記事・レポート

CATALYST BOOKS

理解を深める1冊

更新日 : 2021年06月17日 (木)





社会における様々な「つながり」を見直し、常識を再構築するカタリスト・トーク』。
ここでは、毎回トークの中でゲストの方々にご紹介いただいた「テーマの理解促進につながる1冊」を振返ります。

イベントに参加した方は「より深く知る」ために、イベントに参加していない方は「良質な書籍に出会う場」として、このページをご活用ください!
<各イベント開催日の翌週に公開予定>





小川さやかさんが紹介するカタリスト・ブックスAmazonなどのネット通販や、Uber、メルカリなどの C to C のシェアリングエコノミーが普及したいま、レビューを通じて取引相手を信用する「評価経済」は、現代の経済活動には欠かせません。
テクノロジーが加速していけば、誰もが品行方正で“良い市民”になる「ユートピア」が訪れる、という議論も起こっています。
しかし、タンザニア商人たちの経済活動を研究する文化人類学者の小川さやかさんは、そのような議論に異を唱え、「評価経済」に依存していくことの危うさを指摘します。

そこで紹介された『デジタル革命で機械の奴隷にならない生き方』(R・D・プレヒト)は、清廉潔白で立派な人間しかいない透明な社会は、果たして望ましいものなのか?と問いかけます。そして、人間の自由は「グレー」な余白の部分にあると主張します。
小川さんはその「グレー」な部分をタンザニア商人たちに見出します。SNSで取引するけど、レビューに頼らずに写真から得た自分の直感を信じる。他人の評価を全く気にせずに脈絡のないSNS投稿をし、予想外の繋がりやチャンスを得ていく。プラットフォーム資本主義に乗りながらも、評価経済から外れたところでSNSを使いこなすタンザニア人たちの視点から、私たちの「こうあるべき」という倫理の基準を問い直します。





山形浩生さんが紹介するカタリスト・ブックス 資本主義が前提とする「平等」「自由」「民主」の価値観。これらの価値観を多くの人が求めたからこそ、資本主義は世界に広がりました。 しかし、テクノロジーがこれらの価値観を崩し、資本主義の未来を変える可能性があると山形さんは指摘します。その先に待ち受ける未来の資本主義の形とは?起こりうる未来の姿が描かれているとして山形さんが挙げた2冊の本をご紹介します。

『幸福な監視国家・中国』(梶谷懐、高口康太)は中国で起こっていることについて書かれたものですが、これは中国だけの話ではなく、これからの資本主義の一つの形になるかもしれない、と山形さんは言います。
監視カメラやSNSで個人の特性や行動を詳細に分析していくと、みんなある程度同じだという平等神話は崩れていくでしょう。個人の行動分析が人の統制に使われていくことが当たり前になり、プライバシーは守られるべき人権だという概念はなくなるかもしれません。

もう1つの未来は、1984年のSF小説『ニューロマンサー』(ウィリアム・ギブスン)で描かれたような電脳化の世界です。山形さんのイマジネーションはそこからさらに一歩進んで、「人間が全く介在しない資本主義」という究極のところまで行きつきます。
格差が固定化し、完全に階層化された社会の中でAIが実態経済を支配する世界。果たして人間は一体何をしているのでしょう?製品開発や製造などの経済活動すべてが自動化され、人間はただ「選別」や「消費」するだけの存在となるのかもしれません。




ニューロマンサー

ギブスン,ウィリアム
早川書房

幸福な監視国家・中国

梶谷懐、高口康太
NHK出版

デジタル革命で機械の奴隷にならない生き方

プレヒト,リヒャルト・ダーヴィト
日本評論社


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