記事・レポート

伊藤穰一:逸脱からはじまる「学び」の実践

MIT Media Lab CREATIVE TALK「Learning Creative Learning」より

キャリア・人グローバル
更新日 : 2013年08月07日 (水)

第9章 ポジティブな逸脱を見つけよう

伊藤穰一(MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

 
変化の兆しは常識の外にある

会場からの質問: 教育システムを含め、既成のものを変えていく、人々の意識を変えていくのは大変な作業だと思います。そのあたりについて、Joiさんはどのように考えていますか?

伊藤穰一: 変化を起こすには、2通りの方法があります。1つは、トップダウンで強制していくこと。けれども、この方法では人々のモチベーションが高まらず、思うような成果もあがりにくいでしょう。

もう1つの方法が、Positive Deviance(※編注)を見つけること。ポジティブな逸脱です。例えば、あるグループの中に常識破りの方法で仕事をしている人がいて、困難な問題を解決しながら成果を出している。周りの人たちは、とても不思議に思うはずです。そこで、成功している理由を調べて、それを周囲に波及させていくことで、成果を大きなものにしていく。

ポジティブな逸脱を見つける、あるいはそれを自分でつくり出してしまう。とにかく、最初は目立たないように小さく逸脱してみる。そこから小さな成果を積み上げて、ゆっくりと周囲にも影響を与えていく。こうしたやり方のほうが、強引に何かを変えようとしたり、権威に対して声高に反論したりするよりも効率的だし、効果的だと思うのです。

私も若い頃は、権威に対してメガホンで怒鳴っていましたが、やはりそれでは何も変わらなかった。エネルギーはかかるし、ストレスも溜まる。良いことは1つもなかった。だからいま、MITメディアラボにたくさんの変な人を集めて、世の中に現れたポジティブな逸脱を見つけたり、それを自ら生み出したりしているわけです。

学校にラボをつくってみよう

会場からの質問: 日本の教育システムに、MITメディアラボのような考え方を反映させていくためにはどうしたらいいでしょうか? Joiさんが文部科学大臣になったとしたら最初に何をしますか?

伊藤穰一: 最近はFabLabやFabCafeが注目を集めていますが、それと同様に、学校でも美術や音楽、家庭科といった関連性のある授業を合体させて、ラボをつくってみる。大きなフロアに様々な学年の子どもたち、教師、色々な特技を持つ地域の大人を集める。そして、ロボットでも料理でも歌でも、とにかく何かをつくる。位置づけも授業とはしないで、普段の授業で学んだことを活かして、自分の興味関心のあるものをつくる自由な時間とする。お昼前の1時間を使い、とにかく何かをつくる。午後はそれらを持ち寄って、互いに発表し合う。さらに、放課後のクラブ活動まで関連づけていく。

学校の中に子どもたちの興味を喚起するような仕掛けを入れ、学校の外では親や地域の人を巻き込んで、子どもの興味を育むようなサポートをしていくわけです。最近は社会人の校長を採用したり、地域のコミュニティとの関係も生まれたりしていますから、やろうと思えばできると思うのです。

※編注
出典は『The Power of Positive Deviance: How Unlikely Innovators Solve the World's Toughest Problems』(リチャード・パスカル、ジェリー・スターニン、モニーク・スターニン共著)。


該当講座

Learning Creative Learning

~MITメディアラボで実践している「学び」への挑戦~

Learning Creative Learning
伊藤穰一 (MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

伊藤 穰一(MITメディアラボ所長)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第1回は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一(Joi Ito)氏をお招きして、MITメディアラボの"Learning Creative Learning"プログラムを題材に、「教わる」から「学ぶ」をどう実践していくかについて考えます。


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