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宮城県の村井嘉浩知事と、竹中平蔵ほか4人の専門家が本音で語る

『日本大災害の教訓』出版記念シンポジウム

東京政治・経済・国際
更新日 : 2012年06月08日 (金)

第4章 福島原発事故をなぜ防げなかったか

吉岡斉
吉岡斉(九州大学教授/副学長)

吉岡斉: 事故調の調査でわかったことは「やるべきことが、全然やられていなかった」ということです。これが福島原発事故の教訓で、「防潮堤の高さが高ければ大丈夫だった」などとういう単純なことでは全くありません。

例えば東京電力は、2008年に津波リスクを再検討して「15mを超える津波が来るかもしれない」と予測していました。しかし「そんなものはアカデミックな議論にすぎない」として、防潮堤の高さを上げるなどの津波対策を取りませんでした。さらに全電源喪失による「過酷事故(シビアアクシデント)は起こり得ない」と、過酷事故そのものを“想定外”にしていたので、「過酷事故が起きたときにどう対応するか」というプランもなかったし、訓練もしていませんでした。

これは指揮系統にも反映していて、「災害時には本店主導で会社全体で対応する」という仕組みではなく、「基本的に現地に任せる」という態勢しかとれませんでした。「現地で処理できる程度の事故しか起きない」と想定していたからです。

東京電力以上にひどいのは、政府です。指揮系統が原子力災害対策特別措置法で定められていた通りには全く動きませんでした。官邸5階に菅総理と関係閣僚、班目春樹原子力安全委員会委員長、平岡保安院次長、東京電力幹部らが集まって事故対応の意思決定をしていたのですが、それが官僚機構の実施部隊とうまくつながっていませんでした。

そのとき関係各省の担当局長らは、官邸地下の危機管理センターに集まっていたのですが、官邸5階との間の効果的なコミュニケーションがとれなかったのです。テレビ会議システムは東電本店と現地との間にしかなく、保安院も受動的な対応に終始するだけでした。

要するに、国家としての危機管理能力がほとんどゼロなんですね。「ないものづくしだった。こんなにないなら、深刻な事態が起こったら、ひどいことになって当然」ということが、事故調の調査でわかったわけです。

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関連書籍

『日本大災害の教訓—複合危機とリスク管理』

竹中平蔵, 船橋洋一【編著】
東洋経済新報社


該当講座

『日本大災害の教訓~複合危機とリスク管理~』
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)
船橋洋一 (公益財団法人国際文化会館 グローバル・カウンシル チェアマン)
市川宏雄 (明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授 )
西川智 (国土交通省 土地・建設産業局 土地市場課長 / 工学博士)
吉岡斉 (九州大学 教授 / 副学長)
村井嘉浩 (宮城県知事)

竹中平蔵(慶應義塾大学教授)船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)、市川宏雄(明治大学専門職大学院長)、西川智(国土交通省土地・建設産業局土地市場課長)、吉岡斉(九州大学教授)、村井嘉浩(宮城県知事)東日本大震災の被害詳細、原因、教訓を世界の人々と共有し、後世へ伝えることを目的に、各分野の専門家が執筆した『日本大災害の教訓』出版シンポジウム。


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