記事・レポート

伊藤穰一:逸脱からはじまる「学び」の実践

MIT Media Lab CREATIVE TALK「Learning Creative Learning」より

キャリア・人グローバル
更新日 : 2013年07月24日 (水)

第3章 MITメディアラボは「大人の幼稚園」

伊藤穰一(MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

 
指導よりも創造を重視する

伊藤穰一: MITメディアラボは、デジタル時代の黎明期にあたる1985年に設立されました。このラボでは、世界中の企業から資金を集め、分野や理論にとらわれない斬新かつ独創的な実験活動を行っています。

MITメディアラボではAnti-Disciplinaryという理念を掲げており、単一の学問に収まるような研究は行いません。また、研究者や学生といった垣根はなく、指導よりも創造を重視しています。異分野の人々が試作と対話を重ねていくことで新しい価値を生み出し、世の中に投げかけています。

みなさんは、この世界で最もクリエイティブな学びに満ちた場所が、どこだか分かりますか? それは幼稚園です。幼稚園では、広い空間にたくさんの園児がいて、好きなグループに出入りしながら様々な遊びをしています。年齢の違いを超えて、互いの好奇心を存分に刺激し合い、ユニークなものをつくり出しています。比較的ルールに縛られない環境のもとで、大きな学び合いが起こっているのです。

MITメディアラボは、言うなれば大人版の“幼稚園”なのです。内部は開放的な空間で、色々な装置や材料が転がっていて、まるでおもちゃ箱をひっくり返したように雑然としています。MITメディアラボは、働くことと学ぶことを同列のものと考えており、こうした環境が学びや創造活動にとって最もふさわしいと考えています。

ルールはすでに変わっている

伊藤穰一: 新しく何かを生み出そうとするとき、従来までは「地図を作る→お金を集める→ものを作る」という流れがありました。現在、この考え方で物事を進めようとすると、「地図」を作るために膨大な時間とコストがかかります。うまくいかなくなった場合は、投資に見合った結果を得ようと、さらにコストを追加し、懸命に軌道修正を試みることになります。

オープンソースやフリーソフトウェアが主流となった現在は、「ものを作る→お金を集める→地図を作る」へと変わっています。グーグルやフェイスブックは「とりあえず作った。さて、どうしよう」から始まり、優れたコンパスに従って進むことで、お金が動きはじめ、新しいルールやビジネスが生まれていった。ものづくりにおいても、3Dプリンターやレーザーカッターなどの登場で、頭に描いたイメージを誰もが簡単に形にできるようになりました。根本的な概念が変わってしまっているのです。

AIの時代になり、世界中の人々とコラボレーションするためのコストは劇的に低下しました。今後はそれと同様に、ハードウェアの開発や生産、物流などにおいてもコストが劇的に下がっていくと思います。そして、教育や学びも今後は大きく姿を変えていくでしょう。MITメディアラボが行う活動の焦点はここにあります。内外の異質な人々を柔軟に組み合わせ、創造と対話を繰り返しながら、次代の学び方を模索しているのです。

該当講座

Learning Creative Learning

~MITメディアラボで実践している「学び」への挑戦~

Learning Creative Learning
伊藤穰一 (MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

伊藤 穰一(MITメディアラボ所長)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第1回は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一(Joi Ito)氏をお招きして、MITメディアラボの"Learning Creative Learning"プログラムを題材に、「教わる」から「学ぶ」をどう実践していくかについて考えます。


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