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宮城県の村井嘉浩知事と、竹中平蔵ほか4人の専門家が本音で語る

『日本大災害の教訓』出版記念シンポジウム

東京政治・経済・国際
更新日 : 2012年06月05日 (火)

第2章 地震の予測は大きく外れた。しかし無駄ではなかった

西川智
西川智(国土交通省 土地・建設産業局 土地市場課長/工学博士)

西川智: 東日本大震災のような大地震は想定外だったかというと、そうではありません。日本海溝・千島海溝型地震が想定されていました。しかしその想定は、実際の被害者数よりも一桁少なく、津波の高さも半分程度という低いものでした。予想は全く外れてしまったわけですが、「全くの無駄だった」とは私は思っていません。

地震発生時、津波浸水区域には約50万人がいたと推定されています。そのうちの約2万人が逃げ遅れてしまったのですが、これは裏を返せば約48万人は逃げて助かったということです。後に「釜石の奇跡」と呼ばれて有名になりましたが、釜石東中学校の生徒が近くの小学校の生徒を連れて高台に避難したため、全員無事でした。日頃から防災訓練を徹底していたおかげです。岩手県の普代村では、明治三陸地震や昭和三陸地震を教訓に15.5mという堤防をつくっていたために、犠牲者は出ませんでした。

しかし想定していたよりも遙かに強い地震だったため、対策では防ぎ切れなかった事例も多数あります。「津波が来たら、鉄筋コンクリートの3階以上に逃げれば大丈夫」とみんな信じていたのですが、津波は3階を超えた所が多かったし、「万里の長城」と呼ばれた岩手県宮古市の堤防は10mありましたが、これも津波は超えてしまいました。

“津波”に関しては非常に残念な結果でしたが、“地震”による犠牲者は非常に少なかったというのが今回の特徴です。地震については、いろいろな事前準備の効果があったのです。

その1つは、日本が世界で初めて実用化した緊急地震速報です。この技術を応用した早期地震検知システムが新幹線には導入されていて、大きな揺れがくる前に自動で減速・停止するようになっています。地震発生時に2本の東北新幹線が仙台付近を時速270kmで走行していましたが、このシステムのおかげで1人の負傷者も出さずに済みました。都市ガスのマイコンメーターも効果があり、阪神・淡路大震災のときのような大市街地火災は起こりませんでした。

それから、地震防災の要である建物の地震対策も有効でした。阪神・淡路大震災に比べ、住宅の構造被害による犠牲者数は少なくなっています。道路も補強していたため、致命的な損傷はありませんでした。

今回「サプライチェーン(供給連鎖)」という言葉が脚光を浴びましたが、この現象は初めての経験ではありません。2007年の新潟県中越沖地震で、自動車に欠かせないピストンリングという部品を作る工場が被災して、日本全国の主要自動車メーカーの生産ラインがストップしました。これと同じことが今回も起きてしまったのです。ですからこれは、備えることができたはずです。

日本には自然災害に対するノウハウがいろいろあります。防災分野の国際協力は日本の得意分野で、2005年の1月には国連防災世界会議を神戸で開催し、「兵庫行動枠組」という世界の防災行政のデファクトスタンダードをつくっています。3.11の成功と失敗の経験も含めて、災害の教訓を国際的に共有することで、将来世代の犠牲者を減らすことができると思います。

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関連書籍

『日本大災害の教訓—複合危機とリスク管理』

竹中平蔵, 船橋洋一【編著】
東洋経済新報社


該当講座

『日本大災害の教訓~複合危機とリスク管理~』
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)
船橋洋一 (一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長 慶應義塾大学特別招聘教授)
市川宏雄 (明治大学専門職大学院長 公共政策大学院ガバナンス研究科長・教授 )
西川智 (国土交通省 土地・建設産業局 土地市場課長 / 工学博士)
吉岡斉 (九州大学 教授 / 副学長)
村井嘉浩 (宮城県知事)

竹中平蔵(慶應義塾大学教授)船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)、市川宏雄(明治大学専門職大学院長)、西川智(国土交通省土地・建設産業局土地市場課長)、吉岡斉(九州大学教授)、村井嘉浩(宮城県知事)東日本大震災の被害詳細、原因、教訓を世界の人々と共有し、後世へ伝えることを目的に、各分野の専門家が執筆した『日本大災害の教訓』出版シンポジウム。


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