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「金融グローバリゼーション~国際金融センターを目指す東京のこれから~」

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年05月29日 (木)

第4章 産業と金融で実現する日本の持続的発展

講師の斉藤惇氏と、モデレーターの竹中平蔵氏

斉藤惇: 日本の1人当たりGDPは、1993年にOECD加盟国の中で1位でしたが、それから右肩下がりを続け、2008年には18位にまで低下しました。世界経済に占めるわが国のプレゼンスの低下を如実に物語っています。

日本モデルが20年もの間、1人当たりGDPがアップしていないという歴史的な証明を受けているのにもかかわらず、産業構造を変えようとしない日本について、MITのサミュエルソン教授は「まったく理解できない」と評しています。外国からみると、20年間もフェイルした産業構造を変えようとしない民族が不思議でしかたないのです。

1990年代後半のイギリスは、先進国の中でその経済状況は最下位にあり、1人当たりGDPが17,000ドルでした。同時期の日本は35,000ドルでした。それが現在では、イギリスが37,000ドルに急成長したのに対して、日本は35,660ドルと660ドルだけ増えたのにとどまっています。

イギリスは、いわゆる金融ビッグバン以降の1980年代後半に、製造業の資本が外国資本に渡って弱体化しました。工業を放棄したわけではなく、所有権をドイツやフランスに渡したわけですが、一方で金融産業を軸とした持続的な経済成長を実現しました。アメリカはイギリスに遅れて1990年代初頭から金融政策を行ないつつ、金融産業とITを中心としたイノベーティブで若い企業の成長に支えられた先端産業を両立させて、持続的な成長を実現させました。

イギリスやアメリカは、1980年代後半から1990年代前半にかけて、上場株式時価総額がGDPを下回る水準でしたが、その後のIT化の進展に伴い、金融産業の発展が促され、現在ではGDPを大きく上回る市場の時価総額を実現しています。これを受けて東証では、現在策定中の中期経営計画において、現在の株式時価総額400兆円を1,000兆円にしようと計画しています。

1,000兆円を実現する前提は、わが国の経済の持続的な発展です。わが国のITや自動車はグローバル市場でも相当の競争力がありますが、それだけで経済全体を牽引することは難しい。一方、製造業が日本のGDPに占める割合は20%を切っています。総労働人口は約6,500万人ですが、その中で約1,300万人が製造業に従事しています。しかも、日本の製造業が外国で雇用している外国人労働者は480万人に達しており、日本の製造業労働者が1,000万人を切るのは時間の問題でしょう。そのような実体と状況を鑑みれば、日本の持続的成長は、イギリスのように金融産業にのみに依存する構造でも、中国や新興国の熾烈な競争にさらされる輸出産業に依存する構造でも、難しいと考えなくてはなりません。

アメリカはITに依存して20年間にわたり成長を続けましたが、すでに問題に直面しています。歴史を見ると、技術力による工業力の成長は、必ず後進国にキャッチアップされています。すでにアメリカのIT産業も、中国、インド、日本などにキャッチアップされています。

輸出を中心とする日本の産業構造も非常に苦しい状況です。例えば、任天堂のWiiは、ほとんど台湾でつくられています。ソニーや東芝も製品の相当数が台湾でモジュール化され、中国でアセンブルされているという事実を知る必要があります。

われわれは産業と金融のバランスある発展を目指すしかないでしょう。さらに、どちらかと言うと金融に軸足を置いたほうが、経済成長、マルティプルエフィシェンシー、スピールオーバー効果が高いでしょう。金融産業の本来的な機能の1つであるガバナンス(統治機能)が有効に発揮されると、結果的に社会全体の倫理観や、他の産業の生産性向上に貢献することにも着目する必要があるでしょう。


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