記事・レポート
北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致
更新日 : 2009年03月19日
(木)
第9章 オリンピック開催がもたらす社会的効果と経済的効果

竹田恆和: 今後のスケジュールですが、2009年の2月に立候補ファイルをIOCに提出します。これは本当に莫大なファイルで、詳細な計画が書かれます。この計画で本当に内容が間違いないかということを、3月~5月の間にIOCの評価委員会、エバリュエーションコミッションが各都市を回って確認し、そして再度世論調査してレポートをつくります。
このレポートを各IOC委員に配って6月と10月にプレゼンテーションを行い、最終的にはIOC委員の投票で決定します。この投票は10月2日にコペンハーゲンで行われ、オリンピック開催の7年前に決定するわけです。
IOCの投票というのは、過半数をとるまで行われます。ですから最初の投票でどの都市も過半数に届かない場合には、一番得点の少ない国が落とされます。その票が次にいずれかの国に回ることになりますが、過半数に達する都市が出るまで続けられます。
ですから、昨日の敵が今日の友になってくるわけです。東京なら東京の招致のよさを、みんなに理解してもらうということが非常に重要になってきます。2012年のロンドンを決めたときには、英国はブレア首相、フランスはシラク大統領がプレゼンテーションを行っておりました。2014年の冬季オリンピックを決めるときには、ロシアからプーチン大統領が来てソチの演説をしました。韓国はノムヒョン大統領が演説をしました。これはもう定例になっています。
来年(2009年)の10月2日、日本の首相が誰だかわかりませんが、このように日本の首相が誰かということも非常に重要になってきます(笑)。国を挙げて、これだけ国としてサポートしているという姿勢を見せないことにはオリンピック開催は、まず難しいと思っています。
今回我々が目指すオリンピックの開催意義は、「スポーツを通じて人々に夢と希望を与え」「地域環境を再生するような、新しい都市モデルをつくる」ということです。人を育てて、緑をつくり、そして都市を躍動させるようなオリンピック、こういったものを目指そうということであります。
スポーツ文化が生活に根付いた健康な社会、緑と水に囲まれた美しい都市、次世代交通や最先端セキュリティ、そして低環境負荷の機能的な都市、すべての人に優しい社会、また開かれた平和な社会というものを、オリンピックを開催することでもたらしたいと思います。
期待される経済効果は、インフラ整備を除いた、いわゆる競技施設の建設、大会の運営、チケットの販売、そういった需要の増加が1兆3,000億円と見込まれております。このオリンピックを開催することによって、全国的な生産誘発額はおよそ2兆8,000億、うち都内だけで1兆5,000億円が目安として見積もられております。1984年以降オリンピックは赤字になったことが無く、毎回健全な運営が行われています。
次に計画の内容ですが、競技場は2つのゾーンに分けられます。1つは北側のヘリテッジ(遺産)ゾーン、これは1964年のときに使った競技施設を改善して使う予定です。もう1つは南の東京ベイゾーンと呼んでおりますけれども、主にウォーターフロントに、これから新しくつくる施設を集めます。その真ん中にメインスタジアム、オリンピック村、そしてメディアセンター、こういったものを用意します。
メインスタジアムから半径8kmに1競技を除いてすべての競技場を収めます。射撃場はウォーターフロントにつくる予定でしたが、風の影響その他で難しいという結論で、東京オリンピックでも使った朝霞の自衛隊駐屯地で競技を行う予定です。主要会場は31会場、このうち既存の施設が21会場、新設が10 会場で、うち5会場が仮設という計画です。なるべく既存のものを使い、建設にコストをかけない計画になっています。
招致ロゴのデザインコンセプトは「結び」、デザインモチーフは「水引」です。日本文化における結びというのは、古来から生命を生み出すための新たな魂を表しているということです。スポーツと文化を結ぶ、都市と環境を結ぶ、子どもたちと未来を結ぶ、テクノロジーと心を結ぶ、日本と世界を結ぶ、そして地球と平和を結ぼう、そういった思いを託してつくったロゴです。
現在、招致活動を行っておりますが、スポーツ界、JOC、そして東京都だけで招致は勝てるものではありません。国、企業、あるいはボランティア、地方自治体、国民一人ひとりの皆さん方のご協力があって、国家的プロジェクトは実るものだと思っております。
そういったことで、皆様方にも、ぜひこの東京で開催するオリンピックの意義というものをご理解いただき、その開催の気運の輪を広げるお力添えを戴きたくお願い申し上げます。本日はご清聴ありがとうございました。(終)
このレポートを各IOC委員に配って6月と10月にプレゼンテーションを行い、最終的にはIOC委員の投票で決定します。この投票は10月2日にコペンハーゲンで行われ、オリンピック開催の7年前に決定するわけです。
IOCの投票というのは、過半数をとるまで行われます。ですから最初の投票でどの都市も過半数に届かない場合には、一番得点の少ない国が落とされます。その票が次にいずれかの国に回ることになりますが、過半数に達する都市が出るまで続けられます。
ですから、昨日の敵が今日の友になってくるわけです。東京なら東京の招致のよさを、みんなに理解してもらうということが非常に重要になってきます。2012年のロンドンを決めたときには、英国はブレア首相、フランスはシラク大統領がプレゼンテーションを行っておりました。2014年の冬季オリンピックを決めるときには、ロシアからプーチン大統領が来てソチの演説をしました。韓国はノムヒョン大統領が演説をしました。これはもう定例になっています。
来年(2009年)の10月2日、日本の首相が誰だかわかりませんが、このように日本の首相が誰かということも非常に重要になってきます(笑)。国を挙げて、これだけ国としてサポートしているという姿勢を見せないことにはオリンピック開催は、まず難しいと思っています。
