記事・レポート
日本元気塾セミナー
既存の枠をぶち壊せ!
若きイノベーターの挑戦/杉江理×佐々木大輔×米倉誠一郎
更新日 : 2016年05月25日
(水)
第9章 ネガティブをポジティブに変えたい

起業を阻むものを取り除く
米倉誠一郎: 佐々木さんは、資金調達のノウハウはあった一方で、会計に詳しいわけではなかった。
佐々木大輔: そうですね。基本的なことは大学でも学びましたが、プロではなかったため、起業に際しては会計の専門書を買い込み、イチから勉強し直しました。また、税務署などにも電話で相談しましたね。
米倉誠一郎: 税務署に電話したの? それは面白い。
佐々木大輔: 「会計ソフトを作っています」と説明すると、皆さん面白がってなのか、優しく教えてくれました。やはり、行政のリソースは有効活用するべきです(笑)。プログラミングについても、大学でデータサイエンスを専攻した際に多少かじりましたが、こちらも本を買って勉強し直しました。
米倉誠一郎: スモールビジネスに焦点を当てた理由は?
佐々木大輔: 日本は起業家が少ないと言われますが、例えば、会計や法律、行政への申請といった煩雑な業務が思い浮かび、起業を思いとどまる人もいるはずです。こうしたことが起業を阻む要因になっているのであれば、それを取り除きたかった。また、すでにスモールビジネスに取り組んでいる人が、煩雑な業務のせいで本業に専念できないのなら、それも取り除きたかった。つまり、freeeを作ることで、挑戦する人が増えていく社会になると考えたからです。
「カッコ良い!」が常識を変える
米倉誠一郎: 杉江さんは、「全ての人のパーソナルモビリティ」というビジョンを実現するために、とにかく「カッコ良い」を追求した。
杉江理: ひと昔前まで、眼鏡をかけることはネガティブに捉えられていました。しかし、現在はファッションアイテムの1つになり、さらにGoogle Glassにまで進化しています。つまり、最初はネガティブに捉えられていたものが、イノベーションを通じてポジティブなものに変わり、いまやポジティブさえ超越しているわけです。
それと同様に、僕達はWHILLを通じて社会の意識を変えていきたいと思っており、そのために必要だったのが「カッコ良い」でした。むしろ、カッコ良くなければ、自分達が作る意味はないと考えていました。
僕達は最初から「高齢者や障がい者のためだけに作ろう」とは考えていませんでした。
従来の電動車いすは「いす」にモーターとタイヤがついたものです。僕達は作ろうとしたのは、いすではなく、「乗り物」です。その意味で最も重視したのが、乗る人の「姿勢」です。自転車やバイクのハンドルは必ず前方にあり、運転者は前傾姿勢になります。同じく、WHILLも車体を操作するハンドルを前方につけました。また、座席とタイヤが極力目立たなくなるよう、それらの色をすべて黒でまとめることで、従来の電動車いすが持っていた違和感を取り払いました。
一番うれしかったのは、アメリカで最初に試乗してくれた人の感想でした。街中での試乗を終えて戻ってきたそのユーザーは、「みんなから“It’s cool !! ”と何度も声をかけられたよ!」と、驚いた表情で語ってくれました。それまでは“May I help you ? ”と声をかけられていたそうです。僕達はこの時初めて、WHILLの本当の価値に気づくことができました。
該当講座

既存の枠をぶち壊せ! ~ 若きイノベーターの挑戦 ~
杉江理(WHILL)×佐々木大輔(freee)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
杉江理(WHILL,Inc. CEO)×佐々木大輔(freee株式会社 代表取締役)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター教授)
日本元気塾塾長である米倉誠一郎氏が、「車いす」のマーケットにイノベーションを巻き起こしているWHILL,Inc. CEOの杉江理氏と、クラウド会計ソフトとしてシェアNo.1を獲得する大躍進を遂げているFreee株式会社の佐々木大輔氏を迎えして、若きイノベーターの挑戦をお話いただきます。
日本元気塾セミナー
既存の枠をぶち壊せ!
インデックス
-
第1章 全ての人の移動を楽しくスマートに
2016年05月11日 (水)
-
第2章 100m先のコンビニに行くのを諦める
2016年05月11日 (水)
-
第3章 シリコンバレーで本気のモノづくり
2016年05月11日 (水)
-
第4章 スモールビジネスを支援する「freee」
2016年05月18日 (水)
-
第5章 中小企業のテクノロジー活用を進めたい
2016年05月18日 (水)
-
第6章 自分の好きなことで社会に貢献する
2016年05月18日 (水)
-
第7章 日米のベンチャーキャピタルの考え方
2016年05月25日 (水)
-
第8章 本気になれることを探していた20代
2016年05月25日 (水)
-
第9章 ネガティブをポジティブに変えたい
2016年05月25日 (水)
-
第10章 社会に共通する課題を見つけ、貢献する
2016年05月25日 (水)
注目の記事
-
11月21日 (火) 更新
六本木アートカレッジ
2022-2023年の六本木アートカレッジ <未来を拡張するゲームチェンジャー>」では、新しい価値を生み出す5名のゲストを招き、トークイベン....
<未来を拡張するゲームチェンジャー>イベントレポート
-
11月21日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一が、六本木ヒルズライブラリーのために、特別に選んだ“これだけは読んでおきたい本”“ いま読むべき本”....
-
11月21日 (火) 更新
もっとも書物らしい書物—西洋中世写本の魅力に触れる書籍案内
今回は「もっとも書物らしい書物—西洋中世写本の魅力に触れる書籍案内」と題し、手書きから印刷、そしてデジタルへと変遷してきた「書物」の歴史を辿....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月13日 (水) 19:30~21:00
World Report 第6回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから何が見えるのかを参加者の皆....
「投開票まであと1年!米国大統領選挙を読み解く」
-
開催日 : 12月06日 (水) 18:30~20:00
シリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」
本の背景にあるストーリーから仕事のエッセンスを学ぶ「編集者の視点」シリーズ。第5回ゲストは、日本の翻訳出版界のマーケットシェア60%を占める....
第5回 世界とつながる共通言語を求めて
-
開催日 : 12月08日 (金) 18:30~20:00 読書体験会 第3回 / 09月13日 (水) 18:00~19:30 トークイベント ※終了いたしました / 10月18日 (水) 18:30~20:00 読書体験会 第1回 ※終了いたしました / 11月13日 (月) 18:30~20:00 読書体験会 第2回 ※終了いたしました
『スマホ時代の哲学』読書体験会
スマホ時代の課題を哲学の視点を使って考えていく本書『スマホ時代の哲学〜失われた孤独をめぐる冒険〜』。著者の哲学者・谷川嘉浩さんと、人材・組織....