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自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~

アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年11月03日 (月)

第12章 評価できる政界再編の基軸を各マニフェストからピックアップ

松原聡さん

岸博幸:まさに実務の立場からの厳しい意見です。だれか前向きの明るい意見を言ってくれないかなと思っているのですけれど(笑)。じゃあ、政策の専門家の松原先生は、今の問題含め、今後の展開をどう見られているでしょうか。

松原聡:日本経済の生き字引のような加藤先生が、悲観論に立たれてしまって、でも、すみません、敬老の日にこんなことを言ってはいけないのですが、もう少し長生きしそうな僕らはですね(笑)、もうちょっと積極的なことを考えたいなと思っているのです。

そのときに、恐らく竹中さんがおっしゃったことの背景には、この5つのマニフェストを見て、「どうもこれだというのがないぞ、この人に任せられるというのがないぞ」と、それから民主党も、この前の参議院選挙のマニフェスト、それから、今の議論を聞いていて、「どうも民主党もまずいぞ」と。そうなると、政界再編をして、やはりしっかりとした政策を打てる新しい政策集団が出てくれないことには、まさに加藤先生がご心配になっているような、崩れ落ちるような方向に進んでいくのではないか思います。

そうなると、どういうマニフェストがといいましょうか、政界再編のときにどれが軸になるのか、そろそろ考え始めていかなければいけないのではないかという気がしてきています。

ただ、この場は、まだ総裁選の前、総選挙もないときで、そんな新しいマニフェストを出す場ではありませんので、ちょっと僕、5人のマニフェストをのぞき見て、こんなところをピックアップして、あり得るべき政界再編の基軸になったらいいなみたいなのを、ちょっと探してみたのです。逆に言うと、それが一番多い人が、きっときょう最終的に評価するときに、評価が高くなると思うのです。

あまり多くない人の方からいきますが、でも、この言葉いいなと思いましたのは、与謝野さんの「景気回復のための財政出動はしない」です。要するに、「そのことによって景気回復はできないんだよ、それをやろうとしたら90年代の再来だ」と、これは明確なメッセージですから、非常に大事だと思いました。

石破さんは、「開国」について触れています。開国と言っているということは、実は今が鎖国だということです。ですから、そのことは明確に認識しているという意味で評価できます。石破さんは「5年間で集中的に開国する。モノ・金・人をアジアについて開いていくんだ」と言っています。これは大事な指摘だったのではないかと思います。

いわゆる「道路財源の一般財源化」という議論が出ていまして、麻生さんなどは、それを決めた中にいるわけですから、一番それをしっかり言わなければいけないのに触れていないことが不満です。しかし、小池さんは、そこに触れていて、「道路財源のメーンになっている石油関係の諸税は炭素税みたいなところに一元化して、一般財源としての炭素税にする」と述べていますから、これは非常にいい指摘なのではないかと思いました。

それから、これはちょっと僕の趣味みたいなところがあるのですが、小池さんの90近いマニフェストの中に、1つ、こういうものがありました。今の日本の公租公課、サラリーマンの方は給料で天引きされるところを公租公課といいますが、仮称ですけれども、「公租公課庁をつくろう」という指摘なのです。実は、これは私の持論でして、今は地方税と国税と年金をバラバラにとっているわけですが、それを全部まとめて1つのところ、イギリスなどは国家歳入庁というのでしたか、それを小池さんは仮称で「公租公課庁」と言っていますけれど、これに一元化するだけで、相当行革になりますね。だって、国税と地方税と年金、一緒にとってしまえばいいわけですから、非常にシンプルになるわけです。

何かそのあたりのおいしいところをピックアップして、これを次の政界再編のときの目玉として使えばどうかという作業を、そろそろやらなければいけない。逆にいうと、この中に「これでいける」というのがないのが寂しいところです。

※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。

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