も効率的だと考え、そこから量産化に向けた方法を模索しました。

生産性を向上させるために、従来の研究グループは「どの微生物を使えば、最も効率的か?」「培養(発酵技術)の条件をどう変えれば、クモ糸を大量生産できるのか?」という方向からアプローチしていました。私たちの場合は、それらに加えて、遺伝子の配列に着目したのです。

すべての生物の細胞にはDNAがあり、その中には遺伝子情報、つまりタンパク質の設計図が書き込まれています。私たちは、微生物がクモ糸のタンパク質を作りやすいよう、設計図(アミノ酸配列と遺伝子配列)を最適化することを目指しました。これは、世界のどの研究グループも着目していなかった点です。

まずは仮説を立て、クモ糸の特性を備えた新しい遺伝子をデザインし、人工的に合成して、微生物の中に組み込みます。すると、微生物はクモ糸のタンパク質を作り出す能力を獲得します。次に、微生物を培養装置に入れ、栄養を与えて増殖させ、タンパク質をたくさん作らせます。その後、微生物からタンパク質を分離し、精製した上で溶かし、紡糸する。これが基本的なプロセスとなります。

得られた結果をもとに、最初に立てた仮説を検証します。生産性が上がっていれば、そのデータを次世代の遺伝子デザインに反映し、さらに生産性が向上するような仮説を立て、実験を繰り返していきます。私たちはこうしたフィードバックを何度も繰り返すことで、徐々に生産性を高めていったのです。最初の頃に比べ、現在の生産性は約2,500倍にまで向上しました。そして、人工的に合成した遺伝子の数は300種類を超えています。

タンパク質を自由にデザイン

関山和秀:  もちろん、実現できたのは生産性の向上だけではなく、機能性の向上に関しても同様のフィードバックを繰り返し、メカニズムをつかんでいきました。現在は、タンパク質の特性を自由にデザインできる段階にまで至りつつあります。近い将来、メーカーの方が「強度はこれくらい、伸縮性はこれくらい。こんな機能をもつ繊維がほしい」と要望されたとき、カスタマイズして提供することも可能になります。

詳しくはご説明できませんが、安全性についても、様々な工業分野で利用されている一般的な溶媒に、一定の条件を与えることで、安全かつ低コストにクモ糸のタンパク質を溶解する方法を確立しました。

紡糸技術については、最初は既存の方法を見様見真似することから始まりました。ここにも、従来の化学繊維や絹糸で使われる紡糸技術では乗り越えられない壁があり、クモ糸に特化した独自技術を開発する必要がありました。天然のクモ糸と同程度の特性となるよう、何度も試行錯誤を重ねていた頃、紡糸技術の専門家に私たちのやり方を見ていただきました。すると、非常に驚かれ、お褒めの言葉をいただきました。その後も、色々な方から褒めていただき、自分たちが作り出した方法が正しいものだと確信しました。

生産性、安全性、紡糸技術。これらの課題を乗り越えたことが、クモ糸の人工合成に向けた大きなブレークスルーとなったのです。


該当講座

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 

~無限の組合せがものづくりの概念を変える~

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 
関山和秀 (Spiber株式会社 取締役兼代表執行役)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

関山和秀(スパイバー㈱代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
脱石油の超高性能バイオ素材として注目される「クモの糸」。米軍も開発に取り組むも、断念したと言われる、夢の繊維の量産化技術の開発に、世界で初めて成功した、スパイバー株式会社の関山和秀氏をゲストに迎えます。この分野の市場規模は、数千億円~1兆円と推測されます。今、世界をリードする「スパイバー」の最新の開発状況、今後の展開を伺います。


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