記事・レポート

福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション 講師:前田正子

更新日 : 2009年03月18日 (水)

第4章 議会と行政と市民の関係の変化 ~ハッピーな時代の終焉~

前田正子 財団法人横浜市国際交流協会 理事長

前田正子: 何もかも無理な時代なのに、どうしてみんなにそれをなかなかわかってもらえないのでしょうか? 今日のレジュメの1つに、「議会と行政と市民の関係の変化 ハッピーな時代の終焉」と書きました。

横浜市の税収のピークは1997年です。それから税収は減りだし、横浜市をはじめ、いろいろな自治体が歳出規模をどんどん縮小しているわけです。しかし、中には厳しい選択を市民に迫ることができなくて——「お願いします、敬老祝金を諦めてください」「敬老パスにお金を払ってください」ということを言えずに事業を継続し、どんどん借金を重ねて、歳出を膨らませている自治体もあります。

言ってみれば、国の予算がそうです。今回の給付金(2008年11月現在)がどうなるかわかりませんが、結局消費税は、いつかは上げなければいけない財政難の状況だとわかっています。けれど、みんな痛みを先送りするという体質が非常にしみついています。

それはなぜかというと、戦後、日本はずっと一貫して拡大成長だったからではないかと思っています。簡単に数字だけ申し上げます。詳しくは私の本『福祉がいまできること—横浜市副市長の経験から』に書いたのでご覧いただきたいのですが、細かい数字が問題ではなく、横浜市を事例に上げて、これまでどういう時代だったかをお話します。

横浜の市長さんですごく有名な、飛鳥田一雄さんという方がいらっしゃいました。のちに社会党の委員長になられた方ですが、この方は東京オリンピックの前年、1963年から1978年まで市長をなさったのです。まさに60年代70年代の日本の高度成長期のときの市長です。

飛鳥田さんが市長をされていた15年間にどれぐらい税収が伸びたかというと、毎年約117億円増えていました。横浜もどんどん人口が増えて、下水道普及率ゼロから、今はほとんど100%ですから、下水道を引き、学校を作られたのです。日本がどんどん豊かになる時代でした。

そのあと、細郷道一さんという方が市長になりました。1978年から90年まで、バブル期をはさんでいます。このときはプラザ合意以降のバブル期がありますので、何とこの12年間は、年に約324億円も税金が増えていたのです。当時のことを聞くと、「使い切れないぐらい予算があって、どんどん新規事業ができた」というのです。

つまり「行政と議会と市民のハッピーな関係」というのは、例えば、「そんなにお金があるのだったら、敬老祝金を出そう」「市民向けの無料コンサートをしよう」「各区に音楽ホールをつくろう」という要望を市民が出すと、それを議員さんが聞いて、「これから横浜も文化的都市になりましょう、そのため音楽ホールを各区につくりましょう。健康増進のために温水プール付きのスポーツ施設をつくりましょう」という提案をする。

行政はお金が十分あるわけですから、「まことにすばらしい提案です。先生、ぜひつくりましょう」と市長が答えるわけです。このようにお金がたくさんあるときは、市民の要望を議員さんが吸い上げ質問をすると、市長さんが前向きに答えることができます。そして現実に何年後かにはコンサートホールができ、温水プールができ、そして市民の皆さんの生活が豊かになっていくというハッピーな循環があったわけです。


該当講座

福祉がいまできること
横浜市副市長の経験から
前田正子 (財団法人横浜市国際交流協会 理事長)

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