記事・レポート
北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致
更新日 : 2008年12月08日
(月)
第4章 各競技の結果から見えてきた課題。例え「JUDO」への適応

竹田恆和: 柔道は前回のアテネで10のメダル、うち8つの金をとったのですが、そのアテネ後、世界は日本の柔道に勝つためにいろいろな研究をしてきました。柔(やわら)の柔道から、JODOの柔道に変わってきたというような言い方ができると思うのです。
日本の柔道というのは一本をきれいに決めて行うというもので、これは柔道の精神であり醍醐味だと思うのですが、いまや勝つためにレスリングのタックルやモンゴル相撲の押し手など、いろいろな新しい技が出てきました。いわゆる一本ではなく、ポイントをとっていく。ポイントの1点差でも勝利は勝利だというような柔道の展開になってきています。日本も柔の柔道から世界のJUDOに変えていくために、やはり根本的な対策を立てていかなければならないという気がします。
日本は柔道が一番盛んな国だと思われるかもしれませんが、フランスの柔道人口は日本の倍以上です。それだけ世界では柔道が盛んになってきていまして、もう日本だけの柔道ではないわけです。ですから、そういう中で日本が柔道でこれまでどおり強い位置を占めていくには、JUDOの柔道を研究していかなければならないのは、間違いないと思います。
小学校、中学校では日本の武道が専科から外れているのですが、こうしたものを小学校、中学校からもう一度行えるという方向に、向かっているのは非常に良いことだと思います。
それから体操は前回のアテネの団体戦でモントリオール以来の金メダルをとり、復活の兆しを見せました。今回は残念ながら金はとれなかったのですが、ベテランと若い選手のバランスがうまくとれたチームで、若手が非常に活躍をしました。次回には若手の活躍が期待できると思っています。
レスリングは非常に強く、特に女子は今回が正式種目になって2回目のオリンピックですが、前回と同じメダルの色と数を取り、女子のレスリング王国ぶりを発揮できました。ただ選手のメンバーは前回と全く一緒です。今後新しい選手の台頭が求められます。
男子は今回も銀銅、2つのメダルをとったのですが、ヘルシンキ以来、14回大会連続(編注:不参加だったモスクワ大会を除く)でメダルを必ずとっているということは、非常に努力をしている結果だと思います。昔、日本はレスリングが大変強かったのですが、またそういう兆しが出て来たと感じましたので、今後を期待したいと思います。
陸上は男子4×100Mリレーの予選で、上位国がバトンを落としたということもあり、日本が銅メダルをとることが出来ましたが、トラックでメダルをとったのは80年振りということを考えれば、これは非常にすばらしいことだったと思います。
ただ、マラソンで野口みずき選手が肉離れを起こして出られなかったということは、非常に残念だったと思います。前回、野口選手は本当に最後の最後まで、自分を厳しく追い込み、これは彼女が言った言葉ですが「走った距離は裏切らない」という自信と確信をもってアテネで金メダルをとったわけです。恐らく今度も自分をとことんまで追い込んだのだと思います。これは本当に紙一重のことだと思いますが、残念ながら故障に至ってしまいました。
問題なのは、女子3名、男子3名で合計6名のマラソンの選手を送ったのですが、2人が欠場、2人が故障で、まともに走れたのは2人だけだった、補欠の選手の準備が間に合わなかった、そういった危機管理ができていなかったということで、競技団体の1つの課題が出たといえると思います。
フェンシングは今回初めてのメダル、それも銀メダルをとりました。フェンシングは国立スポーツ科学センターができてから合宿を500日行いました。それも海外から優秀なコーチを呼んでトレーニングをして。それで男子は銀メダル、女子は7位入賞という初めての快挙でした。これから楽しみなのはジュニアです。世界ジュニア選手権で、去年(2007年)も一昨年(2006年)も日本のジュニアが優勝しています。新しい選手がどんどん育ってきているということで、これからフェンシングは非常に期待できるスポーツの一つだと思います。
バドミントンは、オグシオ(編注:小椋久美子・潮田玲子ペア)はちょっと人気が先行してプレッシャーに負けたといえると思うのですが、スエマエ(編注:末綱聡子・前田美順ペア)は世界ランキングでも上になって(編注:2008年9月現在、スエマエは6位、オグシオは9位)、そしてメダルを狙いました。惜しくも3位は逃しましたが、これから世界のトップを狙えることを実証しました。これから期待がかかります。
各競技お話ししたいのですが、時間もあるのでこれぐらいにしたいと思います。
(その5に続く、全9回)
日本の柔道というのは一本をきれいに決めて行うというもので、これは柔道の精神であり醍醐味だと思うのですが、いまや勝つためにレスリングのタックルやモンゴル相撲の押し手など、いろいろな新しい技が出てきました。いわゆる一本ではなく、ポイントをとっていく。ポイントの1点差でも勝利は勝利だというような柔道の展開になってきています。日本も柔の柔道から世界のJUDOに変えていくために、やはり根本的な対策を立てていかなければならないという気がします。
日本は柔道が一番盛んな国だと思われるかもしれませんが、フランスの柔道人口は日本の倍以上です。それだけ世界では柔道が盛んになってきていまして、もう日本だけの柔道ではないわけです。ですから、そういう中で日本が柔道でこれまでどおり強い位置を占めていくには、JUDOの柔道を研究していかなければならないのは、間違いないと思います。
小学校、中学校では日本の武道が専科から外れているのですが、こうしたものを小学校、中学校からもう一度行えるという方向に、向かっているのは非常に良いことだと思います。
それから体操は前回のアテネの団体戦でモントリオール以来の金メダルをとり、復活の兆しを見せました。今回は残念ながら金はとれなかったのですが、ベテランと若い選手のバランスがうまくとれたチームで、若手が非常に活躍をしました。次回には若手の活躍が期待できると思っています。
