記事・レポート

福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション 講師:前田正子

更新日 : 2009年06月03日 (水)

第9章 本当に必要な公的サービスとは何か

前田正子 財団法人横浜市国際交流協会 理事長

前田正子: 「本当に必要な公的サービスとは何か」ということです。私は「プライオリティをつけるのが大事だ」と申し上げたのですが、例えば、先ほどお話した介護保険会計と同じように税金を投入している国民健康保険もそうです。

企業に勤めている人は雇用主が半分負担してくれているのですが、会社を辞めた人や自営業、フリーターの人、ニートの人は、雇用主負担のない国民健康保険に移らなければいけません。しかし、保険料を払えない人も多く、結局国民健康保険の赤字も増し、そこにまた税金を入れるという悪循環が起こっています。

アメリカの大手自動車メーカーなども、従業員の医療保険や企業年金の負担が重くて企業経営を圧迫しているのはご存じだと思いますが、社会の医療保険や年金制度がどうなっているかは、企業経営も左右するわけです。

年金制度をつくったときは、「老後の問題は、高齢で働けなくなって貧困になることをとどめれば解決される」という考え方で、制度をつくったのです。最初にドイツでできたものですが、実際には平均寿命も短かったですから、高齢者の多くは年金をもらわずに亡くなっていたのです。ですが、万が一の長寿のリスクに備えて年金制度が導入されたわけです。

次に出てきたのは医療の必要性です。けがや病気のリスクを賄うために医療保険が出てきます。そして、次に介護の問題がでてきます。一昔前までは、高齢者や病気の家族がいるときの介護は家族で見ます、地域で見ますという時代でした。しかし、今は家族や地域にはそういう力がなく、とても介護できない。それに独身の人や一人っ子の人も増えています。

今企業が直面しているのは、男女かかわらず40代50代の働き盛りが親の介護で介護休暇をとったり、仕事を辞めなければいけない人が増えているということです。会社を辞めた人は地域に戻ってきますので、横浜でもそういう事例がみられるようになっていると、保健士さんたちが報告しています。50代の男性が親の介護で仕事を辞めなければいけなくなって退職した、でも親が亡くなったあと仕事がなくて資産を食い尽くし、生活保護になるという問題が起こっています。

年金制度ができ、医療保険ができ、介護保険が導入されました。しかしそういう制度をつくれば、必ず漏れる人が出てきます。今、そういう制度に当てはまらない新しいニーズが出てきています。児童虐待やニートやフリーターの問題、それから独居高齢者、ニューカマーの在住外国人などです。

結局、いまや既存の制度を維持することもすごく難しくなっているのです。介護保険しかり、国民健康保険しかり、年金制度しかり、そこに多額の税金が投入されているので、児童虐待やニート、フリーターなど制度化されていない新しいニーズに対して新たな予算や人手がいかないんです。しかし、この問題、実は待ったなしです。


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福祉がいまできること
横浜市副市長の経験から
前田正子 (財団法人横浜市国際交流協会 理事長)

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