記事・レポート

伊藤穰一:逸脱からはじまる「学び」の実践

MIT Media Lab CREATIVE TALK「Learning Creative Learning」より

キャリア・人グローバル
更新日 : 2013年07月26日 (金)

第4章 興味はどこから生まれるのか?

伊藤穰一(MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

 
子どもは何でも見つけてきてしまう

伊藤穰一: 試験に通るために一生懸命勉強する、大きな組織に入るために勉強する。その価値観を否定はしませんが、何となくそれは独力で問題を解決できる人間を育てているだけのように思います。試験は、個人が持つ知識や情報の量が問われるものです。しかし現代は、昨日手に入れた知識が、今日には使えないものになることもあります。いま求められるのは、個人の頭の中に知識を蓄える力よりも、知識や情報を必要なときにネットワークから素早く引っ張り出せる力(The Power of pull)です。私たちはそれを多様にしていく方法を学んでいく必要があります。

また、学びというものは、興味によって喚起されるものです。例えば、子どもたちの興味は何によって喚起されてきたのか。最近注目されているのが、Interest-driven learning and participation。何かをきっかけにしてあることに興味を持ち、その興味の対象について自発的にネットなどで検索し、次第にハマっていく。あるいは、同じ興味を持つコミュニティに参加する。こうしたサイクルの繰り返しが、学びの広がりにつながっていくわけです。

子どもが「ギターの弾き方を覚えたい」と言ったとき、従来ならその親は「教室に通って先生に習いなさい」と言い、子どももその通りにしていたでしょう。けれども現代の子どもは、教室に通うくらいならYouTubeで学ぶ、友だちから学ぶ、と言う。現代の子どもたちは、ネットや仲間同士のコミュニティの中から何でも見つけてきてしまい、あっという間に学び取ってしまう。幼い頃からごく自然にPullの能力が育まれるような環境にいるのです。

3つの学びを結合する

伊藤穰一: 私が理想とする学びの形があります。それは、私が関わるマッカーサー基金(※編注)が示す「Connected Learning」です。

1つ目はInterest。個々の子どもが持つ好奇心です。子どもは純粋な好奇心を持ち、それを原動力として自ら何かを学んでいくものです。2つ目がPeer Culture。仲間同士の情報の交換・共有です。子どもがカードゲームに講じている場面を見ると、仲間同士でルールや最新の攻略法などを教え合っています。そこに先生はいません。やり取りされる情報の中身は、ときには科学や数学に、あるいはプラモデルの作り方と、様々に変化します。また、情報交換はリアルな場だけでなく、ネット上でも行われています。子どもたちは大人の知らない場所で、ものすごい数の教え合いをしているわけです。そして、3つ目がAcademic。従来のような学校での教育です。

自分で学んだこと、仲間同士で学んだこと、学校での教育。いまのところ3つは分断され、互いに結びついていません。学校外での学びが、学校の単位や評価に反映されることもありません。この3つを結びつけた大きな共同体の中で子どもたちの興味を喚起し、学びを深めていくのがConnected Learningであり、MITメディアラボが注目する新たな学びの形なのです。

※編注
マッカーサー基金(The John D. and Catherine T. MacArthur Foundation)
シカゴを本拠とする世界的な慈善団体。国籍を問わず、文化や教育、地球環境保護など、様々な分野の発展に貢献する個人・団体に向けて、毎年資金を提供している。


該当講座

Learning Creative Learning

~MITメディアラボで実践している「学び」への挑戦~

Learning Creative Learning
伊藤穰一 (MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

伊藤 穰一(MITメディアラボ所長)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第1回は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一(Joi Ito)氏をお招きして、MITメディアラボの"Learning Creative Learning"プログラムを題材に、「教わる」から「学ぶ」をどう実践していくかについて考えます。


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