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自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~

アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年10月24日 (金)

第6章 マニフェストを読み比べる方法。改革への道筋は描かれているか

野村修也さん

岸博幸: では、次に中央大学法科大学院教授、野村先生お願いいたします。

野村修也:野村でございます。よろしくお願いいたします。今、冨山さんから、「なかなかガチンコの政策論争にならない」というお話がありましたが、今の政治情勢を考えてみます。福田さんがお辞めになられたときに、「賑やかな総裁選をやってくれ」と言われたそうです。賑やかな総裁選をやって、また自民党にみんなの注目を集めようという意図もあったのではないかというような報道もされています。

私がそれを初めて聞いたときに、行く道は2つだなと思ったのです。1つは本当に政策を立て、旗を立てて、それぞれがガチンコでガンガンやっていく。そしてそれを国民に見せて、どれが選ばれたのかがわかるようにするというのが1つの選択肢です。しかし、恐らくその道はたどらないだろうなと思ったのです。

なぜそう思ったのか。それは、今回の総裁選に続いて、次の選挙があるからです。どれかが選ばれて、どれかが捨てられたということが国民の前ではっきりしてしまいますと、捨てられた方を支持している人は自民党から離れます。そうした見方で自民党の選挙を考えて、ここは何となくお茶を濁した形で収斂していくんだろうなと思っていたのですが、やはり、そんな感じかなと思うのです。

見ていますと、何となく総裁候補者の皆さんが、キャラバン隊みたいな感じで出てきます。5人ですからV6というわけにはいかないですね。昔でいえば、フィンガー5みたいな形でしょうか。何かみんなで並んで出てきて、あまり流行っていないけれど地方巡業をしていますというような感じで、それなりに選挙対策をやっているという感じになってきています。

私たちの立場は、どちらかといえば政策をしっかり見たいという立場ですから、大変つまらない総裁選になっているなというのが現状です。

そういう中で、よく見てみますと、やはり一番あやふやな人のところに集まっていっているんですね。皆さんもお読みになったかもしれませんけれど、例えばワーキングプアに対する対策について、麻生さんのところを読んでみますと、「ワーキングプアや悩んでいる若者の背中を押します」という政策なんですね(笑)。背中を押されてもどうなるのかなという感じがするのです。

あるいは公務員改革。私はこれには非常に関心があるのですが、「モラルとやる気を失った公務員を奮い立たせ、国民のために働く公務員にします」とあります。しかし、道筋が全くないわけです。「公務員改革もやります」「雇用対策もやります」と言っているだけで、どうやってやるのかということは、まったく書いてないのです。

それに対して、例えば小池さんなどを見てみますと、ここはものすごく細かいのです。小池さんのマニフェストはたくさんあるのですよ、100項目ぐらい書いてあって、中には心を打つようなものもあります。例えば「東京大学を民営化します」と書いてあるのです。本当にできるかどうかはわかりませんが、やや具体的な形のことが書いてあります。

私は、具体性、「いついつまでに何をやります」ということが書いてあることをコミットメントという意味で政策評価の軸にしたいなと思っているのですが、そういう意味では明確性が一番ない麻生さんのところに収斂してくる感じになっているのが、やや残念かなと思っています。

麻生さんは経済政策に関しては「ホップ、ステップ、ジャンプ」という形になっていまして、まずは景気対策、次に財政再建、その次には経済成長と書いてあるのです。3つ全部やります。順番の話なのです。確かにここは順番の問題でありまして、例えば「上げ潮」と言われているものも順番で、最後には増税だって視野に入れているということですから、何も1つを選んでいるわけではありません。しかし、もし順番だとするのであれば、最初の一番バッターにどのぐらいの役割を果たさせるのか、それは本当に日本の経済にとってプラスになるのかということをもう少し書いていただかないと、評価のしようがないなと感じています。

そういう点では、今回、マニフェストを見せていただいて、石破さんの政策は非常に明確に具体性のある形で書かれていて好感を持てると思ったところがあります。

それに対して与謝野さんの政策の文章も非常に明確に書かれているのですが、どうも、「本当に本人が書いたかな?」という感じを受ける部分が見え隠れします。「立法します」というのは、普通だったら「法律をつくります」とかというふうに書くのですけれど、「国会に提案します」みたいな書き方があると、「書いたのは役人かな?」という感じがしないわけではありません。

役人が書くと、やはり政策の中で1つ大きなものが抜けてしまいます。経済政策で最も重要なのは、財源を何に求めるかという話ですよね。簡単にいえば、借金をするのか、税金を上げるのか、それとも埋蔵金を掘りに行くのか、そんな形で単純化して議論をすることになっていったときに、埋蔵金を掘りに行く代わりに、歳出のむだを徹底的に排除するということをやらなければいけないと、私は思うのです。

例えば、中央省庁で働いている人たちの仕事は多すぎると思うのです。道州制などをどんどん導入していきますと、中央省庁の仕事はどんどん減っていきますので、そういう意味では、ある意味では政治改革にもつながっていくるし、むだも省かれて財源も出てくるかなと思うのです。国の形を変えていくことによって、財源を捻出していく。そういったビジョンを描いている人を評価したいと、そんなふうに思った次第であります。

※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。

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