レスリングは非常に強く、特に女子は今回が正式種目になって2回目のオリンピックですが、前回と同じメダルの色と数を取り、女子のレスリング王国ぶりを発揮できました。ただ選手のメンバーは前回と全く一緒です。今後新しい選手の台頭が求められます。
男子は今回も銀銅、2つのメダルをとったのですが、ヘルシンキ以来、14回大会連続(編注:不参加だったモスクワ大会を除く)でメダルを必ずとっているということは、非常に努力をしている結果だと思います。昔、日本はレスリングが大変強かったのですが、またそういう兆しが出て来たと感じましたので、今後を期待したいと思います。
陸上は男子4×100Mリレーの予選で、上位国がバトンを落としたということもあり、日本が銅メダルをとることが出来ましたが、トラックでメダルをとったのは80年振りということを考えれば、これは非常にすばらしいことだったと思います。
ただ、マラソンで野口みずき選手が肉離れを起こして出られなかったということは、非常に残念だったと思います。前回、野口選手は本当に最後の最後まで、自分を厳しく追い込み、これは彼女が言った言葉ですが「走った距離は裏切らない」という自信と確信をもってアテネで金メダルをとったわけです。恐らく今度も自分をとことんまで追い込んだのだと思います。これは本当に紙一重のことだと思いますが、残念ながら故障に至ってしまいました。
問題なのは、女子3名、男子3名で合計6名のマラソンの選手を送ったのですが、2人が欠場、2人が故障で、まともに走れたのは2人だけだった、補欠の選手の準備が間に合わなかった、そういった危機管理ができていなかったということで、競技団体の1つの課題が出たといえると思います。
フェンシングは今回初めてのメダル、それも銀メダルをとりました。フェンシングは国立スポーツ科学センターができてから合宿を500日行いました。それも海外から優秀なコーチを呼んでトレーニングをして。それで男子は銀メダル、女子は7位入賞という初めての快挙でした。これから楽しみなのはジュニアです。世界ジュニア選手権で、去年(2007年)も一昨年(2006年)も日本のジュニアが優勝しています。新しい選手がどんどん育ってきているということで、これからフェンシングは非常に期待できるスポーツの一つだと思います。
バドミントンは、オグシオ(編注:小椋久美子・潮田玲子ペア)はちょっと人気が先行してプレッシャーに負けたといえると思うのですが、スエマエ(編注:末綱聡子・前田美順ペア)は世界ランキングでも上になって(編注:2008年9月現在、スエマエは6位、オグシオは9位)、そしてメダルを狙いました。惜しくも3位は逃しましたが、これから世界のトップを狙えることを実証しました。これから期待がかかります。
各競技お話ししたいのですが、時間もあるのでこれぐらいにしたいと思います。
(その5に続く、全9回)
※この原稿は、2008年9月11日に開催した六本木ヒルズクラブランチョンセミナー「北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致~北京での日本選手団の成績とオリンピックの東京開催を目指して~」を元に作成したものです。
北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致 インデックス
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第1章 北京オリンピックの成功と今後への期待
2008年11月12日 (水)
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第2章 中国とイギリスにみるオリンピック開催国の躍進と、日本の課題
2008年11月25日 (火)
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第3章 ソフトボールと野球。結果の差はどこから生まれたのか
2008年12月08日 (月)
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第4章 各競技の結果から見えてきた課題。例え「JUDO」への適応
2008年12月08日 (月)
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第5章 日本の国際競技力の向上を目指すナショナルトレーニングセンター
2009年01月30日 (金)
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第6章 2016年の東京オリンピック招致。大陸ローテーションの心配は不要
2009年02月20日 (金)
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第7章 第一次選考をトップで通過した東京。立候補した各都市の特徴
2009年03月05日 (木)
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第8章 東京はIOCの総合評価は1位だが、国民の支持率は最下位だった
2009年03月12日 (木)
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第9章 オリンピック開催がもたらす社会的効果と経済的効果
2009年03月19日 (木)
該当講座
北京オリンピックと2016年東京オリンピック招致
~北京での日本選手団の成績とオリンピックの東京開催を目指して~
竹田恆和 ((財)日本オリンピック 委員会(JOC)会長/エルティーケーライゼビューロージャパン(株)代表取締役社長)
今回の六本木ヒルズクラブランチョンセミナーでは北京オリンピック開催直後の余韻がまだ残る9月に日本オリンピック委員会(JOC)会長の竹田恆和氏をお招きします。2冠を獲得した北島康介選手をはじめ、悲願の金メダルを手にした女子ソフトボール代表、体操で銀メダルを獲得した内村航平選手、フェンシングで銀メダルの....
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