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ローソン社長新浪剛史氏が描く、イノベーション・フロンティア

日本元気塾プレセミナー

更新日 : 2009年09月25日 (金)

第5章 現場を体感しながら社員と理念を共有する

新浪剛史(右)

新浪剛史: 本当にモラルの高い社会をつくるために、我々自身も何をしたらいいか考えようと、今、理念研修をやっています。「“みんなと暮らすマチ”を幸せにするために何をしたらいいか」というと、最終的にはイノベーションです。ギャップがゆえに、「何かつまらないな、このマチは」と思っている方々がいらっしゃったら、そのギャップをどう埋めるか、それがイノベーションだという考え方を持っています。 

ですから、いっぱい失敗もします。「やってみなければわからない」というなかで、潰れない程度の失敗をやっていこうと思います。

米倉誠一郎: 新浪さんを見ていると本当にうれしくなります。社長が自分の言葉で自分の会社を語れる。当たり前のことですが、最近少なくなっていると感じていました。

さて、「過去の便利」というお話しがありましたが、価値は時代に応じて本当に変わりますね。価値の軸が違うと、全く違うビジネスが出てくるのですね。

新浪剛史: おっしゃる通りです。同じことをやろうと思うと、パイオニアにはかないません。ドミナント戦略といって、例えば「東京でドーンと効率よく同じものをいっぱいつくる」というのにはすごい価値があるのですが、後から追いかけてもだめなのです。

私たちは、いわゆる田舎のコンビニで、非効率極まりないものをつくってしまったわけですが、それはそれで温かさがあるのです。だから「マチのほっとステーション」なんです。短期的に利益も出さなきゃいけませんが、やっぱりいいところは残そうと。

米倉誠一郎: 「ローソンストア100」の初期は大赤字だったとおっしゃいましたが、上場企業ですから株主がいて、株主総会が開かれるし、社外取締役もいますよね。そのなかで赤字が積み上がっていくわけですから、大変ですね。耐えるコツは何ですか。

新浪剛史: やはり、少しずつでも変化があったことです。あとは、店に足を運ぶと発見があるので、お店に行くことです。お店を見て回ると、「これはやらなきゃ。やれるな」と思いました。

米倉誠一郎: なるほど、「歩く経営者」は大事ですね。会議のやり方については、ITに相当投資したようですが、支社長会議などはやらないのですか。

新浪剛史: テレビ会議でやるんです。実は自分自身が一番つらいのは移動の疲労で、休みなく走り回っていると、しゃべるよりも移動の疲れがあるんです。自分の経験から「移動の疲れは社員にとって苦だろうな」と思ったので、110の地方オフィスにWeb会議の仕組みを入れ、また、テレビ会議のシステムで本社と7支社とをつなぎました。

自分で現場を体感することは、すごく重要だと思います。そのためには体力が必要です。だから出張しないということを考えたのです。

米倉誠一郎: テレビ会議でも、ちゃんと伝わりますか。

新浪剛史: 伝わります。びっくりしました。今の技術はすごいですよ。ドアップで怒っている顔が出ますから(笑)。目の前で怒って唾を飛ばした方がいいのでしょうが、そこはトレードオフで、やっぱり現場にもっと時間を割く方がいいと思っています。

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