記事・レポート
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~
アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年10月27日
(月)
第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?

岸博幸: さすが最近アナウンサーに転身しつつある野村先生、うまい説明でした。では、最後に東洋大学経済学部教授、松原先生、お願いいたします。
松原聡:松原でございます。マニフェストが5つ出てきましたので、やはり大学の先生っぽく評価したいのですが、そのときに一番楽なのは、できの悪いのをみつけることです。「まず、こいつを落としてやれ」というのが一番楽なんです(笑)。
そういう意味で、初めに取り上げるのが石原さんのマニフェストです。もう少し期待していたのですけれど、抽象度が高くて具体策がないという意味で、一番評価低いのではないか。恐らく今まで石原さんのマニフェストにコメントした人がいないのは、コメントしようがないようなところがあるからだと思います。
抽象度が低いか、高いかでみると、一番抽象度が低くて具体的すぎたのは小池さんです。野村さんがおっしゃったように90項目近くあって、これはちょっと多すぎますね。中に本当にキラキラした政策があるのですが、数の多さに紛れてしまうような気がしました。
松原聡:松原でございます。マニフェストが5つ出てきましたので、やはり大学の先生っぽく評価したいのですが、そのときに一番楽なのは、できの悪いのをみつけることです。「まず、こいつを落としてやれ」というのが一番楽なんです(笑)。
そういう意味で、初めに取り上げるのが石原さんのマニフェストです。もう少し期待していたのですけれど、抽象度が高くて具体策がないという意味で、一番評価低いのではないか。恐らく今まで石原さんのマニフェストにコメントした人がいないのは、コメントしようがないようなところがあるからだと思います。
抽象度が低いか、高いかでみると、一番抽象度が低くて具体的すぎたのは小池さんです。野村さんがおっしゃったように90項目近くあって、これはちょっと多すぎますね。中に本当にキラキラした政策があるのですが、数の多さに紛れてしまうような気がしました。

抽象度がよくて、マニフェストとしてのわかりやすさという点で、バランスが比較的いいのが石破さん、それから与謝野さんもまあまあだと思いました。
麻生さんは、実は抽象度からすると石原さんに近いですね、非常に抽象度が高くて、具体的なところが見えてこない、そういうような大体の外観の印象を持ちました。
具体的な中身になりますと、次に総理になり、それが総選挙のあと、そのまま総理かどうかわかりませんけれど、その可能性が高い人ですから、まさに野村さんがおっしゃったように、「格差で悩んでいる若い人の背中を押す」などという話を聞きたいのではありません。やはり中長期的に今の経済をどう見ているんだ、それをどうしていくんだ、あるいは3年とか5年のタイムで行革とか改革をどう進めていくんだ、こういうことを聞きたいわけです。
その意味で、今の経済がどうなんだ、それに対してどう対策するんだということに関しては、なぜもうすぐ総理になる人が5人とも、そこに踏み込まないかと思うほど、書かれていません。
その中で抽象的なのですが、そこだけしっかり具体的に書いてくれたのは麻生さんで、「日本経済は全治3年」と。恐らくそうなんです、非常に厳しい状態です。でも一番大事なのは、「じゃあ、なぜ全治3年になったのか」ということです。
福田内閣は、最後に政府与党で合意した緊急総合対策をつくりましたが、実は麻生さんはその責任者です。その緊急総合対策の中で、現状の景気に対してどう書かれているかというと、「大きな需給ギャップは存在しない」と書いてあるわけです。麻生さんは、それをまとめたご本人なんです。「需給ギャップが存在しない」というときに、需要を喚起してもしょうがないわけです。
その意味で、麻生さんは、唯一、「その対策をちゃんとやります、減税をやります」と具体的に書いているのです。しかし、需要不足じゃないのに減税やって、どうするのでしょう。日本の経済政策ではイロハですけれど、減税というのは全く景気については効きません。例えば1万円減税して、実際にどれぐらいお金を使ってくれるかということです。恐らく1割も使わないのではないでしょうか。
1999年に一種の減税策で地域振興券という、一番お金が使いやすい形をとりました。要するに地域振興券という商品券を配ったので、これは間違いなく使われるだろうと考えたのです。もちろん使われたのですが、使った分だけ預金を引き下ろさなかったのです。ですから、実際に6,000億円を配って、使われたのが2,000億円ぐらいにしかならない。商品券を配ったって3分の1しか使われないのですから、需給ギャップがそんなに存在しないときに、例えば何兆円減税したって、ほとんど使われないのではないでしょうか。
麻生さんは「全治3年」と非常に明確で、「だから経済対策だ」といいましたけれど、原因の把握を全く間違えているわけです。
ほかの候補の方のを見ても、はっきりと原因と対策を示している人はいないのですが、唯一、小池さんが、今回の不況対策の中で「官製不況対策室をつくる」と、こういう言い方をしているのです。ということは、彼女は、今の状況は官製不況だ、過度の消費者保護とか規制のやりすぎが不況を招いたという認識があるから、その対策として「官製不況対策室をつくる」となったのだと思います。その意味では若干認識があるのかなと、こう思いました。
しかし、一番大事な経済対策に関して、その原因をしっかり我々に示してくれていないし、それに応じた対策も全く示してくれません。唯一、示した人の対策は、恐らく経済政策としては間違えています。そういう意味で、ちょっと情けないマニフェストだったというのが今の印象です。
麻生さんは、実は抽象度からすると石原さんに近いですね、非常に抽象度が高くて、具体的なところが見えてこない、そういうような大体の外観の印象を持ちました。
具体的な中身になりますと、次に総理になり、それが総選挙のあと、そのまま総理かどうかわかりませんけれど、その可能性が高い人ですから、まさに野村さんがおっしゃったように、「格差で悩んでいる若い人の背中を押す」などという話を聞きたいのではありません。やはり中長期的に今の経済をどう見ているんだ、それをどうしていくんだ、あるいは3年とか5年のタイムで行革とか改革をどう進めていくんだ、こういうことを聞きたいわけです。
その意味で、今の経済がどうなんだ、それに対してどう対策するんだということに関しては、なぜもうすぐ総理になる人が5人とも、そこに踏み込まないかと思うほど、書かれていません。
その中で抽象的なのですが、そこだけしっかり具体的に書いてくれたのは麻生さんで、「日本経済は全治3年」と。恐らくそうなんです、非常に厳しい状態です。でも一番大事なのは、「じゃあ、なぜ全治3年になったのか」ということです。
