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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

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更新日 : 2008年06月23日 (月)

第7章 リスクアセットの選択肢が拡大

斉藤惇

斉藤惇: 世界の上場している主要取引市場の時価総額を見ると、大阪が1,400億円、香港が3兆円、シカゴが4兆円、ドイツはデリバティブですが4兆円です。東証はまだ上場していませんが、上場していてもおそらく1兆円くらいでしょう。こうした状況ですので、2007年末に金融庁が取りまとめた金融市場競争力強化プランにおいて、商品デリバティブを金融商品取引法と商品取引所法の2つの法制度の下におくことで、ようやく東証を含めた金融商品取引所が、従来の商品ラインナップを超えた幅広いデリバティブ商品を取り扱うことが可能になりました。

今まで世界では、例えば商品デリバティブの技術を使って自分の資産のリスクヘッジをかけられたのに、1,500兆円を持っている日本の個人投資家だけが、官庁同士の縄張り争いのためにそれができませんでした。金融庁のプランが実現すると、証券取引所が商品を含む広範なデリバティブを取り扱うこと、多様な投資物件を提供することが可能になる一方で商品取引所も株価指数先物などが取り扱えるようになります。

わが国では従来からの規制によって、投資家に欧米並みの投資証券、とくにETFを十分に提供できていませんでした。東証に商品関連のEFTが上場されることになると、東証の厚みの拡大およびEFTの投資対象資産への投資やヘッジ取引を通じて、商品市場の厚みの拡大にもつながるという相乗効果が期待できます。別の観点から言うと、一般投資家は自ら直接商品先物市場に参加しなくても東証上場の商品を使って実質的にそれと同じだけの投資機会を持てるようになり、商品先物市場は本来のプロを中心とした参加者構成に再構築していけるでしょう。

東証では経営計画において現物市場とデリバティブ市場の2つを推進エンジンとして位置づけて、わが国の投資家へリスクアセットの選択肢の拡大を目指していきたいと考えています。今回の見直しを奇貨として、これまでの指数先物取引などに加えて、金をはじめとした商品ETFの上場を急速に進展させていきたい。

従来、証券取引所はたいへん独占的な位置づけにあり、その弊害を排除するという考えで市場間競争が促進されてきました。特に欧米の規制当局は、市場外取引を促進しようと考え、強引に進めています。競争による効率性や利便性の改善は否定できませんが、取引所のようなオープン市場でない場での価格や、取引の透明性や公平性を、誰が確実に監視、担保するのでしょうか。市場として最も大切なところが見落とされているように思います。

現在のサブプライム問題も不透明な取引の連続から生まれました。サブプライム問題を見ていて不合理に感じるのは、大きく儲けた人がいることです。儲けた人が事件の責任をとらされて罰を受ければフェアでしょう。しかし、実際には儲けた人は逃げてしまい、何も知らなかった人が犠牲になっています。サブプライムに関係のない人の税金が使われて、社会的なコストを負担させられました。そうした構造を金融関係者として作ってはいけません。OTC取引の良さとその限界を知り、どのような制度が最も好ましいのか検討すべきでしょう。


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