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自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~

アカデミーヒルズセミナー経営戦略
更新日 : 2008年10月22日 (水)

第4章 建築基準法、貸金業法、日雇い派遣——規制の問題点

木村剛さん

岸博幸: きこれからステージのメンバーの皆さんから、数分で問題提起をお願いしたいと思います。最初に株式会社フィナンシャル代表取締役社長の木村さん、お願いします。

木村剛:木村でございます。最近、「自民党の5人の中で、だれが総理になったら景気がよくなるんですか」というご質問をよく受けます。今、霞ヶ関や永田町では、日本の経済が減速しつつあるという認識がようやく広まりつつありますが、はっきり申し上げて真っ暗です。真っ暗だということを、多くの人々に知らしめたという点では、麻生さんの功績は少なからずあると思っています。

問題は、麻生さん、もしくはほかの4人が、この課題を解決できるかということですが、残念ながら相当悲観的に見ざるを得ないと思っています。

麻生さんは、「単なる需要不足だ、財政を出動すればいい」というふうなことを言っていらっしゃいます。しかし、この議論は10年前に不良債権問題を抱えながら日本経済が失速状況にあるときに、「とにかくひたすら景気拡大すればいいんだ、補正予算だ」ということで、百数十兆円のおろかな財政出動をした、過去の自民党の政権に極めて似ているように感じ、危惧しています。

当然、病気を治すためには、病状をしっかりと判断をした上で、的確に対策を立てる必要があります、骨折した人に対して栄養ドリンクを飲ませても骨折は治らないわけです。今、日本経済の悪化がどういう原因で起こっているかを一言で申し上げると、「愚かな政策により、愚かな結果が起こっている。要するに政府がばかだった」ということだと思います。

今回の5人の方とも中小企業の金融に言及していらっしゃいます。しかしながら、肝心なことを言っていません。それは、政府自民党が通した貸金業法の改悪によって、現実問題として中小企業、零細、個人事業主の金融をゼロにしてしまったことに対する反省と、それに対する是正策です。そのことは、5人のだれからも出ていないのです。ということは、5人のだれが総理総裁になっても、中小企業の問題を解決できないということを如実にあらわしています。

その状況を変えられるかどうか。今のままでは残念ながら変えることができません。いまだに「アメリカのサブプライムローン問題で日本の景気が悪い」という言い方をする人が多いのですが、そんなことありません。サブプライムローンの問題は確かに景気減速に影響を及ぼしていますが、それは2割ぐらいで、 8割はホームメイドの人災です。

建築基準法を意味もなく非常に厳しく変えて建設業界全体を窒息死せしめ、貸金業法の改悪によってメーンバンクを窒息死せしめ、さらにまた、日雇い労働者はかわいそうだという理由で、日雇い労働者から職を奪い、窒息死せしめようとしています。こうした愚かな政策をやめない限り、日本の経済がよくなることはないと、残念ながら私は思います。

過剰規制、そして意味のない、実態に合わないルールを、これでもかとばかりにつくり出す官僚。その官僚がかつぐ御輿に乗っている政治家がリーダーである限り、この国は残念ながらよくなりません。

直近の例でも、皆さんよく聞いてくださいね、今回の報道は事故米ですが、「事故米は問題だ」と言っておいて、いきなり「いや、あれは大したことがないんですよ」と言う。もともと過剰規制なんです。規制が適切であれば、その規制をクリアしなければアウト、守っていればセーフと単純です。ところが、高速道路を40キロに速度制限するようなルールをたくさんつくるから、ドライバーはいたし方なく「40キロはちょっと苦しいから60キロぐらいにしよう」というふうに走っていて、事故が起こったら「逮捕だ」となるのです。そんなくだらない経済にしておいて、日本の経済が立ち直ることはないと私は思います。

官に任せればうまくいくという考えは、社会保険庁の年金問題を見れば分かるように、明らかに誤りです。それにもかかわらず、いまだに農林水産省や国土交通省といったお役所に任せれば日本はよくなると思っています。それを直さない限り、残念ながら私はよくならないのではないかと思っております。


※この原稿は、2008年9月15日にアカデミーヒルズで開催した緊急シンポジウム「自民党総裁選を斬る~空気読めない候補者は去れ~」を元にアカデミーヒルズが作成したものです。

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