今回我々が目指すオリンピックの開催意義は、「スポーツを通じて人々に夢と希望を与え」「地域環境を再生するような、新しい都市モデルをつくる」ということです。人を育てて、緑をつくり、そして都市を躍動させるようなオリンピック、こういったものを目指そうということであります。
スポーツ文化が生活に根付いた健康な社会、緑と水に囲まれた美しい都市、次世代交通や最先端セキュリティ、そして低環境負荷の機能的な都市、すべての人に優しい社会、また開かれた平和な社会というものを、オリンピックを開催することでもたらしたいと思います。
期待される経済効果は、インフラ整備を除いた、いわゆる競技施設の建設、大会の運営、チケットの販売、そういった需要の増加が1兆3,000億円と見込まれております。このオリンピックを開催することによって、全国的な生産誘発額はおよそ2兆8,000億、うち都内だけで1兆5,000億円が目安として見積もられております。1984年以降オリンピックは赤字になったことが無く、毎回健全な運営が行われています。
次に計画の内容ですが、競技場は2つのゾーンに分けられます。1つは北側のヘリテッジ(遺産)ゾーン、これは1964年のときに使った競技施設を改善して使う予定です。もう1つは南の東京ベイゾーンと呼んでおりますけれども、主にウォーターフロントに、これから新しくつくる施設を集めます。その真ん中にメインスタジアム、オリンピック村、そしてメディアセンター、こういったものを用意します。
メインスタジアムから半径8kmに1競技を除いてすべての競技場を収めます。射撃場はウォーターフロントにつくる予定でしたが、風の影響その他で難しいという結論で、東京オリンピックでも使った朝霞の自衛隊駐屯地で競技を行う予定です。主要会場は31会場、このうち既存の施設が21会場、新設が10 会場で、うち5会場が仮設という計画です。なるべく既存のものを使い、建設にコストをかけない計画になっています。
招致ロゴのデザインコンセプトは「結び」、デザインモチーフは「水引」です。日本文化における結びというのは、古来から生命を生み出すための新たな魂を表しているということです。スポーツと文化を結ぶ、都市と環境を結ぶ、子どもたちと未来を結ぶ、テクノロジーと心を結ぶ、日本と世界を結ぶ、そして地球と平和を結ぼう、そういった思いを託してつくったロゴです。
現在、招致活動を行っておりますが、スポーツ界、JOC、そして東京都だけで招致は勝てるものではありません。国、企業、あるいはボランティア、地方自治体、国民一人ひとりの皆さん方のご協力があって、国家的プロジェクトは実るものだと思っております。
そういったことで、皆様方にも、ぜひこの東京で開催するオリンピックの意義というものをご理解いただき、その開催の気運の輪を広げるお力添えを戴きたくお願い申し上げます。本日はご清聴ありがとうございました。(終)
※この原稿は、2008年9月11日に開催した六本木ヒルズクラブランチョンセミナー「北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致~北京での日本選手団の成績とオリンピックの東京開催を目指して~」を元に作成したものです。
北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致 インデックス
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第1章 北京オリンピックの成功と今後への期待
2008年11月12日 (水)
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第2章 中国とイギリスにみるオリンピック開催国の躍進と、日本の課題
2008年11月25日 (火)
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第3章 ソフトボールと野球。結果の差はどこから生まれたのか
2008年12月08日 (月)
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第4章 各競技の結果から見えてきた課題。例え「JUDO」への適応
2008年12月08日 (月)
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第5章 日本の国際競技力の向上を目指すナショナルトレーニングセンター
2009年01月30日 (金)
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第6章 2016年の東京オリンピック招致。大陸ローテーションの心配は不要
2009年02月20日 (金)
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第7章 第一次選考をトップで通過した東京。立候補した各都市の特徴
2009年03月05日 (木)
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第8章 東京はIOCの総合評価は1位だが、国民の支持率は最下位だった
2009年03月12日 (木)
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第9章 オリンピック開催がもたらす社会的効果と経済的効果
2009年03月19日 (木)
該当講座
北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致
~北京での日本選手団の成績とオリンピックの東京開催を目指して~
竹田恆和 ((財)日本オリンピック 委員会(JOC)会長/エルティーケーライゼビューロージャパン(株)代表取締役社長)
今回の六本木ヒルズクラブランチョンセミナーでは北京オリンピック開催直後の余韻がまだ残る9月に日本オリンピック委員会(JOC)会長の竹田恆和氏をお招きします。2冠を獲得した北島康介選手をはじめ、悲願の金メダルを手にした女子ソフトボール代表、体操で銀メダルを獲得した内村航平選手、フェンシングで銀メダルの....
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