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世界初! 人工クモ糸繊維の量産基盤技術確立までの物語

スパイバー・関山和秀:「QMONOS」開発秘話と、クモの糸で変わる未来

日本元気塾経営戦略キャリア・人
更新日 : 2013年11月28日 (木)

第2章 世界最高のタフネスをもつ天然“クモ糸”とは?

関山和秀(スパイバー株式会社 代表取締役社長)

 
主成分はタンパク質

関山和秀:  地球上には、確認されているだけで約4万種ものクモが生息しており、未発見の種まで含めると、20万種を超えると言われています。2010年にアフリカのマダガスカルで、ダーウィンズ・バーク・スパイダーという新種のクモが発見されました。このクモは、幅25mを超える川を横断する巣を張ります。そのクモが出す糸を調べたところ、世界最高のタフネスをもつことが分かりました。

天然のクモ糸の主成分は、フィブロインと呼ばれるタンパク質です。クモの腹部には、フィブロインを生成する分泌腺が複数あります。ここで異なるフィブロインをブレンドし、常時7種類ほどの異なる特性をもつ糸を出し、用途により使い分けています。一般的なクモの巣には、大きく分けて2種類の糸が使われています。巣を支える縦糸は強度が高く、伸縮性が低い糸。獲物を捕らえるための横糸は、強度は高くない反面、非常に伸縮性の高い糸が使われています。

強さと伸びを両立する仕組み

関山和秀:  タンパク質は、20種類のアミノ酸が数十〜数千個、直鎖状に結合した分子構造をもちます。フィブロインの分子構造は、最終的にアミノ酸の配列で示されます。天然のクモ糸のアミノ酸配列を見ると、柔らかいアミノ酸が不規則に並んだ非結晶領域(ソフトセグメント)と、硬いアミノ酸が規則的に並んだ結晶領域(ハードセグメント)があります。

非結晶領域は伸縮性を、結晶領域は強度を司っていますが、これらが非結晶・結晶・非結晶・結晶……というように交互に並び、分子を形作っています。そして、フィブロイン分子の結晶領域は、近くにあるいくつかの分子の結晶領域とがっちり結合し、非結晶領域は複雑に絡まり合っています。

クモ糸に応力(引っ張る力)がかかると、まずは柔らかい非結晶領域が引き伸ばされます。非結晶領域は伸縮性に富むため、ある程度引き伸ばされても、応力がかからなくなれば再び元に戻ります。非結晶領域が限界まで伸ばされた上で、さらに応力がかかり続けると、結合していた結晶領域が破壊されます。しかし、壊された結晶領域は、近くにある別の結晶領域と瞬時に結合し、再結晶化します。分子レベルでこうしたことが繰り返されるため、応力がかかり続けても、切れずにグイグイと伸びていくことができるのです。

一般的な繊維は、構造の一部に亀裂が入ると、そこから破壊が進み、最終的に切れたり破れたりしてしまいます。いっぽう、天然のクモ糸は、壊れても瞬時に分子構造が再構築され、切れずに伸びていく。こうしたメカニズムにより、非常に高いタフネスを発揮できると考えられています。


該当講座

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 

~無限の組合せがものづくりの概念を変える~

奇跡の新素材「クモの糸」を語る 
関山和秀 (Spiber株式会社 取締役兼代表執行役)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

関山和秀(スパイバー㈱代表取締役社長)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
脱石油の超高性能バイオ素材として注目される「クモの糸」。米軍も開発に取り組むも、断念したと言われる、夢の繊維の量産化技術の開発に、世界で初めて成功した、スパイバー株式会社の関山和秀氏をゲストに迎えます。この分野の市場規模は、数千億円~1兆円と推測されます。今、世界をリードする「スパイバー」の最新の開発状況、今後の展開を伺います。


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