記事・レポート

伊藤穰一:逸脱からはじまる「学び」の実践

MIT Media Lab CREATIVE TALK「Learning Creative Learning」より

キャリア・人グローバル
更新日 : 2013年08月05日 (月)

第8章 「変な人」を許容する社会が必要

伊藤穰一(MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

 
ハマることはカッコ悪いこと?

会場からの質問: Learning Creative Learningに集まる人は、何事に対しても意欲的で、興味の範囲が広い人だと思います。他方で、そうではない人たちに学びのおもしろさを植え付けていくことも考える必要があると思うのですが。

伊藤穰一: それはMITメディアラボの中でも重要なテーマとなっています。最近は、「何に対しても興味が持てない」「これといった趣味が見つからない」と答える子どもが多いと言われています。こうした子どもたちには、効果的な学びは起こりません。しかし、それは本人のせいではなく、親や学校の影響から来ていると思うのです。無意識のうちに、子どもの興味の範囲を狭めてしまうような投げかけを、親の側からしているのではないでしょうか。

人間は本来、一人ひとり異なる個性を持っています。だから、少しくらい興味の方向がずれていても、応援する姿勢が大切になると思うのです。とは言いつつも、私は人の子の親ではないので説得力が少ないと思うから、実際に親である人はどう思う?

林千晶:  なかなか判断が難しいと思います。子どもが野球かサッカーかで迷っていたら「好きなほうでいいよ」と即答できますが、ゲームかサッカーかと言われたら、「悪いことは言わないから、サッカーにしなさい」と言いたくなる(笑)。受け入れられる部分と、受け入れられない部分があります。

伊藤穰一: 確かに、ある程度の制限やルールは必要だと思います。それがないと、せっかくの学びも惰性でぼやけたものになってしまう。一方で、親や教師というのは、自分が知らないことを子どもがしていると、往々にして「それは良くない」と判断して、自分が良いと思うものを勧めてしまいがちです。知らない範囲のことに対して許容度が低くなるというか。

親は、学校の教育に関連しない趣味にハマっている子どもを応援しないことが多い。また、社会としても「オタク」という言葉があるように、何かにのめり込む、ハマるという行為はカッコ悪いと、ネガティブに捉える傾向がある。けれども、ガンダムにハマっている子どもが大きくなったとき、宇宙開発やロボット工学の道に進むかもしれない。興味の行き着く先など、誰にも分からないのです。

会場からの質問: いまのお話を聴いて、親のアプローチが大切だと感じましたが、日本人の総体的な価値観の中では、いわゆる変な人に対する許容度が低い。私にも子どもがいますが、その中でどこまで子どもの思いを許容して育てられるかは、難しい課題だと思います。

伊藤穰一: とは言いながらも、日本では変な人をまつりあげるケースも多い。一見すると社会から外れているような人でも偉くなれる国、という側面も持っている。もっと言えば、宇宙人扱いされるくらい変な人だとポジティブに捉えられ、それ以下の人はネガティブに捉えられる。その線引きがどこで行われているのかを含め、変な人を許容する社会に向けた議論をしていく必要があるのかなとも感じています。それが今後の学びのあり方にも深く関係していると思うのです。

該当講座

Learning Creative Learning

~MITメディアラボで実践している「学び」への挑戦~

Learning Creative Learning
伊藤穰一 (MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

伊藤 穰一(MITメディアラボ所長)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第1回は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一(Joi Ito)氏をお招きして、MITメディアラボの"Learning Creative Learning"プログラムを題材に、「教わる」から「学ぶ」をどう実践していくかについて考えます。


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