オピニオン・記事

「くまモン」『聞く力』にみる、魅力の引き出し方

阿川佐和子×水野学 対談

更新日 : 2014年06月18日 (水)

第1章 「くまモン」はこうして生まれた

大人気の「くまモン」をはじめ、数多くのアーティストやブランドのトータルディレクションを手掛けるクリエイティブディレクター、水野学氏。ベストセラー『聞く力』の著者で、1,000人以上へのインタビュー経験をもつ阿川佐和子氏。独自のコミュニケーション・スタイルを確立した両名による対談は、人やモノの魅力を引き出す秘訣から、コミュニケーションとデザインの密接な関係までを紐解きます。

スピーカー:水野学(クリエイティブディレクター/good design company 代表取締役/慶應義塾大学特別招聘准教授)
スピーカー:阿川佐和子(作家・エッセイスト)

写真左:阿川佐和子(作家・エッセイスト)/写真右:水野学(クリエイティブディレクター/good design company 代表取締役/慶應義塾大学特別招聘准教授)
写真左:阿川佐和子(作家・エッセイスト)/写真右:水野学(クリエイティブディレクター/good design company 代表取締役/慶應義塾大学特別招聘准教授)

 
残り時間5分での提案だった

阿川佐和子: 六本木アートカレッジは、同時多発的に様々な講演が行われるそうで、私たちと同時刻に4つの講座があるとか。この会場の皆さんは、ほかの講演を無視してわざわざ来てくださったわけですね。

水野学: 皆さんをがっかりさせないように頑張りましょう。

阿川佐和子: そもそも、私たちの組み合わせがよくお分かりにならないと思います。簡単にご説明すると、J-WAVEの番組審議会委員としてご一緒しています。実は私、水野さんが「くまモン」をデザインした方だと、最近になってようやく知りました。そもそものきっかけは? 具体的に何をどのようにされたのですか?

水野学: いきなりきましたね。皆さん、これが「聞く力」ですよ(笑)。「くまモン」は九州新幹線の全線開業に合わせて熊本県を盛り上げよう、というプロジェクトから生まれました。新幹線開業は100年に1度の大イベントだったそうですが、熊本県が博多〜鹿児島間の通過点になってしまうことを県の方は危惧していたそうです。

そこで、熊本の魅力をアピールすべく、熊本県庁のスタッフと同県出身の放送作家・小山薫堂さんが中心となり、「くまもとサプライズ」というキャンペーンを立ち上げました。その際、僕は小山さんから「くまもとサプライズ」のロゴデザインを依頼されたのです。そして、ロゴを作り上げたのですが、僕の悪い癖が出てしまい、何か物足りなく感じてしまったのです。

阿川佐和子: ロゴだけでは「何か面白そうだから、熊本に降りてみようかな?」とはならないと思った。



水野学: そうです。当時、宮崎県の東国原英夫知事がマンゴーを片手にあちこちでPRされている姿を拝見し、熊本県にもスポークスマンがいたら面白いと思い、老若男女に親しまれるマスコットキャラクターが思い浮かびました。かなりの数のデザイン案を考え、小山さんと一緒に候補を選び出し、県庁でのプレゼンの日を迎えました。所定の時間でロゴデザイン案を発表したあと、最後に5分だけ時間をいただいてお見せしたのが「くまモン」。実はロゴデザインの“オマケ”として提案したものだったのです。

阿川佐和子: オマケですか? それにしても、なぜ熊になったのでしょう?

水野学: 全国の都道府県のなかで、動物の名前を含むのは群馬、鳥取、鹿児島、熊本の4県だけ。さらに、動物の名前をそのまま読むのは熊本県しかありません。そこで、シンプルに「くま」の名前とイメージを活かし、同県の方々が自称する際に使う熊本者(くまもともん)のもんを、親しみやすい片仮名にして「くまモン」。さらに、「くまもとサプライズ」ということで驚いている表情にしたところ、県庁の方々に思いのほか喜んでいただくことができました。

阿川佐和子: あの人気キャラ誕生の裏に、そのようなストーリーがあったとは。

水野学: 本日はひとつだけ個人的な話をしようと思っていましたが、「聞く力」のおかげで最初に話し終えてしまいました。どうしましょう(笑)。


アカデミーヒルズのFacebook
アカデミーヒルズのTwitter

おすすめ講座

おすすめ記事