記事・レポート

CATALYST BOOKS vol.5

理解を深める1冊

更新日 : 2022年07月29日 (金)
社会における様々な「つながり」を見直し、常識を再構築するカタリスト・トーク』。
ここでは、毎回トークの中でゲストの方々にご紹介いただいた「テーマの理解促進につながる1冊」を振返ります。

イベントに参加した方は「より深く知る」ために、イベントに参加していない方は「良質な書籍に出会う場」として、このページをご活用ください! <各イベント開催日の翌週に公開予定>

Index

 CATALYST BOOKS vol.1理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.2理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.3理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.4理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.5理解を深める1冊

大小島真木さんが紹介するカタリスト・ブックス
~人間中心主義からの脱却:「共生」と「共死」を考える~

「自然との境界線を引き直す」をテーマにゲストと語り合う、編集者・塚田有那さんのカタリスト・トーク。今回のゲストはアーティストの大小島真木さんです。塚田さんは大小島さんのことを「自分の身体の内側に自然を感じることができるアート作品を生み出している美術家」と評します。

イベントでは実際に大小島さんの作品を映像で鑑賞しながら、それぞれの作品について大小島さんと語り合い、彼女の感性に触れ、参加者も「自分の身体の内側に自然を感じる」とは一体どういうことなのか?を考えながら大小島さんの世界に引き込まれていきます。

人間が生きている、とはどういうことなのか?そもそも私たちはどのように「生かされている」のか?

大小島さんは常にこの問いを胸に作品を作り続けています。「私って何だろう?と考えたときに、自分自身だけではいられない。呼吸一つとっても、人間は自分では酸素を作り出すことができない。」と言う大小島さんの言葉からは、多種多様な「種」の存在なくして、人間は生きられない「モア・ザン・ヒューマン」の考え方が展開されていきます。

人間だけの視点ではなく、複数ある種が絡まり合って人間と多種が共同体を形成している様を描く大小島さんが持つ思想と共鳴する次の2冊、それが今回のカタリスト・ブックスです。

『水の音の記憶』(結城正美・著)
『モア・ザン・ヒューマン ~マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』(奥野克己/近藤祉秋/ナターシャ・ファイン 編)

これらの本からは、「人間を含め、さまざまな種たちが寄せ集まって、絡まり合ってできている輪郭や境界のことを学ぶことができる」と大小島さん。種は動物だけに限りません。あらゆる環境の中に様々な生物が取り込まれていて、自分自身も環境と切り離すことはできないのです。自分の内臓が実は環境にあることをこの2冊は物語っていると大小島さんはいいます。

さらに、これらの本は「自分たちの境界線はどこなんだろう?」と大小島さんのイマジネーションを広げてくれます。

自分の内臓の中にも自然があり、自然の中に自分の内臓を感じることができる、という大小島さん。自分も生き物として他の生き物を食らい、そして、また他の生き物から食らわれるという存在であることを認識することが大事だと考えます。スーパーで肉や魚の切り身を買って食べるときに、何も感じることなく食べることに対する違和感を持ち、生き物の命を食らうことで、自分は命をつないでいるということを認識すること、それこそが自分に自然を感じることにもつながるのです。

そこから命の連鎖がつながっているということ、「生きるということは、死ぬということ」など、自分の存在から多種の存在とのつながりを感じ、共に生き、そして共に死ぬという「共生・共死」の概念まで到達します。
大小島さんの感性に触れたい方に、ぜひ読んでいただきたい本です。


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 CATALYST BOOKS vol.2理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.3理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.4理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.5理解を深める1冊

水の音の記憶

結城正美
水声社

モア・ザン・ヒューマン

奥野克巳、近藤祉秋
以文社