福田内閣は、最後に政府与党で合意した緊急総合対策をつくりましたが、実は麻生さんはその責任者です。その緊急総合対策の中で、現状の景気に対してどう書かれているかというと、「大きな需給ギャップは存在しない」と書いてあるわけです。麻生さんは、それをまとめたご本人なんです。「需給ギャップが存在しない」というときに、需要を喚起してもしょうがないわけです。
その意味で、麻生さんは、唯一、「その対策をちゃんとやります、減税をやります」と具体的に書いているのです。しかし、需要不足じゃないのに減税やって、どうするのでしょう。日本の経済政策ではイロハですけれど、減税というのは全く景気については効きません。例えば1万円減税して、実際にどれぐらいお金を使ってくれるかということです。恐らく1割も使わないのではないでしょうか。
1999年に一種の減税策で地域振興券という、一番お金が使いやすい形をとりました。要するに地域振興券という商品券を配ったので、これは間違いなく使われるだろうと考えたのです。もちろん使われたのですが、使った分だけ預金を引き下ろさなかったのです。ですから、実際に6,000億円を配って、使われたのが2,000億円ぐらいにしかならない。商品券を配ったって3分の1しか使われないのですから、需給ギャップがそんなに存在しないときに、例えば何兆円減税したって、ほとんど使われないのではないでしょうか。
麻生さんは「全治3年」と非常に明確で、「だから経済対策だ」といいましたけれど、原因の把握を全く間違えているわけです。
ほかの候補の方のを見ても、はっきりと原因と対策を示している人はいないのですが、唯一、小池さんが、今回の不況対策の中で「官製不況対策室をつくる」と、こういう言い方をしているのです。ということは、彼女は、今の状況は官製不況だ、過度の消費者保護とか規制のやりすぎが不況を招いたという認識があるから、その対策として「官製不況対策室をつくる」となったのだと思います。その意味では若干認識があるのかなと、こう思いました。
しかし、一番大事な経済対策に関して、その原因をしっかり我々に示してくれていないし、それに応じた対策も全く示してくれません。唯一、示した人の対策は、恐らく経済政策としては間違えています。そういう意味で、ちょっと情けないマニフェストだったというのが今の印象です。
※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。
自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~ インデックス
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第1章 国民はこの事態をどう評価し、あしたに向かってどう行動するのか
2008年10月15日 (水)
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第2章 政治で10年、経済で10年、伝統で10年。混乱は合計30年
2008年10月20日 (月)
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第3章 選挙のキーポイントは「成長なくして老後もなし」
2008年10月21日 (火)
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第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点
2008年10月22日 (水)
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第5章 日本再生に向けた戦略の最重要ポイントは「何を捨てるか」
2008年10月23日 (木)
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第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか
2008年10月24日 (金)
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第7章 不況の原因と対策をはっきり示している人は?
2008年10月27日 (月)
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第8章 今、経済政策に必要なのは「ショックセラピー」
2008年10月28日 (火)
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第9章 問題3兄弟。政治家の国民不信、メディアの怠慢、国民の逃避
2008年10月29日 (水)
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第10章 今、日本経済の回復は不可能。行革の後退を防ぐことが重要
2008年10月30日 (木)
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第11章 「格差を縮めよう」ではなく、「貧困を撲滅しよう、底辺を上げよう」
2008年10月31日 (金)
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第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ
2008年11月03日 (月)
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第13章 マニフェストには、普通ではできないブレークスルー型のものを書け
2008年11月04日 (火)
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第14章 日本を明るくする2つの方法——教育と政策
2008年11月05日 (水)
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第15章 既得権を維持するためにたくさん法律をつくっている官僚
2008年11月06日 (木)
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第16章 知識集約的なものづくりをしない限り、今の所得は維持できない
2008年11月07日 (金)
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第17章 利害を持つ人が政策意思決定にかかわると、必ずゆがむ
2008年11月10日 (月)
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第18章 日本が競争している相手がどれほど頑張っているか見よ
2008年11月11日 (火)
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