記事・レポート

福祉がいまできること~横浜市副市長の経験から

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション 講師:前田正子

更新日 : 2009年03月27日 (金)

第5章 マーケットを拡大する方法は、今後の日本市場では通用しない

ケロッグ大学大学院モーニング・セッション「福祉がいまできること 横浜市副市長の経験から」会場様子

前田正子: そのあと90年から2002年まで、中田さんの前に高秀秀信さんという方が市長になりました。この方はバブル崩壊前夜の90年から始めているわけです。ところが、バブルが崩壊しても国からは「借金してでも、どんどん事業をしろ」という声がありましたし、加えてバブルの高土地価格で路線価が決まり、固定資産税が伸びるというわけで高秀さんの12年間は年に平均約95億円増えています。しかし、細郷さんのときみたいな勢いはありません。

しかし高秀さんが非常に気の毒だったのは、3期12年の間に激変期を迎えているのです。最初の4年間、90年から94年は年に約333億円の伸びでした。だから、どんどん事業もできるだけでなく、民間給与が上がる、それに伴って公務員の給与を人事委員会の勧告に従って上げることもできたし、いろいろな福利厚生制度も充実できたのです。労働組合ともうまくいく、市民サービスもいっぱいできるということで、みんなハッピーな時代だったわけです。94年から98年はプラス79億円。そして、ついに最後の期の98年から2002年には、年にマイナス126億円でした。

ですから、高秀さんが市長として来たとき、前の市長さんの時代に引き続き、最初はものすごく税収の伸びがあって、どんどんみんなのニーズを取り入れてあげますよという行政スタイルで始めたわけです。しかし、最後の4年間は年にマイナス126億円ですから、突然電車の方向を変えて、事業を切らなければならない事態になったのです。自分の政治スタイルを途中で変えることは非常に難しいので、これはなかなか厳しかったと思います。

ですから、市長が替わったということは、時代が次の役割を担う人を選ばざるを得なかったということだと思います。もし高秀さんがやったとしても、最初に年に333億円もあって、いっぱい事業をやった同じ市長さんが、同じ自分の支持者に対して「今度は縮小でどんどん事業を切ります」と言うことは難しいです。それはまた他の人がやるべきだったのだろうと思います。

中田宏さんが2002年から市長ですが、中田市長であれどなたであれ、どなたが市長になったとしても、借金を減らし、いろいろな事業をやめてスリム化しないとやっていけない時代であることは確かです。

中田市長になってからは、市の税収はずっと年にマイナス62億円です。2006年度は定率減税がなくなり、その分、市の税収は増えましたが、交付税という国からの補助金はどんどん切られています。

このようについ7、8年ぐらい前まで、行政はどんどん拡大する、サービスはどんどん拡大する、もらえるものはどんどん増えるという時代でした。そういう経験しか、市民も行政もしていないのです。

これから日本は人口が減っていきますし、若い世代が増えるよりも高齢者が増えます。高齢者も後期になれば、消費行動も縮小します。企業も「マーケットを拡大する」というやり方は日本市場では無理になると思います。どういうふうにソフトランディングするのか……。行政もそういう時代を迎えていて、なかなか難しいのです。

マスコミは子ども関係の記事を見れば、「高齢者には手厚いのに子どもへの配分は少ない」と言います。ところが、高齢者の事業を縮小することになれば、その事業のメリットを受けていた人を見つけ出してインタビューして、「今の行政は厳しい。敬老祝金の5,000円が孫にあげるお年玉になっていた。そういう楽しみを奪うのか」みたいなことをバンバン書くわけです。しかし、誰にも彼にもいい顔をできない時代になってきたということは申し上げたいと思います。


該当講座

福祉がいまできること
横浜市副市長の経験から
前田正子 (財団法人横浜市国際交流協会 理事長)

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