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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

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更新日 : 2008年06月06日 (金)

第5章 個人金融資産の効果的な活用が鍵

斉藤惇

斉藤惇: 1989年の東証の株式時価総額は610兆円強であり、世界一でした。当時のアメリカは370兆円、ロンドンは170兆円でした。しかし、日本が現在の400兆円に縮小したのに対して、ニューヨークは5倍、ナスダックは10倍、イギリスとドイツが約5倍に急成長しました。上海は、1兆6400万円だったのが、170倍の300兆円に膨れ上がりました。日本の世界における相対的地位が縮小しているのは厳然たる事実です。

産業と金融の健全な発展のためには、企業が新たな付加価値を創造するリスクに挑戦する力と、金融資本市場がリスクマネーやソリューションを機動的に提供していく力の2つが、相乗的に発展していく社会を作らなくてはなりません。わが国は国際競争力を持つ製造業と、1,535兆円と言われる個人金融資産の蓄積を利用して、新しい国づくりを進めることは十分に可能でしょう。

わが国の個人金融資産は諸外国と比較して現預金の割合が非常に高い。一方、株式や有価証券の割合が非常に低く、ローリスク・ローリターン傾向です。GDPは約500兆円、個人金融資産が1,535兆円ですから、個人金融資産の利回りが1%伸びれば年間で15兆3,000億円の増益になり、日本のGDPを3%押し上げる効果に相当します。

年金基金や保険の資産構成から見ても、わが国の機関投資家は安全志向です。わが国の機関投資家のポートフォリオは債権の割合が高く、株式や派生商品の割合が非常に低い。一方、欧米の機関投資家は株式投資の割合が非常に高く、個人金融資産が機関投資家を通じて株式市場に流れています。アメリカでの株式時価総額が5倍に増えましたが、増えた分は個人の所得に移りました。アメリカには株の持合がないうえ、個人の34%が直接市場に投資しているし、年金、投資信託を合わせると株式の保有比率は95%を占めるので、株式時価総額が増えた分はすべて個人の所得に変わる社会制度を持っているからです。

わが国でも、高齢化が加速する中にあって、個人金融資産を金融資本市場に効果的に投資して高い収益を得ることが不可欠であり、国内に厚みのある金融資本市場を形成する必要が非常に高まっています。オイルマネーは300兆円とか言われていますが、日本の家庭が約1,500兆円を持っているのですから、これは驚くべきことであり、世界で他に例のない現象です。


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